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俺が4歳の頃、父親は死んだ
家の中で起こったガス漏れが火事の引き金となり、また父親の死因でもあった
俺は、父親が大好きだった
当時、母親と俺は家の中にいた
ガス漏れが広がり、コンロから出た僅かな火花が散った瞬間、家は炎に包まれた
母親はまだ小さかった俺守るために、逃げるのに遅れをとった
外にいた父親は、そんな俺と母親を助けようと家の中に入った
俺と母親を無事間一髪のところで助け出し、あともう一息のところでだった
家は崩壊した
崩れてきた屋根の下敷きになった父親は、そのまま燃え盛る炎に包まれた
もう、父親と笑い合うことはなかった
その日から、俺は常に火という存在に怯え続ける生活を送っていた
中学二年生春
俺は、クラスの会議中に爆睡していたことを利用され、花壇の水やり当番というなんとも面倒くさい係に任命されてしまった
爽
そんなことを言いながらも、今こうやってわざわざ放課後に残ってまで花壇に水をやっている俺はなかなかに偉いと思う
爽
爽
爽
突然頭に衝撃を受け、何が降ってきたのかと上を見上げる
そこには、二階の窓から顔を出す少女がいた
夏音
夏音
夏音
足元に視線を落とすと、一つのとても綺麗な水晶が転がっていた
爽
爽
爽
夏音
二階から手を伸ばす少女に、俺は水晶を渡す
夏音
そうして彼女の姿は見えなくなった
未だにぼーっとしている自分がいる
正直驚いた
世の中に、こんなに可愛い子がいるなんて
顔の横から垂れる長い透き通るような髪の毛
拾った水晶と同じくらい、綺麗な瞳
忘れられなかった
【その夜】
爽
爽
松本
松本
爽
爽
爽
松本
松本
松本
爽
爽
松本
爽
松本
松本
爽
松本
松本
爽
爽
松本
松本
松本
爽
爽
松本
松本
爽
爽
松本
松本
松本
松本
爽
松本
松本
爽
松本
松本
爽
爽
爽
松本
松本
爽
まぁ、そうだろうな
所詮、俺とあの子は今日あの数分だけの仲だし
特に何かを期待しているわけではないけども
...やっぱり、綺麗だった
あの子も、水晶も
【数日後】
校内には、生徒の帰りを促す鐘が鳴り響いていた
爽
すると、遠くから女子の話し声が聞こえてきた
斎藤
斎藤
斎藤
斎藤
遠藤
遠藤
遠藤
爽
これだから女子は怖い
面ではニコニコと笑っていても、裏では何を思っているかなんてわからない
ああやって仲間同士でコソコソと誰かの悪口を言う
本当に怖い
これだから、俺は女子のことがあまり信用できない
俺は早足で学校を出て、門をくぐろうとする
その時、目に入ったのはこの前の少女だった
話しかけてみようか
いや、でもどうせ相手にはされないだろうな
諦めようとした時だった
ふと、目に入ったのは、片足を引きずる彼女の姿だった
爽
気がついたら、彼女を呼び止めていた
放っておけなかった
何か、彼女の顔を暗くする存在に気がついたような気がした
けれど、俺は気がついただけだった
そうして、俺と夏音は出会った
それからというもの、俺と夏音はすぐに仲が良くなった
旅行にも行ったし、一緒に買い物に行ったりもした
毎日登校下校も共にした
一年が過ぎ、俺たちは三年生になった
夏
8月15日快晴
学校からの帰り道の途中でのこと
俺は夏音に、夏音が大切にしている水晶を見せてもらっていた
持ってみるかと聞かれ、俺が「うん」と答えると夏音が手渡してくれた
水晶は意外と軽く、またとても綺麗だった
夏音
夏音
夏音
爽
爽
何気ない挨拶を交わし、俺と夏音は別れる
夏音の家の前の角を曲がり、帰路に戻る
少し歩いた時だった
手に、何気ない重さを感じ、手元に視線を落とす
爽
手には水晶が握られていた
爽
爽
教科書や文房具なら明日返しても良かったのかもしれないが、この水晶は違う
夏音が小さな頃から肌身離さず大切にしてきた水晶だ
これがなかったら彼女は困るかもしれない
俺は、今来た道を戻り始めた
少し歩くと、すぐに先ほど曲がった角まで来た
爽
その時、俺は言葉を失った
窓から見える夏音の家の中は、炎に包まれていた
瞬間俺の思考回路は停止する
爽
頭が混乱し、足がガタガタと震える
爽
爽
今ならまだ間に合うかもしれない
夏音が、助かるかもしれない
爽
足に力を入れて歩き出そうとする
しかし、力は入らなかった
唇が震え、言葉もうまく話せない
俺は、今までに感じたこともないくらいの恐怖に駆られていた
せめて、せめて消防車を呼ばなければ
けれど、不運なことに俺は携帯を家に忘れていた
爽
何もできない悔しさに涙が出て来る
こんなことをしている間にも夏音は...
でも、どうしても駄目だった
あの、父親の命を奪った火事を思い出してしまうから
視界がグラグラと揺れだし、俺の意識は遠のいた
俺は、そのまま気絶してしまった
あぁ、本当に
夏音を助けたかったんだ
刹那