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第1話 - あ

2023年10月16日

#スカッと

タナカトシキ

メイサ

ナオ、ジンと付き合い始めたって本当？

ナオ

そうだけど、なんで？

メイサ

ジンは私の彼氏だよ。

メイサ

ナオ、それ知ってるよねぇ？

ナオ

知ってたけど、それがなに。

メイサ

はあ？

ナオ

ジンとは3カ月前に別れたでしょ。

ナオ

私とジンが付き合い始めたのは、1週間前だよ。

ナオ

期間が全然かぶってないのに、

ナオ

責められる筋合いはないんだけど。

メイサ

責める？ふざけんなよ。

メイサ

私は、ジンとは別れたつもりはないから！

ナオ

え、どういうこと？

メイサ

ジンとケンカになったとき、

メイサ

「疲れた。もうお前とは会わない」って言われただけで、

メイサ

それっきり電話もLINEも反応してくれなくなっただけ。

メイサ

つまり「別れよう」ってはっきり言ってないの！

ナオ

あのさ、それ…。

ナオ

もう会わないって、完全に決別宣言だと思うけど。

ナオ

自分で理解してなかったの？

メイサ

うるさいわね。ただの冷却期間だったのよ！

メイサ

ジンはまだ私と付き合ってるの！

ナオ

じゃあ、最後にあったのはいつ？

メイサ

その…3カ月前のケンカの時よ。

ナオ

電話かLINEを最後にしたのはいつ？

メイサ

それも、ケンカの時以来ずっと無視されてる…。

メイサ

っていうか、LINEにいたっては既読すらつかない。

ナオ

つまり、振られたんでしょう。

メイサ

違うわ！振られてなんかいない！

メイサ

ブスのアンタとちがって、男にモテる私が振られるワケないでしょ！

ナオ

悪いけど、顔は関係ないと思うよ。

ナオ

私とジンが仲良くなったキッカケはなんだと思う？

メイサ

それは、アンタがズルいことをしてジンを奪ったからでしょ！

ナオ

全然違う。

ナオ

ジン、メイサが浮気してたことを知って、すごく悩んでたの。

ナオ

私とメイサが仲が良かった事を知っていたから、

ナオ

向こうから相談に乗ってほしいって言ってきたのよ。

メイサ

はあ？なんで相談になんか乗るのよ。

メイサ

それでジンをダマして、私たちを別れさせたってわけね！

ナオ

そうじゃないってば。

ナオ

浮気相手とメイサを、どうしても別れさせたいんだけど、

ナオ

どうしたらいいのか分からないって、すごく悩んでいたんだよ…。

メイサ

アンタ、まさか私が他の男と会ってた事をバラしたの？

メイサ

口が軽いわね。サイテー。

ナオ

最低はどっちよ…。

ナオ

私がバラす前に、ジンはもう浮気の事実を知ってたわ。

ナオ

しかも相手が、会社の取引先の男性だってこともね。

ナオ

会社に言わなかっただけでも、感謝してほしいくらいなんだけど。

メイサ

なに言ってんの。会社に報告する必要なんてないでしょ。

メイサ

恋愛は個人の自由なんだから。

ナオ

そりゃ、そうだけど。

ナオ

浮気相手が取引先の人で、しかも既婚者ときたら、ね。

ナオ

会社にバレたらそうとうヤバかったでしょ。

メイサ

アンタ、私をおどかしてるつもり？

ナオ

え、そんなつもりはないけど？

ナオ

被害妄想が強すぎじゃない？

メイサ

なに正義感ぶってるのよ。社長秘書だからって、調子に乗ってるんじゃないの？

ナオ

え？

メイサ

私は知ってるんだからね。

メイサ

アンタが真面目な仮面をかぶったビッチだってこと！

ナオ

ビッチって…ひどい言いかたをするよね。

ナオ

