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第1話 - あ

2023年12月01日

#恋愛

結城　真矢

アツシ

先週は会社の懇親バーベキューに付き合ってもらっちゃって悪かったな

タイセイ

いいよ、父さんの上司の人に何回かお世話になってたしさ、

タイセイ

それに美味い肉をタダで腹一杯食わせてもらったし、逆にありがとうございますって感じだよ

アツシ

そうか、それならよかったよ

アツシ

どうしても家族を誘ってくれって言われちゃってさ

アツシ

息子ももう働いてるんで忙しいと思いますよって言ったんだけど、

アツシ

誘うだけ誘ってみろってうるさくてさ笑

タイセイ

あの人すごい面倒見いいもんね

タイセイ

昔からよく家に遊びにきてたしさ

タイセイ

お年玉とかもよくくれてたから俺とリュウヘイにいちゃんは結構あの人好きだよ

アツシ

リュウヘイのやつは結局顔出さなかったな

アツシ

連絡の返信すら寄越さねえ

タイセイ

あの人はもう終わりでしょ

タイセイ

実は父さんには黙ってたんだけどさ、このまえリュウヘイにいちゃん警察に捕まったんだよね

アツシ

は！？なんだそれ！

タイセイ

捕まったって言うか保護されたって言うか、

タイセイ

休日の夜中に急に知らない番号から連絡が来てさ、

タイセイ

出てみたらそれが警察だったんだよ

タイセイ

あなたのお兄さんが路上でお酒飲んで暴れているところを押さえましたので、

タイセイ

お手数ですが迎えに来ていただいてもよろしいですかっていわれて

タイセイ

わざわざタクシーで1時間かけて迎えに行ったことあるんだよ

アツシ

あいつそんなことしてやがるのかよ

タイセイ

いい加減、実家に帰らさせたらどうなの？

タイセイ

このままじゃリュウヘイにいちゃん家族にまで迷惑かけることになるよ

タイセイ

お父さんの仕送りで東京で一人暮らししてるんでしょ

アツシ

そうだよな、そろそろ考えなくちゃいけないよな

タイセイ

もうリュウヘイにいちゃん27歳だよ

タイセイ

27歳で親の仕送りだけで一人暮らししてるなんておかしいよ

タイセイ

心も悪くないし、体も不自由な部分がないのに

アツシ

ただ俺あいつと約束しちまったからなあ

アツシ

あいつが30歳になるまでは、あいつの夢の小説家の夢を応援するってさ

タイセイ

そんなのリュウヘイにいちゃんの夢物語だから！

タイセイ

小説家なんて働きながら書いてる人がほとんどなのに！

タイセイ

それにリュウヘイにいちゃんそもそも小説なんて書いてないよ！

タイセイ

どうせ！

アツシ

そうなのか？

タイセイ

だって毎日遊び歩いてお酒飲んでるし、

タイセイ

リュウヘイにいちゃんを警察から引き取った時も

タイセイ

リュウヘイにいちゃんの家まで言ったけど、

タイセイ

あの人お父さんのお金ほとんどアニメグッズにつぎ込んでるよ！

タイセイ

ごはんはろくなもの食べてないし、

タイセイ

そもそもお風呂も入ってなかったんだよ！

タイセイ

はやく家に帰らせて、どこでもいいから働かせた方がいいと思うな

アツシ

わかったよ、ちょっと話してみるよあいつと

〜アツシとリュウヘイのチャットルーム〜

アツシ

なあリュウヘイ、お前俺が知らない間に警察のお世話になったんだって？

アツシ

おい、父親なんだから返信ぐらいしたらどうなんだよ

アツシ

お前俺の仕送りで生活遅れてるんだよな、いいのかそんな態度で

リュウヘイ

うるさいな、わかったよ

リュウヘイ

無視して悪かったって

リュウヘイ

警察の件はタイセイから聞いたのかよ

アツシ

お前小説家になるために頑張るって言うから東京での一人暮らしを認めたんだよな

アツシ

アルバイトするって話はどうなったんだよ、タイセイの話によると全くらしいが

リュウヘイ

前までしてたけどちょうど今やってないだけだよ

リュウヘイ

今探し中だからちょっと待ってよ

アツシ

お前ちゃんと小説は書いてるんだろうな

アツシ

しってるか、小説家になるには小説を書かなきゃいけないんだぞ

リュウヘイ

しってるよ！書いてるって！

リュウヘイ

なんなんだよ急に連絡よこして

アツシ

先週俺の会社のバーベキューあるからこいってライン送ったのになんで無視したんだよ

リュウヘイ

普通に予定あったんだよ

アツシ

今のお前にどんな予定があるんだよ

リュウヘイ

バイトだっつのバイト！

