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COCKTAIL

4 - 夏の終わり

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2,026

2024年05月27日

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大会への調整も終え、 俺たちの夏合宿は最終日を迎えていた

一色 翼

せーんぱい!

一色 翼

一緒にお風呂…

早乙女 愛来

唯月ちゃーん!
早くしないと先行っちゃうわよ〜!

浅野 唯月

今行くから!大声で
ちゃん付けするなよ!!

一色 翼

………

浅野 唯月

ん?どうかしたか?

一色 翼

…いえ

浅野 唯月

そ、そうか…?

目に見えて不機嫌だ… まぁだが、理由はだいたい想像できる

合宿の間、ずっとアイツらといたからな 大方それで嫉妬してるってとこだろ

まぁだが 一色にかまけてられるほど、俺も暇じゃない

この後は アイツらと人生ゲームをする予定だからな─

若狭 蓮

なぁ唯月
お前彼女いんの?

浅野 唯月

っ!?

浅野 唯月

はぁっ!?

入浴中、急に恋バナを振られた

正直、この手の話題はあまり得意では無い

ゲイだってことは、 誰にも言っていないからだ

もちろん、こいつらにだって例外じゃない

浅野 唯月

…別に…恋愛とか興味無いし

浅野 唯月

それより今は受験が大事だから…

冬弥 雪

イツキ…ウソついてる…?

浅野 唯月

つ、ついてねぇよ!

冬弥 雪

顔、赤い

浅野 唯月

のぼせたんだよ!

浅野 唯月

ていうか!言い出しっぺの若狭はどうなんだよ!

若狭 蓮

俺はずっと唯月にしか興味n…

そう若狭が言いかけた瞬間

わざとなのか。 たまたまなのか。 一色の使っていたシャワーが落ち、 若狭の顔面にお湯をぶちまけた

若狭 蓮

ぶふぁっ!?

若狭 蓮

ちょ!お前!そこの!

碓氷 凛華

一色くん

若狭 蓮

そう!一色!

若狭 蓮

お前わざとだろ!?

一色 翼

さぁ、なんの事だか
さっぱり

若狭 蓮

お〜ま〜え〜な〜!

こいつら…1人でもうるさいのに 揃うと余計うるさいな…主に若狭が。

碓氷 凛華

羽ちゃんやるねぇ♪
俺、そーゆー子嫌いじゃないよ♪

一色 翼

そうですか。
俺は貴方みたいな人別に好きじゃないです。

冬弥 雪

……暑い

早乙女 愛来

そうね、のぼせる前に上がっちゃいましょ

ちょっとしたハプニングはあったが 入浴を終えたみんなは、合宿最後の夜を楽しんでいる

浅野 唯月

あった…ここに落ちてたのか

俺はと言うと、 下駄箱の鍵を無くして旅館中を探し回っていた

とっくに消灯時間を迎えた旅館内を テコテコと歩き、若狭たちの待つ部屋へ 戻ってきた俺は、ドアが少しだけ 空いていることに気がついた

浅野 唯月

おい、消灯時間過ぎてんだからちゃんとドア閉めr…

若狭 蓮

唯月?要らねぇだろ

浅野 唯月

えっ…?

少し空いた襖の隙間から聞こえた言葉に 一瞬耳を疑った

だけどその疑いは一瞬にして確信へと変わり 俺の心を、深く、暗い所へ沈めた

早乙女 愛来

あら、蓮もそう思う?

冬弥 雪

じゃあ…イツキはいっか…

…何の話だよ…

俺がいらないって……何………

若狭 蓮

やっぱズレてるよなぁ

ズレてる…?何が…?

碓氷 凛華

んじゃま、唯月はいらないってことで

浅野 唯月

……

浅野 唯月

そうかよ…

その瞬間、開きかけていた襖は完全に開かれ さっきまでの会話の主達と目が合った

若狭 蓮

あ、唯月、今…

浅野 唯月

っ…!

若狭 蓮

あっちょっ唯月!?

気づいた時には走り出していた

とにかく遠くへ

逃げるように

隠れるように───。

一色 翼

あれ?先輩…って

一色 翼

なんで泣いてるんですか…?

浅野 唯月

え………

一色の言葉で初めて、 頬を伝う生ぬるいものに気がついた

浅野 唯月

おれ…泣いてなんか…っ…

吐き捨てるように言葉を紡ぐ

我ながら酷い強がりだと分かっていても こいつに弱いところは見せたくない

一色 翼

…こっち、来てください

そう言うと一色は俺の手を引き、 月明かりに照らされた浜辺へ座らせた

浅野 唯月

…大丈夫なのか…?

一色 翼

監督達なら、
もう随分前に寝てますよ

一色 翼

…何があったんですか?