少なくとも私は、あなたみたいに色んな男の人と同時進行で付き合ったりしないわ。

ナオ

メイサ、美人でモテるからって、浮気するのはどうかと思ってたよ。

ナオ

親友だと思って、何も言わなかったけどさ。

メイサ

私がモテるのはしょうがないでしょ。

メイサ

黙ってても、勝手に男のほうから近寄ってくるんだから。

ナオ

アナタが昔からモテるのは認めるよ。

ナオ

でもいい加減落ち着かないと、

ナオ

いつまでも男の人が優しくしてくれるわけじゃないわよ。

ナオ

ましてや会社は、恋愛する所じゃなくて、仕事をする所だからね。

メイサ

もっともらしいコトをエラそうに言わないで！

メイサ

とにかく、ジンは必ず奪い返すから！

ナオ

え。

メイサ

ブスはブスらしく、一生私の引き立て役をやってろ！

メイサ

このどグサレ女！

ナオ

すごい捨て台詞だわ…。

ナオ

逆に記念にとっておきたいコメントね…。

～翌日～

ジン

あのさ、メイサ。

ジン

俺がLINEに返事しないからって、

ジン

なんども電話をかけてくるのはやめてくれる？

ジン

仕事中でもお構いなしにスマホを鳴らすから、

ジン

周りの人にも迷惑だし、仕事に集中出来なくなるよ。

メイサ

だって全然返事してくれないんだもん。

メイサ

なんで無視するの？

ジン

なんでも何も…。

ジン

俺達、3カ月前に別れたよね。

ジン

はっきりと、もう会わないって伝えたはずだけど。

メイサ

でも別れるって言わなかったじゃん。

メイサ

私はまだ、別れたつもりはないよ。

ジン

まいったな。

ジン

俺はもう終わった気でいたから、彼女が出来たんだ。

メイサ

知ってるわよ。

メイサ

私の親友だったナオと付き合ってるんでしょ。

ジン

そうだよ。

ジン

つかお前は、他にも男がいるんだろ？

ジン

取引先の、ナントカさんって既婚者。

ジン

まさか既婚者じゃ結婚が出来ないから、

ジン

俺と復縁したいとかじゃないよな。

メイサ

ダメなの？

メイサ

だって、私のことあんなに好きだって言ってくれてたじゃない…。

ジン

浮気されるまではな。

ジン

でも他に男がいるって分かったら、急に冷めた。

ジン

しかも不倫してるとか、俺の中ではありえないから。

メイサ

ほんの出来心よ！

メイサ

だって、相手がしつこく誘ってくるから、

メイサ

食事くらいなら良いかなって思ったのよ。

ジン

食事だけじゃすまなかったんだろ？

ジン

仕事で会うフリをして、昼間からホテルに行ったり、

ジン

平日の夜に自分の家に連れ込んだりして。

ジン

相当ヤバいことをしていた自覚はあるのか？

メイサ

会社には知られてないわよ。

メイサ

それに、もう会っていないし。

ジン

会ってないというか、その取引先の男の都合で

ジン

会えなくなったんだろ？

メイサ

知ってるの？

ジン

ああ、課長から聞いたよ。

ジン

相手の男に、二人目の赤ちゃんが産まれたってね。

ジン

つまり奥さんが出産の里帰りで、

ジン

家を空けている間の暇つぶしに遊ばれたんだろ？

メイサ

そうよ！相手も本気じゃなかったの。

メイサ

私には最初から、ジンしかいないわ。

ジン

いや、俺はもういい。

メイサ

え。

ジン

ナオがいるから。

メイサ

そんな。

ジン

メイサと別れて、やっと気づいたよ。

ジン

俺が本当に好きなのはナオだけだってこと。

メイサ

何を言ってるの。

メイサ

ナオなんて、あんな地味な女が

メイサ

私よりイイはずないでしょ！

ジン

お前は何も分かってない。

ジン

ナオは浮気しないし、誠実な人だよ。

