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冬は嫌いだ。
元々が体温が低いので、この寒さは殊更堪える。
極道は面子が命、モコモコと着ぶくれするなど軟弱な真似は出来ない。だから、冬でも羽織っても外套までで、特に厚着はしない。
しかし、いきった所で寒いものは寒い。
悴む手に、はぁー、と白い息を吹き掛ける。一瞬は暖かいが、なしのつぶて。
小林幸真
背後から声を掛けられ、振り向くと小林の兄貴が立っていた。
小峠華太
小林幸真
小林の兄貴の視線が、俺の手に注がれる。
小林幸真
小峠華太
血流が滞るため、華太の手は何時もよりも、一層白さが際立っている。
小林幸真
兄貴は外套すら羽織ってないが、特段寒そうな様子でもない。筋肉量の違いなんだろうな。俺も鍛えている方ではあるが、明らかに小林の兄貴とは筋肉量の差に開きがある。
ひとしきり俺の手を繁々、見つめていた小林の兄貴が
小林幸真
と、短い言葉と共に手を差し出してきた。
手をとれという事か?差し出された手に手を重ねると、小林の兄貴はそのまま手を握りしめ、重ねた手と共に小林の兄貴のポケットに仕舞われてしまった。
小林幸真
それは嘘。
本当は、このまま速水と飲みに行く予定だったでしょ?さっき、速水から泣き言メール入ってたので、俺、知ってますよ。
小林の兄貴の反対のポケットから、速水からの着信だと思われる振動音に気づないフリをする。小林の兄貴の不器用な優しさを無下にするのは、不粋というものだろう。 速水には悪いが、少し待ちぼうけして貰おう。
握られた手から伝わる温もりよりも、顔の方が火照って暑い。
小峠華太
小林幸真
小峠華太
冬の寒さは嫌いだ。 けれど、小林の兄貴と一緒なら、少しだけ冬も好きになれそうだ。
おわり