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父さん
俺が4歳の頃に言われた言葉
何故だか、俺はその言葉を生涯忘れることはなかった
自分が、ゴミだと思って生きてきた
生きる価値も理由もなかった
そんな俺に、少女は優しく笑った
夏音
少女の言葉だけが、少女の存在だけが
俺の存在理由だった
暴力暴言の溢れる世界の中で、少女の姿だけがしっかりとした人間に見えた
ある日、絶望の世界の中で、俺は光を見つけた
母さん
母さん
母さん
夏音
夏音
母親は、夏音のことについて多くを語らなかった
後に分かったことだが、父親が援助金目的で引き取った少女らしい
父親は、仕事から帰ってくる日は毎回のように俺と夏音に暴力暴言を撒き散らした
母親は、そんな俺たちに見て見ぬ振りを続けていた
でも、別によかった
夏音がいれば
夏音は、たったひとつの希望であり、俺の存在理由
可愛くて、優しい俺の妹
本当に、本当に愛していた
季節は、春
俺の通う高校では、生徒たちの憂鬱の一つでもある一年生の入学式が開かれていた
ただの傍観者である俺たち二年生は、ただ暇を持て余していた
校長
校長
明人
呼ばれた少年は、高らかに返事をする
新入生代表ということは、高校入試で一番の成績をとった生徒ということだろう
あぁ、つまらない
夏音のいないこの場所は、本当につまらない
やがて、ただ淡々と時間は過ぎ、無事に入学式は終わりを迎えた
門をぬけた時だった
華菜
留衣
留衣
華菜
華菜
華菜
留衣
留衣
留衣
華菜
鞄の取っ手を思いきり掴まれ、後ろによろめく
留衣
半ば呆れ気味に尋ねると、彼女は泣きそうになる
華菜
華菜
ついに彼女は泣き出してしまった
留衣
対応に困っていると、後ろから大きな声がした
楚日
楚日
華菜
楚日
楚日
留衣
正直、何がなるほどなのかは自分でもわからない
というかこの子たちは一体誰なんだ
明人
明人
明人
あぁ、やっと話の通じそうな男子が来た
というか、この子ってさっき新入生代表の挨拶をしてた子じゃないか
留衣
明人
明人
楚日
楚日
楚日
明人
華菜
華菜
華菜
留衣
留衣
留衣
留衣
楚日
明人
そう言うと、華菜と呼ばれる少女はいよいよ大泣きし始めた
留衣
留衣
明人
明人
明人
楚日
楚日
明人
楚日
楚日
明人
そんな会話を聞きながら、俺は早足にその場を離れて行った
俺には他の女子を見ている余裕はない
家に帰れば夏音がいるのだ
それ以上に嬉しいことはない
しかしそれは、ある日突然にぶち壊された
父さん
父さん
父さん
留衣
父さん
父さん
留衣
留衣
父さん
父さん
父さん
父さん
言葉を失った
留衣
父さん
父さん
父さん
父さん
父さん
父さん
留衣
父さん
留衣
フンっと鼻を鳴らして奴は出て行った
信じられなかった
歯がガタガタと鳴り、拳を握りしめる
留衣
留衣
その時、俺の中の何かが壊れた
【一ヶ月後】
俺は、家にあったクマの置物で母さんと父さんの命を奪った
そして間も無く、ガチャリと音がして夏音が帰って来たことを知る
夏音
そして間も無く、夏音の息を飲む音がする
留衣
留衣
夏音
夏音のすがりつくような目
夏音
夏音
そしてそれは一瞬のうちに絶望の色に染まる
夏音、一緒に死のう
誰かに引き剥がされるくらいなら、もう誰の手も届かない世界に行ってやる
夏音、愛してる
永遠に
つづく