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鏡

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1 - 鏡

♥

170

2019年06月09日

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田久保早苗

なにこれ?

宮本創

なにって鏡だよ(笑)

会社員の宮本創が暮らすのは安い木造のボロアパートだった。

部屋の中も散らかっており、とても清潔な雰囲気ではない。

故に、壁に掛けられたアンティーク調の鏡に、交際中の田久保早苗は違和感を覚えた。

宮本創

この近くにアンティークショップがあってね

宮本創

寄り道がてら行ったらその鏡が売られてて買ったんだよ

田久保早苗

へぇ~

田久保早苗

…それにしたってこの部屋には不釣り合いな気もするわね(笑)

宮本創

そう思われても仕方ないな

宮本創

でも俺ってアンティークとかレトロ系の物とか好きだから

宮本創

つい買っちゃうんだよね

宮本創

この鏡も店頭に並んでるのを見て

宮本創

いわば一目惚れ、みたいな?

田久保早苗

相変わらずその変の嗜好には拘りがあるのね(笑)

田久保早苗

でも高かったんじゃない?

宮本創

宮本創

聞いて驚くなかれ

宮本創

たった800円なんだぜ

田久保早苗

k800円?!

宮本創

最初は値札が間違えてるんじゃないかと疑ったけど

宮本創

店主に聞いたら間違いないとさ

田久保早苗

八800円なんて普通の壁掛けの鏡にしては安すぎるような…

田久保早苗

なにか曰く付きとかなんじゃ?

宮本創

曰く付き?

宮本はまじまじと鏡を見詰めていたが、不意にニヤッと笑みを浮かべた。

宮本創

曰く付き=歴史的な物って可能性があるわけだろう?

宮本創

いいね

宮本創

益々気に入った!

宮本の嗜好を理解しているつもりの早苗が気味悪がるのもよそに、

宮本は壁に掛けられた鏡を益々気に入った様子だった。

それから1週間後。

会社から帰宅した宮本を、大家の宮内芳夫が呼び止めた。

宮内芳夫

宮本さんって今誰かと同居してるの?

宮本創

いえ、独りですよ

宮内芳夫

だよねぇ…

宮本創

なんでです?

宮内芳夫

宮内芳夫

ちょっと前からなんだけどね

宮内芳夫

おたくが会社で働いてる時間帯だったと思うんだが

宮内芳夫

掃除で部屋の前を通ったとき

宮内芳夫

中から女性の鼻歌みたいなのが聞こえた気がしたもんでね

宮本創

僕の部屋から?

宮内芳夫

そう

最初、宮本は隣の部屋では?と異を唱えたが、すぐにそれはないな、と自分で否定した。

隣に住んでるのはうだつの上がらない中年の男で、もう一方は空き部屋だからだ。

だが、その隣の中年の住人からも宮内と同じことを言われてしまった。

どうやら、宮本の部屋から昼間、女性の鼻歌が聞こえるのは間違いないらしい。

宮本創

(そういえば早苗はあの鏡が曰く付きかもとか言ってたな)

宮本創

(…まさかあれが原因か?)

一時期、宮本はそう思ったが、結局は考えすぎだと自分に言い聞かせた。

しかし、数日後のこと…。

田久保早苗

どういうことか説明して

宮本創

な、なんだい突然?

田久保早苗

今日、お菓子を作ったからスペアキーであなたの部屋に入ったのよ

田久保早苗

そしたらなにを見たと思う?

宮本創

なにを見たの?

田久保早苗

田久保早苗

女の髪の毛よ!

田久保早苗

鏡の前に女物の髪の毛が何本か落ちてたのよ!

宮本は愕然としながらも、慌てて早苗の説得を試みたが、早苗の興奮は収まらない。

田久保早苗

まさか私以外の女を部屋に連れ込んでたとは思わなかったわ

田久保早苗

悪いけど、あなたとはこれっきりで終わらせてもらうわ

宮本創

え、ちょ、早苗?!

宮本創

おいっ!

田久保早苗

通話終了

通話
01:06

落胆した宮本は帰宅し、恐る恐る部屋の電気を点けると、

確かに女物と思われる長い髪の毛が数本、床に無造作に落ちていた。

恐怖よりも怒りが先に込み上げた宮本は、髪の毛をむしりとるとゴミ箱に捨てた。

宮本創

なんでこんな目に…

宮本創

宮本創

畜生、こんなもん…!

宮本はタンスの上の置時計を掴むと、鏡に目掛けて思い切り放り投げた。

ガッシャーーン!

鏡はクモの巣を描いたように中心から亀裂が入った。

宮本は壁から鏡を外し、思い切り床に叩きつけた。

宮本創

と、同時に響く女の悲鳴。

宮本創

え…?

我に返った宮本が恐る恐る床に散らばった欠片に視線を向けた。

粉々に砕けた欠片には、憎悪に歪んだおぞましい女の顔がいくつも映っていた。

宮本の体が氷のように冷たくなった。

2019.06.09 作

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170

コメント

2

ユーザー

相変わらず面白いですね

ユーザー

怖すぎる…!

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