和中の兄貴に稽古をつけて貰っていると、香月の兄貴と青山の兄貴が、和中の兄貴に声をかけてきた。
香月紫苑
和中蒼一郎
香月の兄貴たちの話によれば、半グレ集団、刃慈縷(ばじる)が、最近シマを荒らし回っており、香月の兄貴と青山の兄貴に掃討の指示が下ったらしい。
そして、作戦会議の結果、何時ものように、香月の兄貴が、女装で潜入する事になったのだが、ここで問題が発生。
問題というのは、潜入先がダンスホールという事。
青山琉己
小峠華太
和中蒼一郎
情報屋伍代によれば、なんでも、刃慈縷のリーダーである、御堂晋二は、社交ダンスにのめり込んでおり、足しげく通ってたキャバクラにも顔を見せず、暇さえあれば、ダンスの練習に励んでいるとの事だ。
必然的に、潜入先がダンスホールになったのも納得がいく。
和中蒼一郎
青山琉己
香月紫苑
青山琉己
それは最もだ。初心者ならともかく、中級者ともなれば、ダンスホールに来て踊らず、壁の花を決め込んでいる方が、不自然でしかない。
香月紫苑
和中蒼一郎
和中蒼一郎
青山琉己
香月紫苑
小峠華太
社交ダンスの定番はワルツ。たぶん、香月の兄貴は、定番だからという理由で選んだんだろ。ただ、青山の兄貴に関しては、完全に下心だ。
和中蒼一郎
社交ダンスの話題が出た時点で、こうなるのは予想していた。
それに、これは仕事だ。仕事に私情を持ち込むのは良くない。それは分かってる、分かっているが、俺の胸には暗雲が立ち込める。
和中蒼一郎
俺の異変に気づいた、和中の兄貴が声を掛けてくる。
小峠華太
胸の内を、和中の兄貴に気取られぬように、俺は普段通りを装う。
小峠華太
俺は他にも仕事を抱えている。本当なら、そちらを優先しなくてはいけないが、この場を離れたくなくて、咄嗟に嘘をつく。
潜入業務のない俺には、関係のない分野だ。そもそも、今回が特殊なだけで、そう何度もダンスホールへの潜入などはありはしない。それにダンスを覚えた所で、この先、業務に役立つことはない。
和中蒼一郎
俺の言動を不可解に思いながらも、一応、和中の兄貴からは、了承の返答を得られる。
潜入まで、あまり日がない事もあり、和中の兄貴は、かいつまんで説明していく。
和中蒼一郎
青山琉己
和中蒼一郎
香月紫苑
和中蒼一郎
和中蒼一郎
香月紫苑
青山琉己
和中蒼一郎
俺にとっては、死刑宣告にも等しい、実践という言葉が、ついに和中の兄貴から告げられる。
香月の兄貴と和中の兄貴。二人とも眉目秀麗だ。二人が踊る姿は、きっと絵になる。
双方とも尊敬する兄貴分だが、香月の兄貴に、和中の兄貴をとられたようで、恋人としては複雑な気分。
和中の兄貴の恋人は俺なのに。
二人が踊る光景を見たくなくて、けれど、自分の見えないところで踊られるのも嫌で、最もらしいご託を並べて、この場に留まったというのに、いざとなると見る勇気がなくて、結局、うつ向いてしまう。
和中蒼一郎
和中の兄貴の声に反応して、思わず、伏せていた顔をあげてしまった。
小峠華太
目の前には、やうやうしく跪き(ひざずき)、俺へと向いて、手を差し出す、和中の兄貴の姿。
香月の兄貴ではなく、俺に声をかけた意味がわからず、俺の勘違いかと、辺りをキョロキョロと見渡す。香月の兄貴と俺の位置は離れており、和中の兄貴は間違いなく、俺に声をかけた事がわかり、俺は思わず、和中の兄貴へと向き直る。
小峠華太
和中蒼一郎
差し伸べられた手に、おずおずと手を重ねる。
小峠華太
映画Shall we dance?の曲が、流れだす 。
ゆったりとしたリズムに合わせて、踊るも、曲に気をとられると、兄貴の足を踏みそうになる。和中の兄貴の足を踏ままいとすると、今度は上体が反れ、思いの外、悪戦苦闘を強いられる。
和中蒼一郎
和中の兄貴の声に弾かれ、俺は兄貴と視線を合わす。
兄貴から向けられる熱視線に、俺の体から、先ほどまで入っていた余分な力が抜け、和中の兄貴に身を委ねる。
和中蒼一郎
和中の兄貴のリードにより、曲にあわせて、流れるように、くるくると回る。
和中蒼一郎
どうやら、俺のやきもちは、和中の兄貴に見抜かれていたらしい。
和中蒼一郎
小峠華太
まさか、和中の兄貴から、情熱的な口説き文句が聞ける日がくるなんて思ってもみなかった。
本当、兄貴には敵わない。
でも、たまには、こういうのも悪くないかもしれない。
おわり
あとがきと補足 補足として、華太が嫉妬したのは、スローワルツの別名を知っていたから。スローワルツ(スローワルツのみ)は、局部を密着させて踊る事から、踊る○○ッ○って、呼ばれている。そして、当時は、まだパンツが存在してかなかった為、ノーパンだった。男性に回され過ぎて、女性が転倒した際に、スカートが捲れあがり、ドレスの中が丸見えになる事もあった。当時は男女が体を密着させて踊るのは、汚らわしいという考えが強く、法律で踊る事を禁止されていたよ。 とがかぶを書いた時の戸狩の台詞に「ダンス」「踊ってもらう」と比喩表現で使ったのは、勿論ここからきてるよ。 男同士で踊る、ブレイクダンスは、同性に対する○○ッ○アピールと聞いた事があるけど、ソースを探したけど分からなかった。ヒュバグキャラで、ブレイクダンスバトルしても面白そう。 混合されがちだけど、社交ダンスと競技ダンスは別物。日本の社交ダンスは、イギリススタイル。社交ダンスはパートナーを変えてもOKだけど、競技ダンスはパートナーは固定だったりと、細かい違いがあるよ。 和中の台詞の壁の花とは、ダンス相手が見つからず、壁の前で立っている女性の事を壁の花、男性の場合は壁のシミって呼ぶ。
コメント
2件
素敵です♥️