有馬和真
刀夜一平
オバケってあの化けて出てくる怨めしそうにこの世をさまようあのオバケか?
有馬和真
刀夜一平
そんな非科学的なものの存在を認めるなんて俺の性に合わないよ
刀夜一平
何も残ってはいけないよ
有馬和真
有馬和真
死んだはずの人間がこの世に生きる者に存在を認知されるなんてこと普通は無いよな
有馬和真
刀夜一平
有馬和真
一分後
刀夜一平
有馬和真
有馬和真
胸からはじんわりとだけど止まらない勢いで血が流れ出していたんだ
有馬和真
有馬和真
体を探っても傷一つ無い
有馬和真
有馬和真
今でも目にこびりついているあの光景が嘘だったかのように
俺はこの世に存在していたんだ
有馬和真
俺は今生きているのか死んでいるのか
有馬和真
有馬和真
周りは特に俺の事など気にも止めずいつも通り仕事をしていた
有馬和真
俺は死んだ後でさえ仕事をしている仕事しかない男なんだなって
有馬和真
刀夜一平
最近のオバケの世界も資本主義経済に侵されているということか
有馬和真
有馬和真
有馬和真
有馬和真は死んだとはっきりと認識できるはずなのに周りがそれをやんわりと否定するんだ
有馬和真
刀夜一平
案外お前も大変そうだな
刀夜一平
有馬和真
刀夜一平
刀夜一平
お前は実際は殺されていない
だからこの世にも実在できるし脳裏に焼き付く光景も嘘じゃない
刀夜一平
有馬和真
だからこそお前に連絡しているんだからな
刀夜一平
有馬和真
殺されたのは有馬和真
そして殺したのが刀夜一平お前だからな
二分後
有馬和真
有馬和真
お前は俺を殺したのか?
刀夜一平
お前の言うことが正しいとしても俺はお前を殺してなんかいない
有馬和真
刀夜一平
有馬和真
殺された時のあの光景
包丁が胸を抉るあの感覚
耳をつんざくようなあの悲鳴
どうにも偽物とは思えないんだ
刀夜一平
有馬和真
刀夜一平
有馬和真
じゃないと不安で死にそうになる
刀夜一平
有馬和真
最近のオバケはストレスで死にもするんだ
刀夜一平
お前の話を聞いていると死んだ後の世界の方が大変そうだな
有馬和真
一生のお願いだ
刀夜一平
わかった手伝うよ
刀夜一平
刀夜一平が有馬和真の胸を包丁で刺したということを肯定しつつ
目が覚めたときお前の体には傷は何一つ残っていなくて
しかも有馬和真が周りの人間から認知され特に驚きもされないということを説明しなければいけないのか
有馬和真
刀夜一平
刀夜一平
有馬和真
あれは絶対に本物だ
それは否定はさせない
刀夜一平
小学生の頃から意地っ張りで負けず嫌いで弱さを隠して強がって
でも人一倍努力家でさ
刀夜一平
顔も体つきも似てるからよく兄弟に間違えられて
どっちが兄貴かって争ったよな
有馬和真
あの時は何も考えずただ遊んでるだけで本当に楽しかったよな
有馬和真
でもお前にしか頼めないんだ
刀夜一平
わかってるよ
というかこんな面倒な条件にしてるのはお前のせいだろ?
