私は生まれた頃から 醜い容姿で嘲られてきました
みすぼらしい私に 後ろ指を刺し、笑う人々
暴言も吐かれるだけ 吐かれてきました
でも、そんな私に 転機が訪れたのです
晴天の空の下 鐘の鳴る式場の中で
高い身分の男性と 婚約することができたのです
両方の両親は大賛成 とても幸せな式でして
多くの国民に祝福されて 幸せな日を迎えました
それから私達は一人目の子宝を 授かることとなりました
なんと美しい子供だ…
奇跡の子では?
容姿が完璧だ…
一億年に一度の天使と言えるかもしれない…!
産まれた子は とても美しい娘でした
艶のある金髪に黒く澄んだ瞳
薄い桃色の唇は 桜の花を秘めているようでした
私
夫
隣でにっこりと笑う彼は 優しくて暖かくて
とても嬉しい気持ちになりました
でも、我が子とは裏腹に 醜い私が大嫌いになった
周りの人だって父似で良かった、って思ってるんでしょ?
あぁダメね、私
自分の子に劣等感を抱くなんて 気にしないのが一番なのに
誰もそんなこと言ってないのに
数年後
娘はすくすくと健康に育ちました
華奢な背中に細く長い手足 彼女は多くの人気を集めました
ただ、難点が一つだけ
娘
夫
夫
娘
夫を睨みつけて部屋を出ていく娘
今考えれば反抗期の可愛い喧嘩 だったのかもしれません
でも、その時の夫は 頭に血が上っていて
夫
私
夫
夫
信じられない、という表情で リビングを出ていく夫
私
独りぼっちになった部屋で 私は悔しくて泣いてしまいました
次の日の朝
やけに外が騒がしいので 窓を開けると
瞬間、石を投げつけられて
石が少し頬を掠って血が出ました
また、奥にあるドレッサーの鏡が割れてしまったのです
私
ヒリヒリする右頬を抑えて 外を見ると数々の罵声
昔を思い出すような言葉だらけで 目の前が真っ暗になった気がして
立ち尽くす事しかできませんでした
お前が奇跡の子を 駄目な子に育てたんだろう?!
自分とは反対に 美しい子を持ったからといって嫉妬か!
その醜態晒して 自分が有利だと思うなよ!
夫の仕業だと 瞬時に気づいてしまって
その時私に味方など いるわけがなくて
国中が私の敵でした
それに
これまで封じ込めていた 娘への劣等感が弾けてしまって
すぐさま窓を閉めて 娘の部屋へと急ぎました
そっと部屋に入ると まだ寝ている彼女が見えました
スヤスヤと寝息をたてて 色白の長い手足を無造作に広げて
それでも私とは合わせ鏡のように 彼女は美しかった
私
そっと話しかけたが 熟睡しているのか反応はなくて
私
私
ベッドの上で馬乗りになっても 気づかれなかった
貴女の美貌が憎かった
そして何よりも
羨ましかった
私
私
いつの間にか私の頬を伝う涙も この一振りで消えるでしょ?
両手にはさっき割られた鏡の破片
私は自分の首と
娘の首を
削ぐように切って消えた
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コメント
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コンテスト参加ありがとうございます。 とても悲しいですが、優しいお話でもあると感じました。この中で1番悪いのは赤の他人、つまり周りの人間ですね。娘を授かってから、生きる理由はその子だった。母親にとって、まさにアナタは私の全てだったんだと思います。また、最後の、消えた、で物語が終わる所も素敵でした。

うわ、切ないです 夫、選び間違えたんですね… こんな時、寄り添ってあげるのが夫なのに… もう、最高です、大好きです((
誰にでも嫉妬心とか他の人をよく思わないことってあると思う でも、そんな中頑張って生きてるんだよね もうどうにも我慢できない時、こんな風に全てがなくなっちゃうんだろうな、、ってなった!