ハルノ
ハルノ
ハルノ
ハルノ
ハルノ
………最近 後ろから視線を感じる。
漫画雑誌「ひりあ」の看板漫画、「盲目探偵」。私はその作者だ。
単行本累計発行部数は1週間前に500万部を突破した。 アニメも好調。
家に帰ると、今週も読者アンケートで私の漫画が1位になった旨の担当からのメールが来ていた。
ハルノ
この業界に入って20年。 やっとここまでこぎ着けた。
もうあの地獄の下積み時代には戻らない。 私は絶対にこの地位をキープする!
ハルノ
___と、思ったら まただ。 うなじに刺すような視線。
ここ最近ずっとだ。 ……今は家だし、私は1人暮らしなんだけど…。
ハルノ
ハルノ
ね、春乃(はるの)ちゃん
……「ひりあ」に読み切り掲載された漫画ってさ、あれさ、
あの……私が考えたやつだよね
は?何言ってんのあんた ただの落書きだって言ってたじゃん
でも……
もう うっさいから切っていい?私忙しいの。担当から連絡来てさ
私あの漫画で連載することになったから。分かる?忙しいの。もう連絡して来ないでよね
ハルノ
最悪。めっちゃ嫌な夢見た。
て言うか今日寝苦しい……。
………………… ………………… …………………
ハルノ
……何か、声が聞こえる……?…まさか、私は1人暮らし。
ああ本当に寝苦し……
……は?
…何。なんか今……何?
体が動かない。 何?枕元に誰かいるの?私は1人暮らし____…
春 乃 ち ゃ ん
ハルノ
耳を塞いだ。気のせいなんかじゃない!
ガシャン パリッ
___何かが音を立てて落下した。 何……?
ドサドサドサドサドサドサッ
風も無いのに、私以外誰もいないのに、物が落ち続ける。
ハルノ
寝室を飛び出した。
「春乃ちゃん」
___あの声は良子(よしこ)だ。
私の地獄の下積み時代、 どんなに頑張って描いても出版社のゴミ箱行きになり、アシスタント先でセクハラされまくった下積み時代。
その時のアシスタント仲間、良子。
彼女が酒の席で語ってくれた漫画のアイデアを
私は盗用して、「ひりあ」に持ち込んだ。 それが「盲目探偵」。
軽い気持ちだった。こんなに売れるなんて思ってなかった。 でも……
ハルノ
ハルノ
ハルノ
ハルノ
ハルノ
私の咆哮がリビングに木霊し____…
誰もいないのにテレビが点いた。
「___ここは**県**町
………**町。確か、良子の地元……
ここに漫画家を志す1人の少女がいました。
彼女のスケッチブックにはたくさんの素敵なキャラクターが。 少し覗いてみましょう
年季の入った、黄ばんでしわしわのスケッチブック。 ……ああ確か良子、昔近所のお姉さんとよく遊んでいたと言ってなかった?
確か……確かそのお姉さんも漫画が好きで…………え?
待って。真ん中にデカデカと描かれたそのキャラクターは。
「盲目探偵」の……………
ああそうか。良子
「臨時ニュースをお伝えします。昨夜午後11時頃、漫画家のヤマノ、本名 宮沢良子さんが、自宅で倒れているのが発見され、病院に搬送されましたが今日未明、死亡が確認されました
あなたも盗んだのね。アイデアを
馬鹿な良子。 お人好しの良子。
あなたが「後ろにいる」と言ったのは
後ろから視線を感じる。 最近ずっとだ。
食器棚が、 私目掛けて倒れて来る。
良子 あなたは
私に、伝えようとしてくれたのね
コメント
6件
息もつかせぬ上質なスリラーでした! シンプルなところがかえって恐ろしさを演出しています。お見事!👏
バーッと書いたのでいろいろな説明を省きました😳 最初にアイデアを出した少女は……ニュースキャスターの語り方が過去形になっていたことから察してください😨 良子も細々とですが漫画家活動をしておりました。 諸々都合良いのは非リア弟の作品だからです😳 読んでくださりありがとうございました❗