坂水サヤカ
はぁ…
坂水サヤカ
なんで5分遅刻しただけでグラウンド15周なんだよ…
北島日向
お前が遅刻したのがいけないんだろ
坂水サヤカ
たったの5分だぞ?
熊倉蒼星
先輩、今日の部活は15時30分からですよ?
坂水サヤカ
え!?
坂水サヤカ
聞いてねえよ!
藤田光
…伝え忘れた…
坂水サヤカ
テメェ…
林優斗
まあまあ怒らないで坂水
林優斗
俺たちも走るから
藤田光
そうそう
北島日向
お前1人走らせるわけにはいかないしな
熊倉蒼星
僕もやります!
坂水サヤカ
あーはいはい
坂水サヤカ
さっさと終わらせるぞ
顧問
坂水
坂水サヤカ
なんですか?
顧問
お前結局何周走ったんだ?
坂水サヤカ
えっと…藤田たちと話してたら30周超えてました
顧問
30周!?
顧問
で、お前は疲れていないということだな
坂水サヤカ
そうですね
顧問
全く
顧問
あれを見ろ
坂水サヤカ
ん?
藤田光
うう…足が痺れる…
林優斗
体が動かない…
北島日向
喉痛い…
熊倉蒼星
頭がクラクラします…
坂水サヤカ
…ありゃりゃ
顧問
あいつらのことも、考えてやらないとな
坂水サヤカ
はーい
顧問
あと、来週の大会、頑張ろうな
坂水サヤカ
はい!
女子軍団
サヤカ様ー!!!
坂水サヤカ
うわぁ…
坂水サヤカ
メンバーがまた増えたな…
藤田光
坂水人気者だなー
林優斗
仕方ないでしょ
北島日向
イケメンだし、背が高いし
熊倉蒼星
かっこいいし!
坂水サヤカ
私男じゃないんだけど?
藤田光
でも男並みにかっこいい
坂水サヤカ
…サンキュ
藤田光
それに比べて俺たちは…
林優斗
影薄いよね…
北島日向
存在感ほぼ無いよなー
熊倉蒼星
僕喋らないと気付いてくれない気がします…
坂水サヤカ
さすがにそれはないだろ…
女子軍団
サヤカ様ー!
女子軍団
今日も頑張ってください!
女子軍団
私たち、全力で応援します!
坂水サヤカ
ありがとな!
坂水サヤカ
サンキュ!
女子軍団
きゃぁぁぁぁぁっ!
藤田光
…泣いていいか
林優斗
お、おい…
北島日向
光?
熊倉蒼星
藤田先輩?
藤田光
(おい、あいつら黙らせてきてもいいか…)
藤田光
(いつまでも坂水に付きまとわないで欲しいんだよ)
藤田光
(俺らがいること忘れられてるだろ…)
林優斗
(光、落ち着いて!)
北島日向
(坂水が怒るからやらないで!)
熊倉蒼星
(我慢ですよ、我慢!)
坂水サヤカ
ん?どうしたんだよ?
顧問
坂水、そろそろ準備したほうがいいぞー
坂水サヤカ
あ、はーい!
女子軍団
きゃぁぁぁぁぁっ!
女子軍団
サヤカ様ダントツ1位!
女子軍団
サヤカ様!タオルとスポーツドリンクです!
女子軍団
よかったらどうぞ!
坂水サヤカ
おお!
坂水サヤカ
ありがとう!
女子軍団
きゃぁぁぁぁぁっ!
藤田光
優斗
林優斗
何?
藤田光
坂水…
藤田光
かっこよかったな…
林優斗
…そうだね
藤田光
俺も、坂水がかっこいいと思う男になれるのか?
林優斗
…なれるよ
林優斗
光ならなれる
藤田光
じゃあ…協力してほしいことがあるんだ
林優斗
うん。いいよ。何?
藤田光
俺…坂水が好きなんだ
藤田光
だから…告白を手伝ってほしいんだ
林優斗
坂水のどこが好きなの?
藤田光
容姿がいいのもあるんだけど…
藤田光
あいつ、言葉遣いは悪いけど、誰にでも優しいんだ
藤田光
俺は…そんな坂水が好きだ
林優斗
そっか
林優斗
わかった
林優斗
協力するよ
藤田光
ありがとう
顧問
俺も手伝ってやるよ
藤田光
先生!?