リュウヘイ

バイト休んで親父の懇親会に参加しろっていうのかよ！

アツシ

バイトは今やってないんじゃないのかよ

リュウヘイ

そのときはやってたの！なんだよもう！

リュウヘイ

急にしつこいぞ！

アツシ

父親にそんな口聞いて、果たして大丈夫かな？

アツシ

タイセイからお前の暮らしぶりをきいてな

アツシ

仕送りをストップしてもいいかなとお父さん考えてるんだ

リュウヘイ

は！？なにいってんだよ！

リュウヘイ

俺が３０になるまで小説家になる応援するって言ったじゃんかよ！

アツシ

そうなんだけどな、どうも今のお前の生活を聞く限りお前のためになってない気がするんだよな

アツシ

だいたいなんで小説家になるのに東京行かなきゃいけないんだよ

アツシ

こっちで働きながらでもできるだろ

リュウヘイ

東京の同じ作家志望仲間とかいろいろコミュニティもあるし、

リュウヘイ

それに有名人もたくさんいるからこっちの方がチャンスとか色々あるんだよ！

リュウヘイ

てかそれ一人暮らし始める時にも説明しただろ！

リュウヘイ

急に言うこと帰るのは卑怯だろ！なしだなし！

アツシ

そうはいってもな、あのときはお前がちゃんとバイトして、

アツシ

毎日小説と向き合うって言うことが前提条件だっただろ

アツシ

それに半年たったら親への借金を少しずつ返し始める約束もあっただろ

アツシ

お前が何も言わずにずっと無視してるからあえて俺も何も言わなかったけどよ

リュウヘイ

いやそれはちょっといろいろ予定とか状況が変わってさ

アツシ

まあべつになんでもいいけどさ

アツシ

もうちょっとしっかりとしろよお前

アツシ

もう27歳だろ、いい加減しゃんとして生きろよ

リュウヘイ

わかったよ

アツシ

あと弟にあんまり迷惑かけるなよ、あいつはちゃんと会社で働いてるんだ

アツシ

長男が次男の足引っ張ってどうすんだよ

リュウヘイ

タイセイはタイセイの人生、俺は俺の人生なんだから関係ないだろ

アツシ

悲しいもんだな、せっかくの兄弟なのによ

アツシ

とにかく、次なにかもんだいおこしたりして迷惑かけたら仕送り止めるからな

リュウヘイ

わかったよ、気をつければいいんでしょ

リュウヘイ

努力しまーす

〜タイセイとリュウセイのチャットルーム〜

リュウヘイ

おまえ親父に余計なこと言ったろ！

リュウヘイ

まじでいらないことすんなって！なんでわざわざ警察の世話になったこととかいうん？

タイセイ

いや、だってにいちゃんこのままじゃマジで人生腐るよ

タイセイ

俺もにいちゃんの夢応援したいけどさ、

タイセイ

一回も小説読ませてもらったことないし、ずっとバイトもしてないじゃん

タイセイ

お父さんたちも心配してるし、実家帰った方がいいんじゃないの？

リュウヘイ

やだよあんな田舎に帰るなら死ぬわ

リュウヘイ

アキバに骨を埋めるって俺は決めてんだよ

タイセイ

それなら働きなよ、わざわざ働けばお父さんからの仕送りももらいながら生活できるじゃん

リュウヘイ

やだよめんどくさい、俺は社畜になる器じゃなくてもっと貴重な存在なんだから、

リュウヘイ

あんな社会の歯車みたいな奴らになれるかよ

タイセイ

いまのにいちゃんは社会の歯車どころか社会の膿みたいなものなんだけどね

リュウヘイ

うるせーよ！

リュウヘイ

いまは頭の中でよく構想を練ってる段階なんだから書き始めるまで時間がかかるんだよ

リュウヘイ

実際、設定としてはマジで世間を震撼させるとんでもない面白さの作品が何個もあるから

リュウヘイ

あとはアウトプットするだけなんだよな

タイセイ

じゃあ早くそのアウトプットをしなって

リュウヘイ

うるせーな

リュウヘイ

いい作品は時が来たら書けるものなんだよ

リュウヘイ

まだその時じゃないだけ

タイセイ

よくわかんないけど、とにかくバイトはちゃんとしな

リュウヘイ

親父の仕送りをなんとかやりくりするだけである程度問題なく住めてるからいいんだよ

リュウヘイ

俺くらいスマートなやつは無駄な労働は避けるの

リュウヘイ

わかる？

タイセイ

なにが問題なくすめてるだよ！

タイセイ

この前家行った時ガス止まってたじゃん！

リュウヘイ

電気があれば人間なんでもできる時代だからいいんだよ

タイセイ

うわーまじ不潔

リュウヘイ

てか不潔で思い出したんだけどよ

リュウヘイ

お前親父の懇親会に参加したんだって？ww

タイセイ

うん、無料で美味しい肉食えるってきいたから