メイサ

そんなの、真面目だけがとりえってだけでしょ。

メイサ

あんなツマラナイ人、すぐ飽きちゃうと思うよ。

ジン

なあ、彼女を悪く言うのはやめてくれ。

ジン

これ以上、メイサを嫌いになりたくないんだ。

メイサ

ジン…。

ジン

お願いだから、俺達のコトはほっといてくれ。

ジン

分かったら、もう終わりだ。

メイサ

まって、ジン。

メイサ

私、まだあきらめないからね。

メイサ

必ずもう一度、私を好きにさせてみせるわ。

～さらに翌日～

メイサ

あんた、よくもジンを本当に盗んでくれたわね。

メイサ

ナオのせいで、ジンに嫌われそうなのよ！

メイサ

私からジンを横取りした罪は重いわ。

メイサ

必ず罰を与えてやるからね。

ナオ

ちょっと何を言ってるの。

ナオ

この間も言ったけど、ジンと私が付き合い出したのは

ナオ

本当に最近のことなのよ。

ナオ

横取りしたとか盗んだとか、そんな話じゃないはずよ。

ナオ

どうしてそこまで被害妄想に取り付かれてるの？

メイサ

うるさいわね！

メイサ

取引先の男も連絡が取れなくなっちゃったし、

メイサ

ジンにも「もうほっといてくれ」とか言われたりして

メイサ

こんなに何もかも上手くいかなくなったのは、

メイサ

全部あんたのせいだからね！

ナオ

いや、私たぶん関係無いよね…

ナオ

元はと言えば、会社の取引先の人とつきあった

ナオ

メイサの自己責任でしょ。

ナオ

会社にバレてないだけ、ラッキーだったと思うけど…。

メイサ

なにがラッキーよ！

メイサ

最近、本当にツイてないんだから。

メイサ

あんただけが幸せだなんて、不公平よ。

ナオ

不公平じゃないでしょ。

ナオ

メイサなら、ちょっとがんばればすぐ彼氏が出来るでしょ？

ナオ

いいかげん、ジンのコトは諦めてよ。

メイサ

諦めるもんですか。

メイサ

私はジンと結婚するの！

メイサ

ナオみたいな干物女は、軒下でぶらさがって

メイサ

私の幸せを悔しそうに見ているのがお似合いだわ！

ナオ

相変わらずスゴイことを言うわね。

ナオ

ゴメン、もう付き合いきれない。

ナオ

あなたとやりとりしていると、こっちまでおかしくなりそう…。

メイサ

こんな程度じゃ気が済まないわ。

メイサ

アンタには地獄に堕ちてもらう。

メイサ

それが嫌なら、ジンを返して！

メイサ

私とジンは結婚する運命なんだから…！

～１時間後～

メイサ

ナオ、私アンタの家の前に来たわよ。

メイサ

生意気にオートロック付きのマンションになんて住んじゃって。

ナオ

私の家の前に来たの？

メイサ

そうよ。

ナオ

何のために来たのよ。

ナオ

私に会いに来ても、何の意味もないでしょ。

メイサ

意味はあるわよ。

メイサ

あんたに、ジンを諦めてもらうために来たのよ。

ナオ

どうやって諦めさせるつもりよ。

ナオ

私がジンと別れる理由なんて無いんだけど。

メイサ

ゴチャゴチャ言ってないで、入口のロックを開けなさいよ！

ナオ

え？

メイサ

今からアンタの家に乗り込んで言って、

メイサ

アンタの大事なものを全部壊してやるんだから！

ナオ

やめてよ、恐ろしい！

ナオ

いったい何を考えてるの？

ナオ

あのクールなメイサが、別人のようだわ…。

メイサ

今、宅配業者が来たから、一緒にマンションに入ったわ。

ナオ

え、ウソ。

メイサ

部屋にたどりつくのも時間の問題ね。

ナオ

ちょ、ちょっと本気？

ナオ

そんなコトをしたら、警察を呼ぶけどいいの？

メイサ

警察なんて怖くないわ。

メイサ

これは友人としての訪問だから！