林優斗
まさか…今の…
顧問
ああ。バッチリ聞いていたぞ
藤田光
そんな…
顧問
おめでとう
藤田光
え?
顧問
そこまで愛そうと思う奴が見つかったんだろ?
顧問
それは…良いことだ
顧問
本当は部内恋愛禁止にしようと思っていたんだが…やめだな(笑)
藤田光
ええ…
林優斗
そんなこと考えてたんですね…
顧問
まあとにかく、坂水に告白したいんだろ?
藤田光
はい…
藤田光
でも…俺を好きになってくれるんでしょうか?
顧問
ああ、そこは問題ない
藤田光
はい!?
顧問
お前は知らないと思うが、坂水は、部活中はほとんどお前を見てるんだぞ
藤田光
冗談はよしてくださいよ…
顧問
本当だよ
林優斗
そういえば…坂水は休憩中ほとんど何処かを見つめてたな…
顧問
それが藤田だ
藤田光
そんな…
坂水サヤカ
先生!1位ですよ!1位!
顧問
ああ!見てたぞ!おめでとう!
藤田光
おめでとう!
林優斗
おめでとう!
北島日向
おめでとう!
熊倉蒼星
おめでとうございます!
坂水サヤカ
サンキュ!
坂水サヤカ
あ、藤田、次じゃなかった?
藤田光
あ、忘れてた!
藤田光
行ってきます!
坂水サヤカ
行ってこい
林優斗
行ってらっしゃい
北島日向
行ってらっしゃい
熊倉蒼星
頑張ってください!
顧問
行ってこい!
男女1600メートル走には、私と北島が出ることになった。
私は、藤田の足の速さに、しばらく目を見開いていた。
藤田光
はぁっ…はぁっ…
藤田光
…坂水!
坂水サヤカ
見直したよ
坂水サヤカ
図体がでかいってだけのやつだと思ってたけど、ちゃんと努力してたんだな
藤田光
(図体がでかいって何だよ)
藤田光
まあな。高校最後の大会も優勝で飾りたかったしな
坂水サヤカ
それは私も一緒だ
坂水サヤカ
だから、一位を取れてとても嬉しい
坂水サヤカ
北島も、優勝したよ
林優斗
優斗は?
坂水サヤカ
林は2位
坂水サヤカ
あんたが林の記録を破ったからね
藤田光
そっか
藤田光
熊倉は?
坂水サヤカ
熊倉も2位
坂水サヤカ
北島の次だよ
藤田光
じゃあ、みんな…
坂水サヤカ
賞状を貰えるってわけだ
藤田光
や、やったぁー!
坂水サヤカ
とりあえず、みんなのところへ行くぞ
坂水サヤカ
肩貸してやるから、急ごう
藤田光
おう!
顧問
藤田、よく頑張った!
顧問
とりあえず今は休め
坂水サヤカ
表彰式までまだ時間はある
坂水サヤカ
賞状受け取ってぶっ倒れるとかやめてくれよ
藤田光
わかってるよ
藤田光
ちゃんと休むさ
坂水サヤカ
ならいい
顧問
お前ら、これが終わったら飯食いに行くぞ!
坂水サヤカ
え
藤田光
俺たち、お金持ってないです!
顧問
そりゃあそうだろ
顧問
俺のおごりだ
顧問
みんなよく頑張った
林優斗
え?
北島日向
ご飯食べられるんですか?
熊倉蒼星
やりましたね!
坂水サヤカ
おう!
顧問
さあ食え!いくらでも注文していいぞ!
藤田光
先生、本当に大丈夫なんですか?
顧問
ああ。一応貯金はしてる方だからな
坂水サヤカ
なら、遠慮なく!
全員
いただきまーす!
坂水サヤカ
めっちゃ食ったな
藤田光
それな!
林優斗
美味しかったー
北島日向
特に卵焼きが…
熊倉蒼星
北島先輩、卵焼き好きですねー
坂水サヤカ
卵にはいろんな栄養が含まれているからね
坂水サヤカ
食って損することはないさ
顧問
じゃあ、明日はゆっくり休め!また月曜に学校でな!