タイセイ

それに昔お世話になってたお父さんの上司の人も来てたからね

タイセイ

おかげで大人になった今でもお小遣いくれたし行ってよかったよ

リュウヘイ

はーん

リュウヘイ

それでなに、お前彼女連れてったわけ？ww

タイセイ

は？

タイセイ

いや、つれてってないけど

リュウヘイ

うそつけw俺インスタの投稿で見たぞww

リュウヘイ

懇親会のバーベキューで女の人と楽しんでる写真w

タイセイ

ああ、その人はねスズカさんっていってさめちゃくちゃいい人なんだよ

リュウヘイ

いやいや照れ隠しはいいってw彼女だろ？めちゃくちゃ楽しそうにいちゃついてんじゃんww

タイセイ

いちゃついてるんじゃなくてただの腕相撲してる写真でしょ

リュウヘイ

お前の彼女

リュウヘイ

まじでぶっさいくだなwwwww

タイセイ

へ？

リュウヘイ

お前よくこんなブスと付き合えるなw

タイセイ

いやいやそんなこというもんじゃないって

リュウヘイ

おれ、こんなブサイクそうそう見たことないけど逆にどこで見つけたんだよw

リュウヘイ

石の裏か？w石の裏にいそうな顔してるよなwww

タイセイ

おいあんまりスズカさんのこと悪く言わないでよ

タイセイ

本当にいい人なんだから

タイセイ

彼女ではないけど

リュウヘイ

じゃあ誰だよww

リュウヘイ

あんなブサイクと俺喋りたくもないわww

リュウヘイ

インスタのストーリーでアンケートとってみるか？wブスかブスじゃないか

タイセイ

そんなことしたら本当に怒るからね

タイセイ

てか絶対やっちゃダメだよスズカさんかわいそうだし、

リュウヘイ

ザンネーン、もう実は５分前にアンケート取ってまーすww

リュウヘイ

みんなブスだってよw俺の遊戯王仲間がそう言ってますw

タイセイ

まじか、やばいよにいちゃん

タイセイ

にいちゃんインスタフォロワーにお父さんもいたよね

リュウヘイ

いるいるw

タイセイ

スズカさん、お父さんの上司の娘さんだよ…

リュウヘイ

へ？

タイセイ

お父さんにストーリー見られる前に早く消しなよ！

リュウヘイ

ちょっとまじか

リュウヘイ

え、お前の彼女じゃないの？

タイセイ

彼女いないよ！

タイセイ

スズカさんともバーベキューで初めて会ったんだから！

リュウヘイ

マジかよお前早くそれ言えよ！

タイセイ

とにかくストーリー早く消した方がいいって！

リュウヘイ

うわ終わった

タイセイ

何？

リュウヘイ

もう手遅れっぽい

〜リュウヘイとアツシのチャットルーム〜

アツシ

おい、おまえどういうことだよ

アツシ

俺さっき言ったばっかりだよな、周りの奴らに迷惑をかけるなって

アツシ

俺の上司の娘さんをあんなふうにネット上でからかって何がしたいんだお前は？

リュウヘイ

すみませんでした

リュウヘイ

いろいろと手違いがありまして

アツシ

手違いで済まされることじゃないだろ

アツシ

だいたいあんなことするようになるまで腐り落ちてたとはな

アツシ

あんなことをする奴の作品なんて誰が読みたいんだ

アツシ

悪いけどもうお前の仕送りは止めるから

アツシ

東京で頑張りたいならもう自分でどうにかしろ

アツシ

実家にもしばらく帰ってくるな

リュウヘイ

ちょっと待ってそれだけはどうか勘弁してください

アツシ

無理だ

アツシ

ちょっと甘やかしすぎたようだな

アツシ

タイセイのところにも泣きつくなよ

アツシ

俺から無視しろって言っておくから

リュウヘイ

ちょっとまってください

リュウヘイ

そしたら俺どうやって生きていけばいいんですか

リュウヘイ

来月の家賃は！

リュウヘイ

ちょっと！

〜後日談〜

タイセイ

その後、お父さんからの仕送りを一切ストップされたにいちゃんは東京の路頭に迷い、

タイセイ

家賃の支払いもすることができず家を追い出されてしまいました。

タイセイ

一度僕のところに助けを請いに来ましたが、お父さんに口うるさく助けるなと言われていたので

タイセイ

しらんぷりをしました

タイセイ

そのご、おにいちゃんは実家に泣きついてなんとか家に入れてもらい、

タイセイ

今は地元の工場で毎日労働に勤しんでいるようです

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結城　真矢

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