ナオ

友人ね…。

ナオ

じゃあ、友人として私からも教えてあげる。

メイサ

は？なにを。

ナオ

メイサ、あなたもう会社にはいられなくなると思うよ。

メイサ

へ？

ナオ

あなたの浮気相手だった男は、取引先の人だよね。

ナオ

確か名前は、クロカワさん。

メイサ

そうだけど…。

ナオ

クロカワさんの奥さんが、ウチの会社の

ナオ

社長令嬢だってことは知ってた？

メイサ

はあ？なにそれ？

メイサ

冗談でしょ？

ナオ

冗談じゃないよ。

ナオ

人事の人に聞いた情報だもん。

ナオ

クロカワさんの奥様は、たしかに社長令嬢よ。

ナオ

その社長令嬢が、最近出産して家に戻ったら、

ナオ

自分の夫が、浮気している事に気付いたそうよ！

メイサ

え！？そんなバカな。

ナオ

で、その浮気相手が、メイサだということも気づいていらっしゃるの。

ナオ

だからもうじき、奥さんから訴えられるでしょうね。

メイサ

そ、そんなバカな。ハッタリでしょ？

メイサ

私から逃げたいからって、そんなテキトーなコトを…。

ナオ

ウソだと思うなら、今すぐ家に帰ったら？

ナオ

何か重要なモノが届いているはずだから。

メイサ

なんですって。

メイサ

アンタがなんで、そこまで知ってるの！

ナオ

だって私、社長秘書だもん。

ナオ

まあ、これ以上詳しいことは言えないけどね。

ナオ

私は社長の娘さんの味方だから。

メイサ

なにそれ。

ナオ

こんなところで油を売ってる余裕は無いと思うよ？

ナオ

はやく家に帰って、今後の事を考えなよ。

ナオ

私に言えることはここまで！

メイサ

ナオ!親友の私を見捨てるの？

ナオ

もう、親友じゃないよ。

ナオ

浮気や不倫する人なんて、嫌いだわ。

ナオ

ましてや、私を泥棒猫みたいに罵ってさ。

ナオ

ごめんだけど、もう私にも関わらないで。

ナオ

これ以上しつこくしたら、ストーカー扱いで警察を呼ぶからね。

メイサ

私が何をしたっていうの。

メイサ

ただ話をしに来ただけなのに！

ナオ

あ、あとこのマンションはね、警備員も常駐しているの。

ナオ

今、セキュリティ管理者に連絡したから、

ナオ

もうすぐ警備員がそっちに行くわよ。

ナオ

それじゃあね。

ナオ

って、既読が付かないってことは…もう捕まっちゃったかな。

ナオ

ま、いっか。

～その後～

ナオ

メイサはあの後、警備員に取っ捕まって

ナオ

家に帰されたようです。

ナオ

そして私が助言したとおり、家には社長の娘さんから

ナオ

内容証明のお手紙が届いていたそうです。

ナオ

内容はもちろん、不倫の責任を問うもので、

ナオ

慰謝料として100万円を請求されたというコトです。

ナオ

取り乱したメイサは、私やジンにも助けを求めてきましたが、

ナオ

「私たちには何もできない」とキッパリ縁を切りました。

ナオ

まあ、不倫は不法行為ですからね…。

ナオ

自分でやったことの責任は、自分でとってもらわないといけません。

ナオ

メイサは会社にも居づらくなったのか、自己都合で退職してしまいました。

ナオ

今はどうしているのか、私にも分かりません。

ナオ

私は、ジンとの交際も順調で、もうすぐ結婚する予定です。

ナオ

これからもジンを信じ、お互いを大切にして

ナオ

幸せな未来を築いていこうと思います！

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タナカトシキ

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