全員
さようならー!
藤田光
なあ
坂水サヤカ
ん?どうした?
藤田光
このあと、みんな空いてる?
林優斗
平気だよ
北島日向
俺もオッケー
熊倉蒼星
大丈夫です!
藤田光
なら、温泉行かないか?
林優斗
いいねー
北島日向
疲れたから入りたい!
熊倉蒼星
温泉に入るお金ならありますので、大丈夫です!
坂水サヤカ
私も行っていいか?
藤田光
もちろん!
坂水サヤカ
じゃあ、行くか
林優斗
光、何でいきなり温泉に行こうって言い出したんだ?
藤田光
ちょっと、坂水がいないところで話がしたくてな
北島日向
坂水抜きで?
熊倉蒼星
何を話すんですか?
林優斗
実は、光は坂水が好きなんだけど…
林優斗
どうやって告白すればいいかわからないんだって
藤田光
あいつ男に興味ないとかだったらどうしよ…
熊倉蒼星
でも先生は坂水先輩が部活中藤田先輩を見てるって言ってましたよね?先生の話が本当なら坂水先輩も藤田先輩が好きなんじゃないですか?
北島日向
だよな。普通なんとも思ってない男をじっと見るなんてことないし
林優斗
そうそう
藤田光
卒業式までには告白したいんだよな…
熊倉蒼星
なら、卒業式に告白したらどうですか?
熊倉蒼星
坂水先輩、もしかしたら付属大学に行かないかもしれないし…
熊倉蒼星
藤田先輩は付属大学に進学するんですか?
藤田光
ああ。そうだ
熊倉蒼星
なら、卒業式がいいと思いますよ!
熊倉蒼星
あくまでも僕の案ですけど…
藤田光
…ありがとう熊倉
藤田光
そうするよ
熊倉蒼星
はい!
熊倉蒼星
坂水先輩、3年間お疲れ様でした!
坂水サヤカ
おう。陸上部新部長、頼んだぞ
熊倉蒼星
はい!精一杯やらせていただきます!
林優斗
熊倉なら安心して任せられるね
北島日向
ああ。心配しないで済む
坂水サヤカ
いい後輩を持ったな。私たちは
藤田光
ああ
林優斗
うん
北島日向
そうだね
卒業式が終わり、俺は真っ先に坂水のいるところへ向かった。
藤田光
坂水、お前が好きだなんて言ったら、お前はどうする?
藤田光
できれば俺は…
顧問
藤田?
藤田光
先生!?静かに!
藤田光
坂水が眠ってるんです。とても気持ちよく眠ってるから、起こしたくなくて…
顧問
そうか
顧問
ところで藤田
藤田光
何ですか?
顧問
お前は、坂水に告白しないのか?
藤田光
それは…
藤田光
やっぱり、やめることにしました
顧問
なぜだ?
藤田光
俺は、坂水が笑ってる顔が好きなんです
藤田光
もし告白したら、今までみたいに話しかけてくれないんじゃないかって、思うんです
藤田光
そんなの、俺には耐えられないです
だんだん朦朧としていた意識もはっきりとしてきて、話している人物が誰なのかわかった。
坂水サヤカ
何が耐えられないって?
藤田光
坂水!?
顧問
起きてたのか?
坂水サヤカ
今やっと目が覚めたところですよ
顧問
今までの話、聞いてたか?
坂水サヤカ
え?なんの話ですか?
顧問
大丈夫そうだな
顧問
藤田
顧問
やるなら、今日しかないぞ
藤田光
…
顧問
他の奴らのことは任せろ。後から来るって言っておいてやるから
藤田光
…分かりました
藤田光
ありがとうございます!
顧問
頑張れよ
坂水サヤカ
なんの話をしてたんだ?
藤田光
ああ、それを話そうと思っていたんだ
藤田光
なあ
坂水サヤカ
何だ?
藤田光
もう、ここに来るのも最後になるかもしれないから、最後に校舎、見て回らないか?
