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tom

最近俺の友人達がおかしい。何がおかしいってそりゃあ行動から言動、思想まで全部、みんな狂ってるらしい。

tom

まぁまず聞いてくれ。少し前のことなんだが…

***

matt

やぁっと捕まえた!

tom

ハァハァ……マットお前…何で追いかけてくる……

matt

トムこそなんで逃げんの?

言葉だけじゃ伝わらないかもしれないが、この時のマットはこれ以上ないくらい真顔だった。 目にはいつものハイライトが入っていない。

tom

そりゃそんなおっかないツラしたヤツ相手に逃げないバカは居ないだろ

matt

あれぇ?そんな顔してる?

ごめんごめんと言ったかと思うと、次の瞬間にはいつもの顔したマットに戻っていた。逆に怖い。

matt

怖がらせちゃった?

tom

……。

tom

それよりなんで追っかけてきたのかが気になる。なんか用か?

軽い気持ちで聞いた。 それが悪かったのか。 唐突に手に強い力を感じ、思わず目をしかめる。違和感の方に目をやれば、自分の手がマットに強く握られていた。

tom

は、

matt

トムに聞きたい事があったんだよね〜

顔を見上げると、口元は笑っているが目元は全く笑っていない表情のマットがこちらを見下ろしている。

tom

な、んだよ

マットの圧に少し怯えながら、しかしそれが悟られないように普段通り会話を繋げようとする。

直ぐに逃げていれば良かったのに。

matt

トムさ、俺の事大好きだよね?

tom

……す、は?

突然の意味不明な質問に拍子抜けする。だが本人は至って真面目らしい。

matt

俺の事大好きだよね?って聞いたの

tom

え、あぁまぁ好きだが

軽くそう答える。 実際別に嫌いでは無いし。

matt

エッドやトードより?

tom

い、いきなりなんだよ

さすがにどうしたんだと心配になりそう聞くと、マットの表情が少し不機嫌そうになる。

matt

なんで即答してくれないの。もしかして俺より好きな人がいるの?トムは俺のでしょそうだよね?

tom

ちょマット?!な、なに

マットが早口で意味のわからないことを言いながら俺の方に近づいてくる。 身の危険を感じて後ろに下がっているうちに俺の背中が壁に当たった。 追い詰められ逃げ場のない俺にマットが覆い被さるように腕を広げたと思うと、いきなり抱きしめてきた。

tom

は?!マ、マット!おい!?

matt

嫌だ離さねぇよ俺だけのトムだろ他の誰かになんて渡すかよ…

普段のマットでは想像のつかないような声色と口調に体が強ばる。

matt

なぁトム

tom

ヒッ、な、なに

matt

…このまま俺に喰われちま…

edd

なーにしてんの?2人共?

matt

っクソ…

いきなり扉の開く音がしたと思えば、いつもよく聞く友人のこえがした。 それに酷く安心した俺は大声で友人の名前を呼んだ。

tom

エッド…!

edd

Hi、トム

エッドが返事をするのと同時に、マットの体から力が抜けた。 数秒後、ばっと身体を起こしたマットと目が合う。

matt

あれ?トム??

tom

ぉ、はよう

さっきのマットとは別人のようだった。とりあえずおはようと言ってみたがさっきのこともあり緊張で声が裏返った。

matt

あ、え?うんおはよう?…僕何してたんだっけ……

edd

お前、いきなり寝こけたんだよ。トムの上でね

エッドがそうてきとうに言った。マットは嘘でしょ、と言った表情で俺に謝ってきた。俺の方も軽く返事をするとそのまま自室に帰っていくマット。 それを見かねてエッドが俺の方に近づいてくる。

edd

んで、トムはマットと何してたの?

tom

…別に

あまり教えたくなかった。だがその返事はエッドを煽ったらしかった。

edd

まぁ全部聞いてたけどね

そういうと俺のフードの中から小さな機械を取り出した。

tom

は、

edd

盗聴器。…なんでそんなに怯えた顔してるの?

恐怖でしか無かった。 やっと恐怖から逃げられたと思ったばかりだったのに。

tom

い、いつから

その質問に、エッドは答えることは無かった。 その代わり、目を細め、暗い瞳を向けて笑うエッドを俺は見てしまった。 喉がヒュっと鳴った気がした。

edd

トム

tom

…っ

edd

僕の事は?

tom

は…?

edd

マットのことは好きって言ってたじゃないか。

じっとこちらを見下ろしていたエッドが、屈んで目線を俺に合わせてくる。エッドの顔が少しづつ近づいてくる。

tom

エッド…?

名前を呼んでも返事は無い。 俺は反射的に目を瞑った。 何秒か後に、耳元にふっと息がかかった。どうやらエッドが笑ったらしかった。 何が何だか分からなくて、とりあえず目を開けたのと同時に、耳元で声がした。

edd

期待したの?可愛すぎ。
僕が好きって言ってるようなものだよ?トム

いつもよりワントーン低い声で囁かれたその言葉の内容を察してしまい、顔にボッと熱が集まったのがわかった。

tom

〜〜ッ!!

