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月が満ちる、その前に
第2話 隣にいる理由
夕焼けの帰り道。
並んで歩く距離は、肩が触れそうで触れないくらい。
月城 環(つきしろ たまき)
環が唐突に言う
月城 環(つきしろ たまき)
氷川 朔 (ひかわ さく)
環は笑う
月城 環(つきしろ たまき)
氷川 朔 (ひかわ さく)
朔は立ち止まって目を瞑る
───昔から。
その一言に、どれだけの想いが詰まっていたのか。
3年前
中学に入って、初めてクラスが分かれた。
それまでは、ずっと同じ教室。
両親同士の付き合いもあって、家も近い。
環の隣にいるのは自然なことだった。
疑ったこともなかった。
あの頃の環は黒髪だった。
艶のある真っ直ぐな黒髪をきちんと整えていて。
制服も着崩さない。
先生の話は真面目に聞いて、 提出物は誰よりも早い
テストは常に上位。
運動もできるのに、絶対に自慢しない。
誰に対しても平等で優しくて、 笑うと少し目が細くなる。
女子が騒ぐのも無理はない、 って分かるくらい、
完璧で、清潔で真っ直ぐだった。
絵にかくような優等生だった。
でも俺の前では、少しだけ雑だった。
椅子を引きずる音とか、 たまに投げやりな返事とか。
それを知っているのは全部、 自分だけだと思っていた。
クラスが離れても、 最初は何も思わなかった。
時間が合えば一緒に帰るし、廊下ですれ違えば話す。
ただ少しだけ回数が減っただけ。
忙しいんだろ、って。
それだけ。
ある日。
廊下で、女子の声が聞こえた。
まい
由香
まい
まい
まい
足が止まった。
俺といるときより。
その一言が、妙に残った。
なんでだよ、って思った。
俺の方がずっと前から隣にいたのに。
その日の帰り道
いつも通り環が横にいる。
中学の頃の環
顔を覗き込まれる。
近い。
昔から同じ距離のはずなのに。
心臓が変な音を立てた。
そのとき。
まい
環は一瞬だけ俺の方を見て目を逸らす。
ほんの一瞬、迷った顔。
中学の頃の環
ああ、って思った。
隣は選ばれる場所なんだ。
当たり前じゃなかった。
その夜、
初めて想像した。
環に彼女ができる未来。
知らない誰かの隣で笑う姿。
息が詰まった。
奪われる、とかじゃない。
ただ、
隣にいない未来が、無理だった。
それが何かを理解するまで、 そう時間はかからなかった。
好きになっちゃダメだ、と1番に思った。
環にとって俺は幼なじみで、 親友で、安全な場所。
そこを壊したくなかった。
だから。
離れればいいと思った。
高校受験。
環が偏差値の高い公立高校を目指していることを知っていた。
だからあえて、別の道を選んだ。
名門私立。
物理的に離れれば、 きっとこの思いも薄れる。
終わらせられる。
そう思っていた。
入学式
体育館の奥。
見覚えのある背中。
金髪
笑ってない。
誰にも囲まれていない。
でも、少し辛そうに。そこに立っていた。
氷川 朔 (ひかわ さく)
────なんでここいるんだよ
終わらせるはずだったのに。
同時に思う。
よかった。
その感情に絶望した。
逃げ場が消えた。
忘れられない、忘れさせてくれないのだ、と、思い知らされた。
あの日から、
隣は当たり前じゃなくなった。
だからこそ、
意地でも隣を守り続けないと。
じゃなきゃ
また俺から離れていくと思った。
月城 環(つきしろ たまき)
環が覗き込む
朔は少しだけ視線を逸らす
氷川 朔 (ひかわ さく)
月城 環(つきしろ たまき)
氷川 朔 (ひかわ さく)
月城 環(つきしろ たまき)
氷川 朔 (ひかわ さく)
嘘だ。
ありすぎる。
隣が当たり前じゃないって知ったから。
1度、終わらせようとしたから。
それでも終われなかったから。
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