坂水サヤカ
…ああ
坂水サヤカ
いいぜ
坂水サヤカ
お前のお望み通りに
藤田光
じゃあ
藤田光
行くか
私たちは校舎を見て回りながら、横に並んで話していた。
藤田光
なあ、質問してもいいか?
坂水サヤカ
いいぜ、何だ?
藤田光
お前は、この学校の付属大学に進学予定か?
坂水サヤカ
ああ
坂水サヤカ
そうだよ
坂水サヤカ
ここでやりたいことが山ほどあるからね
藤田光
そうか
藤田光
分かった
坂水サヤカ
???
藤田光
最後にさ
藤田光
校庭、行こうぜ
藤田光
俺たちが最初に喋った、あの校庭にさ
坂水サヤカ
おう
坂水サヤカ
そうだな
坂水サヤカ
3年前と変わんねえなあ、ここは
藤田光
変わったのは芝生が生えてるところだけだろ
坂水サヤカ
芝生になってから、隅っこで昼寝するのが日課になったんだよね
藤田光
あとは屋上のベンチな(笑)
坂水サヤカ
あっちの方が日当たりもいいから好きだけどね
藤田光
久しぶりに寝転がるか?
坂水サヤカ
それ今言おうと思ったのに…
藤田光
ごめんごめん
坂水サヤカ
ふぁ…
坂水サヤカ
眠い…
藤田光
少し眠ったらどうだ?
藤田光
30分経ったら、起こしてやるから
坂水サヤカ
うん
坂水サヤカ
じゃあ、そうするか
藤田光
腕枕いるか?
坂水サヤカ
いらない
坂水サヤカ
って言いたいところだけど、あった方が寝やすそうだからお願い
藤田光
!!
藤田光
おう!
坂水サヤカ
じゃあ、おやすみ…
藤田光
ああ
藤田光
(俺も、少し寝るか)
坂水サヤカ
あー!よく寝た!
藤田光
よかった(笑)
坂水サヤカ
腕枕ありがとな!じゃあ起きるか!
藤田光
…
坂水サヤカ
藤田?
起き上がろうとした私の体の上に、藤田が覆いかぶさる。
坂水サヤカ
どうしたんだよ、そろそろ行かないと…
藤田光
坂水…
藤田光
ごめん…
坂水サヤカ
は?
坂水サヤカ
何がだよ?
藤田光
俺…
藤田光
諦められないんだ…
藤田光
お前が…
藤田光
大好きなんだ…
坂水サヤカ
へー
坂水サヤカ
サンキュ!
藤田光
へ?
坂水サヤカ
私も大好きだ!
坂水サヤカ
さあ、行くぞ!
藤田光
ちょ、ちょっと待ってくれ!
坂水サヤカ
ん?何だよ?
藤田光
お前、今のは男友達としての好きか?
坂水サヤカ
え?違うのか?
藤田光
…違うよ
坂水サヤカ
え?
藤田光
俺が言ってるのは…お前を女として好きだってことだ
藤田光
単刀直入に言うよ
藤田光
俺と付き合ってくれ
坂水サヤカ
…その言葉
藤田光
…?
坂水サヤカ
ずっと待ってた
藤田光
…!じゃあ…?
坂水サヤカ
私も好きだ、藤田
坂水サヤカ
ずっと言えなかった
坂水サヤカ
お前、優しいし
坂水サヤカ
背も高いし
坂水サヤカ
かっこいいし
坂水サヤカ
女子によくモテる方だったから
坂水サヤカ
こんな男勝りの私が告白してもいいのかとずっと思ってた
坂水サヤカ
でも、あんたも同じ気持ちなら、問題ないな
坂水サヤカ
もう一回聞くよ
坂水サヤカ
これは…お遊びじゃねえんだな?
藤田光
ああ
藤田光
違うよ
坂水サヤカ
そっか
坂水サヤカ
なら
坂水サヤカ
信じるよ
坂水サヤカ
お前のその言葉を
藤田光
ああ
藤田光
頼むから…
藤田光
信じてくれ
藤田光
そして俺の隣で
藤田光
俺を支えてくれ
坂水サヤカ
…ああ
坂水サヤカ
お望み通りに
坂水サヤカ
光
藤田光
これからもよろしく
藤田光
サヤカ