祐希
ほーたる
蛍
なに?祐希
祐希
あのさ、俺
蛍
うん
祐希
ずっと蛍が好きでした
祐希
僕でよければ、付き合ってください
蛍
え、本気で言ってるの?
祐希
本気だよ
蛍
だって、まだ…
祐希
光希が、忘れられない?
蛍
まだ、半年も経ってないんだよ?
蛍
光希が死んでから……
祐希
まぁ、そうだよな
祐希
彼氏が突然死んだらそりゃ悲しむよな
祐希
俺だって、弟が死んだことなんて受け入れられてねぇよ
祐希
でもさ、俺じゃダメか?あいつと双子なんだぜ?俺
蛍
全然、違うの
蛍
顔も声も、祐希と光希はよく似てる。でも、似てるだけなの
蛍
あなたは光希じゃないの
蛍
ごめん
祐希
いや、謝る必要ないよ
祐希
蛍の言ってることは正しいし、俺は確かに光希じゃない
祐希
でも俺は、それでも蛍が好きなんだ
蛍
ありがとう、でも今は…ごめん
祐希
そっか、いいよ!気にするな!
二日後
光希
蛍
蛍
え?
蛍
光希?
蛍
なんで
光希
わかんない、なんでかな
光希
多分、僕は君に言い残したことがあるんだと思う
光希
僕、事故で死んじゃって、君になにも伝えられてなかったから
光希
神様が兄さんの体を貸してくれたのかもしれないね
蛍
本当に、光希なの?本当に、本当に?
蛍
祐希がいたずらしてるなら、今すぐやめて
光希
うーん、信じられないよね
光希
あ、そうだ
光希
僕たち二人だけの合言葉があったの覚えてる?
光希
君がまだ、僕と兄さんの区別がつかなくて、困ってた時
光希
二人で決めた合言葉
蛍
覚えてるわよ、忘れるわけないわ
蛍
私の質問から入るのよ
蛍
それに光希が答える
光希
うん、じゃあ質問してみて
蛍
5.18、どこに埋めた?
光希
午前二時、裏山の井戸から三本目の木の下
光希
あってるでしょ?
蛍
あってる。あってるわ
蛍
本当に、光希なのね?
光希
そうだよ、やっと信じてくれた
光希
ねぇ、蛍
光希
ごめんね、死んでしまって
光希
君を置いてってしまって、ごめん
蛍
謝らないで、あなたはなにも悪くないの、悪くないから
光希
ありがとう、蛍
光希
僕の最期の彼女が君でよかったって、心の底から思うよ。
光希
愛してる。
光希
ずっとずっと、愛してるよ
蛍
うん、私も!
光希
それでもね、いつかはちゃんと前を向いて、歩かなくちゃいけない
光希
きみは僕を忘れて、前を向かなくちゃいけない
光希
でも、君の中に僕は存在してしまったから、忘れることなんてできないでしょ?
光希
だからね
光希
僕の面影を、追いかけてくれても構わない
光希
兄さんに君を譲るのは、死んでも嫌だけど、でもね
光希
むしろ兄さんになら、君を任せられるんだ
蛍
え…
蛍
それって、まさか
光希
うん、これが僕の最期のお願い
光希
兄さんを、ささえてあげて
光希
君が僕を追いかけるように、兄さんも君を追いかけてるんだ
光希
答えてあげて
蛍
わかった、わかったわ
蛍
時間がかかるかもしれないけど
蛍
まだ、あなたを求め続けてしまうかもしれないけど
蛍
私は、私なりに生きるわ
光希
うん、君は幸せになることができるから
光希
じゃあ、僕はもう行くね
蛍
待って、嫌よ、行かないで!
蛍
ずっとここにいて!
光希
それは無理だよ、僕はもう死んでるんだ
蛍
そ、そうね…
蛍
もうわがままは言わないわ
蛍
あなたを困らせることだけは絶対にしないって決めたから
光希
蛍
光希
裏山の、井戸から三本目の木の下
光希
兄さんと一緒に掘り返して
光希
じゃあね、バイバイ
蛍
わかったわ!
蛍
ありがとう!大好きよ!
一週間後
祐希
この辺か?
蛍
そう!ちょうどこの木の下よ
蛍
掘りましょう
祐希
わかったよ
五分後
祐希
あったよ、缶の箱?
蛍
そう、私と蛍が付き合って間もない時埋めたの
蛍
タイムカプセルのようなもの?かな
祐希
へぇ、開けてみるか?
蛍
うん!
祐希
封筒?手紙??
蛍
そう、お互いがお互いのことを書いて、いつか掘った時読もうねって
蛍
何書いたんだっけなぁ
祐希
あいつと同じ声で、俺が読んでやろうか?
蛍
いいねそれ、お願い
祐希
蛍へ、君のことが好きすぎて、もう僕は死にそうだよ
蛍
なにそれ笑
祐希
君が幸せになれるなら、僕は君のそばにいなくてもいいんだ
蛍
え…
祐希
僕のそばにいることが君の幸せなら、話は別だけどね笑
祐希
まぁ、もし僕が隣にいなくても
祐希
君は生きていけるよ、幸せになることができる
祐希
もし君が、兄さんと結婚することになっても、僕はなにも言わないよ
祐希
君が選んだ幸せのためなら僕は死んでも構わない
蛍
そんな、光希…
祐希
なんてね、本当は君が僕以外の誰かと幸せになるなんて死んでも嫌、嫌だけど
祐希
もし、どうしようもない時は
祐希
僕以外の誰かと、幸せになってね
祐希
幸せにしてくれる人と、幸せになってください
祐希
大好き、愛してる、光希
蛍
光希…
祐希
だって。俺は蛍を幸せにするよ
祐希
絶対に幸せにする、あいつの分まで。
祐希
今はまだ、蛍が光希の面影を探して俺に縋っても構わない
蛍
うん
祐希
いつか、俺に気持ちが向くまでずっと待ってるから
祐希
俺と、付き合ってください
蛍
私は、光希が好き
蛍
多分それは、ずっと変わらない
蛍
でも、光希が私の幸せを望んでるから
蛍
私は幸せにならなくちゃいけない
祐希
うん
祐希
いいよ、君は、君の幸せのために生きればいいんだ
祐希
光希じゃなくて、君自身の幸せを追わなくちゃいけない
祐希
俺が全力で、君を支えるから
蛍
ありがとう、祐希
祐希
幸せになろうな
蛍
うん!!