おじさん
ユウ
おじさん
おじさん
長い間積もったゴミの山を、おじさんに渡された手袋越しに掘り返す。
掘り返す度に、見慣れた茶色の虫がカサカサと逃げていき
それを見て、おじさんが飛び上がりそうになるのを必死に我慢している。
私に気を遣っているのかも知れないし、いい人なのかも知れないけれど
その様子が、私とおじさんは生きる世界が違うとハッキリさせる気がして少し嫌だった。
ユウ
掃除と一緒に私の大事な物を探して欲しい、とおじさんに言われながら掃除をしていると
あるものが目に入り、私の手が止まった。
おじさん
ユウ
ユウ
ユウ
もう元の色すら分からないほどに汚れてしまった、昔の流行りのアニメのぬいぐるみ。
あいつがカレシとうまくいってた頃だったっけ、仕事も保育園も休みの日に行ったお店で
「ユウ、なんでも好きな物を買ってあげる」って珍しく笑顔で話しかけてくれた事を思い出した。
おじさん
おじさん
おじさん
おじさん
ユウ
おじさん
おじさん
ユウ
ユウ
ユウ
ユウ
ユウ
腕を掴んでゴミ袋に投げ入れようとした時に、どことなく私と髪型が似ている彼女と目が合った。
ユウ
ユウ
ユウ
おじさん
おじさん
ユウ
ユウ
思い切ってゴミ袋に押し込み、施設のおじさんと一緒に、持っていく荷物作りの続きに没頭する事にした。
TELLER文芸部 ベロニカさん案
テーマ:手放す 追加お題:準備をする描写
コメント
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ぬいぐるみに声をかけたり、少し愛着を見せる姿は年相応の感じを受けます。ただ、その前後で「この子は意図して感情を消しているのだな」と読者に感じさせる姿の描写、またタイトルの「ドール」の説得力、傷つかないようにそうあろうとしている主人公の姿が流石だと思いました。
大人びているけれど、所々に子どもらしさがありますね。(痴情のもつれがカタカナだったり)その分、自分の置かれた境遇を理解しているのが切なかったです。
親にネグられていたとはいえ、親は親ですもんね... 彼女の母親の想い(ぬいぐるみ)を手放すというなんとも切ない描写が心にグッと刺さりました😢