浅野 唯月

……っ

弱味なんて握られたら、 何の脅しに使われるか分からない

絶対に、泣けない

そのはずなのに……

浅野 唯月

…いらないって

一色 翼

え…?

気持ちとは裏腹に、涙はどんどん溢れてくる

浅野 唯月

あいつらが…っ…

浅野 唯月

俺のこと…いらないって…っ

一色 翼

あいつらって…
涼風学院の…?

浅野 唯月

…ん…

力のない声で返事をすると 少し怖い顔をした一色が、乱暴に俺を抱き寄せた

浅野 唯月

っ…!
一色っ…なにして…っ!

一色 翼

黙って

浅野 唯月

っ…

沈黙が流れる

強い力で抱き締められ、身動きのとれない中 必死で言葉を探す

一色 翼

…許せない

浅野 唯月

一色…?

一色 翼

俺の可愛い先輩を泣かせるなんて許せない

浅野 唯月

っ…お前のじゃない…

本心か。。それとも───

一色 翼

この際、
もうそれでいいです

咄嗟に出た言葉に、 一色は落ち着いた声で返してくれた

一色 翼

正直結構傷ついてますけどね

浅野 唯月

っ…

一色 翼

でもいい

一色 翼

めんどくさがり屋なのに
面倒見良くて

一色 翼

誰にでも優しい訳じゃないけど、友達思い

一色 翼

ヤキモチ妬くし
ライバル多くて大変だなって思いますけど

一色 翼

それでも俺は、

一色 翼

そんな先輩を
好きになったんで

真っ直ぐで偽りのない。熱を帯びた瞳

時の流れが遅く感じるほど、丁寧で優しい言葉

こいつはいつだって、真剣だったんだ

浅野 唯月

い…しき…?

鼓動がいつもより早い。こんな感覚…知らない…

一色 翼

翼って呼んでくださいよ
唯月さん

浅野 唯月

っ…誰が呼ぶか…

一色 翼

え〜?寂しいな…

寂しいなんて…そんな顔…してないくせに…

火照った体を冷ますように、大きく深呼吸をした

その時

強い懐中電灯の光が俺たちを照らした

若狭 蓮

あ!おーい!
唯月いたぞ!!

若狭の声に反応した3人が、ぞろぞろと 俺を囲む

早乙女 愛来

も〜!探したのよ!
急に出て行っちゃうから!

冬弥 雪

2人で…なにしてたの…?

若狭 蓮

それよりなんで走って逃げたのかが問題だろ!?

碓氷 凛華

いーや。1番問題なのは
就寝時間過ぎてるのに外で騒ぎ立ててる俺らだよ

若狭 蓮

たっ…たまにはまともな事言うじゃないですか…

口々に話し出す4人から俺を庇うように 一色が前へ出る

一色 翼

何しに来たんですか

若狭 蓮

あ!そういえば一色くん!
今日唯月俺たちの部屋で寝るみたいだから借りてくぞ!

一色 翼

先輩を物みたいに
扱わないでください!!

碓氷 凛華

あれ?
なんか羽ちゃんおこ?

一色 翼

…いらないって
言ったくせに…

一色の怒りが、肌にひしひしと伝わってくる

揉め事は避けたいが、 俺には一色を止めることなんてできない

若狭 蓮

いらないって…

若狭 蓮

ああ!アイスのことか?

浅野 唯月

へっ…?

若狭 蓮

まじか〜!唯月もアイス食いたかったのか!すまん!

若狭 蓮

もうこんな時間だし食わねぇかと思って…

若狭 蓮

ほら、お前そういうの気にするじゃん?

浅野 唯月

あ…いす…?

思ってもいなかった反応にスっと力が抜け、 止まったはずの涙が溢れてくる

若狭 蓮

え!?そんなにアイス食いたかったか!?

浅野 唯月

いらないって…
アイスのこと…?

若狭 蓮

若狭 蓮

そうだけど?

腑抜けた顔で俺に手を差し伸べてくる若狭

その表情にも行動にも、 全く悪意は感じられなかった

浅野 唯月

おれ…てっきり…

浅野 唯月

あのグループに俺は
いらないってことかと…

若狭 蓮

はぁ!?何言ってんだよ!

若狭 蓮

いるに決まってんだろ!

冬弥 雪

みんな…イツキ目当てで
集まってる…

早乙女 愛来

そうよ〜?唯月ちゃん居ないと、この4人が揃う事なんてないんだから

碓氷 凛華

唯月がいないと、蓮が元気ないしね?

浅野 唯月

そっ…か…

浅野 唯月

良かった…♪

そうして合宿は終わり また1つ友情を重ねた俺たちは

夏の県大会で全力をぶつけ合い

見事優勝の旗を掲げ、 この夏を終えたのだった──。

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