勢いよく立ち上がり、エッドから距離をとる。赤い顔を隠すためにフードを被り、部屋から出ようとドアの方に体を向ける。 部屋から出る際後ろからエッドの声がしたが、無視をして廊下に飛び出た。

tom

…ふ…っ…

飛び出して少しの間歩き続けたが、立ち止まった瞬間、今までの恐怖と恥ずかしさとで涙が出てきた。いつもなら直ぐに拭う所だが、それもせずにただただボーッと泣いていた。

そのせいで重大なミスを犯したことに気づけなかったらしい。

tord

人の部屋の前で突っ立ってんじ……

tom

ッ?!

苛立った声が聞こえた方に目を向けると目を見開いたまま固まるトードがいた。

tom

(クソ、トードの部屋の前だったのかよ…)

tord

おま…泣いてんのかよ

tom

……ッ

咄嗟に涙を拭おうと腕を動かそうとする。が、トードが俺の腕を掴んだことで出来無かった。

tord

来いよ

tom

……

もう体力が残っていなかった俺はされるがままトードの部屋に入っていた。 もうどうでも良かった。

tom

っおい何…………は、?

tord

……

部屋に入ると、腕を引かれ、何故かトードの膝の上に座らせられた。 意味がわからなすぎて少し涙が引っ込む。

tord

……

tom

…トード?

tord

……

tom

お、おーい…

tord

……オレにこうされんの嫌だろ

tom

は?

その発言を聞いて、ますます分からなくなる。俺が困惑の表情を向けると、トードの重そうな口がまた開いた。

tord

お前が何で泣いてんのか知らねぇけど

tom

……

tord

これより嫌な事なんてねーだろ

tord

……ざまぁみろ、クソトム

そう目を逸らしながら言うトード。 そのトードと一瞬目が合った。 心臓の辺りが痛んだ気がした。

それからどんどん顔に熱が集まるのが分かって、思いっきりトードの首筋に突っ伏した。

tord

はっおいトム?!

tom

…忘れさせてくれるんだろ…?
これくらいじゃなきゃ足んねぇよ、クソトード…

突っ伏しているから、トードの表情は分からない。が多分嫌そうな顔をしてるんだろうなと思った。 張り合うようだが、ざまぁみろと思った。

引き剥がしてくるかなと想像していた が、俺はまた自分の言動に少し後悔することになった。

tord

…お前…煽ってんの…?

tom

…あ?

tord

ハァ…無自覚かよ…

トードの表情を確認しようと顔をあげると、バチ、とトードと目が合った。その顔は少し赤くなっていて、なんとなくこちらもドキドキした。

tord

あのなぁ、よく聞けバカ。

tord

オレはホントに嫌いな奴を抱きしめたりしねぇ

tom

は、ぁ?

tord

なんならオレはお前のこと今すぐ抱きたいくらいイイと思ってる。

tom

だッ?!!

爆弾発言の連発に驚きが隠せず、そう叫ぶ。だってお前は俺の事大嫌いなはずだろ。じゃあ今までの行動はなんだったんだよと聞きたいところだ。

tord

ここはオレの部屋だしオレはお前のことをそう思ってる。そんな時お前に『こんなんじゃ足りねぇ』なんて言われたら、どうしなくなると思う?

tom

と、トード

tord

なぁトム、分かるよな?

tom

や、やめ

恐怖でまた目を瞑った。今度こそ逃げられない、そう覚悟した。 が、それ以上なにも動きはなかった。その代わり、先程より心做しか優しめの声が聞こえてくる。

tord

なんてな、怯えたお前も傑作だったぜ?

そうケラケラ笑うトードに、いつもなら腹が立つところ、今は心から安心してしまう。

tom

(そうか、冗談か)

これまでの発言は俺をからかうための嘘。安心した、はずなのに何故か少し心臓がまた痛んだ。

それはコイツの言う「好き」が偽物だったからか? 何故。俺もコイツが嫌いなはずなのに。

はずなのに

tom

………れたら

tord

あ?

tom

急にこんな事されたら…

tom

す、きに…なっちまうだろ……

あ、しまった。そう思った時には遅く、トードが目を見開いて固まっているのが見えた。

恥ずかしすぎていたたまれなくなり、勢いよく立ち上がると早歩きで部屋を出ようとする。 が、腕を掴まれ、そのせいで後ろの方に体が傾いてしまった。やばい、倒れる、と体が強ばったが、倒れることはなく見事にトードに受け止められてしまった。まるでバックハグされているような体制に、体が熱くなる。 すると突然耳元で熱っぽい声がした。

tord

さっきのは本気だよな

tom

…っだったらなんだよ。嫌だろ、嫌いな奴にこんな事言われて

tom

ざ、ざまぁみろ…

そう否定しない返事を返すとトードの腕に力が入った気がした。

tord

…せっかく逃がしてやろうと思ったのになぁ

普段の何倍も低い声で囁かれたそれに、恐怖すら感じられる。

ーーートードの腕に更に力が入る。ーーー

ーーートードの声が耳元にかかる。ーーー

この速い心臓の鼓動は、果たして本当に恐怖から来るものなのだろうか。

tord

煽ったのはお前だからな?

tom

と、トード

tord

もう逃がしてやんねーよ

どうやら自室に帰れるのは、またしばらく先らしい。

最近俺の友人達がおかしい。

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コメント

3

ユーザー

初コメ失礼します! とってもいい作品でした!是非続きも見てみたいです!

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