面倒だって自覚があるのならもうちょっと簡単にしてくれ
有馬和真
刀夜一平
3分後
刀夜一平
刀夜一平
しかしその包丁はトリックナイフだったんだよ
有馬和真
刀夜一平
深夜の森の中にお前を呼んだ俺は驚かせるためにそのトリックナイフでお前の胸を刺した
刀夜一平
刀夜一平
俺はお前を殺してもいない
体に傷一つ付いていないし当然周りも特に反応は無しって訳だ
有馬和真
でも俺の感じた感覚はそんなオモチャで作られたものじゃないんだ
有馬和真
だからお前のその話はどうにも腑に落ちない
有馬和真
その中から最も腑に落ちるものそれが真実だと思うんだ
刀夜一平
お前が納得できるものが真実だということだな
刀夜一平
刀夜一平
けれどお前の記憶している光景は少しズレがあったんだ
刀夜一平
気になったお前は後をつけ二人の様子を見ていた
そして殺人が起こったんだ
刀夜一平
そして次に目が覚めた時にはすっかりと記憶が無くなっていた
刀夜一平
しかも朦朧とした記憶は殺した側を刀夜一平に
殺された側を有馬和真と混同したんだ
有馬和真
刀夜一平
刀夜一平
生物の住む惑星が誕生する確率がものすごく低くても地球という存在が嘘になる訳じゃない
刀夜一平
有馬和真
とはいえ殺人現場の二人の姿を自分とお前にすり替えてしまった理由がもう少しあれば納得できたんだがな
刀夜一平
ではこれも真実ではないということか
じゃあ他に話を考えなくてはな
有馬和真
俺を殺していないって言ってるよな
有馬和真
刀夜一平
有馬和真
有馬和真
例えば中学の同級生だった森川が入って行くのを俺は見かけたんだ
刀夜一平
有馬和真
とにかく二人の後をつけた俺はお前が森川を殺すところを見てしまった
有馬和真
有馬和真
何かおかしな所はあるか?
刀夜一平
有馬和真
これが真実なのか?
刀夜一平
有馬和真
お前が俺はおろか他の奴を殺せるわけがない
有馬和真
だからこの話は真実じゃないんだ
刀夜一平
有馬和真
だから他の話を考え出そう
ちゃんと腑に落ちる真実を見つけよう
刀夜一平
とはいってもやっぱり自分はオバケだって言うのはなしだぞ
有馬和真
刀夜一平
いちゃいけないんだ
有馬和真
といっても何だかそろそろ疲れてきたしこの話はまた今度にしよう
もう寝るわお休み
刀夜一平
有馬和真
刀夜一平
4分後
奏
刀夜一平
奏
刀夜一平
そういうことか
刀夜一平
奏
刀夜一平
言っていただろう?納得できなければ真実とは認められないんだ
奏
有馬和真さん?
刀夜一平
あいつは一番大きなところで認識が混濁している
本当は俺が有馬和真であいつが刀夜一平であるのに
奏
あなたが殺していないということは実は全く矛盾していない
奏
その後が問題だった
奏
奏
奏
刀夜一平
刀夜一平
しかし俺が絶望したのは俺の事などたいして気にもかけていない妻や仕事場の同僚達だ
刀夜一平
顔やステータスで妻を選んだ俺に責任があるということか
いやしかし俺だって他人の機微に気付けていたかというと何とも言えないがな
奏
奏
奏
刀夜一平
だからあいつは俺を殺してそのポジションを奪おうとしたんだな
奏
彼は有馬和真ではなく刀夜一平なのですから
刀夜一平
これは生きている人間が関わるべきで死んだ俺は何もできないからな
奏
あなたはオバケです
種類でいうと怨霊です
奏
刀夜一平
ということは君も怨霊なのかい?
奏
私が殺された理由もここに残っている理由も全くわからないんです
奏
こうやって通信の電波に介入してお聞きしているのです
奏
刀夜一平
俺はオバケの存在を全く信じていないんだ
刀夜一平
俺は生きた生物の住むこの世にとって偽物であるし
そんな偽物の感じた怨みや哀しみなんかも全くの嘘なんだ
刀夜一平
そんなところだ
奏
私にはあまり真似できそうにありませんね
刀夜一平
君はこの世に存在する理由を探し続けるんだね
奏
本当にどうしてこんなにもオバケの世界は厄介なのでしょうか?
刀夜一平
死んだ後の世界の方が大変なんだってね
刀夜一平
君が自分の存在を思い出せることを祈っているよ
奏
奏






