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中級兵

クソっ…………!

1人の中級兵が思い切り床を叩きつける

中級兵

逃げられた……下民如きに逃げられた…!

中級兵2

もう街も……ボロボロだ…

中級兵2

何もかも…崩壊してしまったよ…

もう1人の兵は肩を落としながら立ち尽くしていた

中級兵

なぁ……フェデラー様の容態は?

中級兵2

さぁ…………

中級兵2

さっき仲間から聞いた話だと、相当憔悴し切ってたとか

中級兵

じゃあ………フェデラー様を襲った下民とシグレは?

中級兵2

知らねぇよ、テキトーにどっかに運んでったんだろ

兵士2人は床に寝転ぶ

中級兵

あー、俺達これからどうなるんだろうな

中級兵2

今まで通り暮らしてる……とも言い切れないな

中級兵

………………だよな

無言で天井を見上げる

中級兵

俺達さ………こんなんで良いのか?

中級兵

毎日同じ事の繰り返し

中級兵

いい加減下民を殴るのも飽きた

中級兵の男は神妙な顔つきで言葉をポツリポツリと零す

中級兵

と言うかそもそも……俺達ってこんな事したかったのか?

中級兵2

さぁな………

中級兵

本当に………このままで良いのか?

あの出来事から1ヶ月が経った

なんやかんやいつも通り学校が始まり、毎日授業ばかりの日々

まさか、島から脱出した次の日から校庭1000周ダッシュが始まるとは思いもしなかった

だけど、今まで気づきもしなかった事に気がついた

「いつも通り」と言うものは気づかないだけで大切な物だったという事

校庭1000周ダッシュは、信じられない程に楽しかった

 

ルカはあれからスクール内の空き教室内で暮らしていた

毎日新しい物に触れ、新しい知識を得ている

閉鎖的な環境から解放された反動か、勉強を苦ともせず楽しんでいた

だが、彼は時折寂しげな表情を見せる

そして物思いに耽っている

 

島の騒ぎに関しては、後にニュースで大々的に取り上げられた

「突然失踪した行方不明者達が帰って来た」

なんて事が起きたらそありゃあ大騒ぎだよな

それと同時に問題視されたのは

島についての事

行方不明者が救出された後、政府は島についての調査を開始した

そこで人々が目の当たりにしたのは古びた街並み、爆破された巨大建造物

そして下民と呼ばれ差別された人々

そして政府は島の有権者と交渉の上、支援を開始する事にした………らしい

今は差別された人々の保護などが重点的に行われているらしい

中級兵共の組織がどうなったかは未だに分かっていない

でもきっと、問題視されればすぐさま解体だろうな

島は今、確実に再建への動きが始まっている

あの島は、変わろうとしている

 

あれからシグレやアマラ、そしてフェデラーがどうなったかという話は一切聞いていない

時折アマラの通信機をコツコツと叩いたりするが、何の返答も無い

受話器からふざけた声が聞こえるなんて事もなかった

彼らの顔を思い浮かべながら、今日もぼんやりと寝転んでいた

ミスターレッド

ふぁ…………

ミスターレッド

ねみぃ〜…………

草地に寝転びながら呑気にあくびをする

ミスターレッド

エンダードラゴンの卵の回収の仕方?

ミスターレッド

海底神殿の効率的な水抜き方法?

ミスターレッド

んなもんどこで使うんだよ

ミスターレッド

相変わらず授業は退屈だぜ

ミスターレッド

…………でも

ミスターレッド

いつも通りの日常………ってのも悪く無いもんだよな

ミスターブルー

あ!!!兄貴!!!

ミスターブルー

此処に居たのかよ………

ミスターブルー

勝手に授業抜け出すなんてダメだろ

ブルーは呆れた表情を浮かべながらレッドの元へ歩み寄る

ミスターブルー

すまない先生カンカンに怒ってたぜ?

ミスターブルー

レッドはどこだ〜とか言って

ミスターレッド

そう言う弟こそ、今授業時間中だぜ?

ミスターレッド

お前もサボりか?

ミスターブルー

まぁ、そんなとこだな

ブルーもレッドの横に仰向けで寝転ぶ

ミスターブルー

なぁ、兄貴

ミスターレッド

何だ?

ミスターブルー

俺さ………思ったんだ…

ミスターブルー

今までは……喧嘩したって何だって…

ミスターブルー

何があっても…すぐ側に兄貴が居た

ミスターブルー

ずっとずっと、それが当たり前だと思ってた

ミスターブルー

だから………兄貴が居なくなった時俺…

ミスターブルー

信じられないくらい……怖かったんだ…

ブルーは唇を噛み締める

ミスターブルー

もう会えないんじゃないか……とか…

ミスターブルー

そんな不安が頭の中でずっと渦巻いてた

ミスターブルー

でも今こうして……また兄貴と話したりする事ができた

ミスターブルー

また………兄貴と一緒に居る事ができた

ブルーは僅かに微笑む

ミスターブルー

兄貴と一緒に居られる事が……こんなに大切な事だって気づけた

ミスターブルー

だから………

ミスターブルー

これ以上……勝手に何処かに消えたりしないでくれよ…?

ミスターブルー

まぁ、もしも勝手に何処かに消えたとしても俺が引き戻すけどな!!!

ミスターレッド

バーカ

ミスターレッド

んな事する訳ねーだろ

ミスターブルー

な!?今バカって言ったか!?

ブルーがガバっと身を起こし、戦闘体制を取るようなポーズをする

ミスターレッド

俺だって……島に連れ去られて…

ミスターレッド

お前に会えない苦しみを知った

ミスターレッド

だから、お前の不安だって痛い程分かる

ミスターレッド

だから………

ミスターレッド

これ以上お前を不安にさせたりなんて、絶対しないぜ

ミスターブルー

へっ、アホ兄貴もたまにはカッコいいところ見せるじゃねぇか!

ミスターレッド

なっ!?

レッドも物凄い勢いで身を起こす

ミスターレッド

今アホっつったか?弟

ミスターブルー

…………くく

ミスターブルー

ははっ!!兄貴ったら、俺と全く同じ様な反応するじゃねぇか!!!

ミスターレッド

まぁな

ミスターレッド

俺達は………切っても切り離せない様な

ミスターレッド

兄弟だからな

すまない先生

うぅ………これが兄弟の絆かぁ…

背後には音もなくすまない先生が立っていた

ミスターレッド

すまない先生!?

すまない先生

あー、お取り込み中すまないけど………

すまない先生

君達、授業サボってる癖に何でこんな場所に居るのかな?

ミスターレッド

………………

レッドは無言で走り出した

ミスターブルー

な!?

ミスターブルー

あ……兄貴!!!

ミスターブルー

俺の事置いてかないみたいなニュアンスの言葉さっき言っただろ!!!

その後無事にすまない先生に捕まり、2人揃って説教された

数時間後

ミスターブルー

あ、そういえば兄貴

ミスターブルー

そういえば兄貴、ルカのやつが話したい事がある〜みたいな事言ってたぜ

すまない先生にボコボコにされ、顔面を腫らしたブルーが背後から話かけてくる

ミスターレッド

ルカが?

ミスターブルー

ああ、学校の近くで待ってるから来てくれ〜って

ミスターブルー

要件に関しては…特に何も言ってなかったぜ

ミスターレッド

分かったぜ

ミスターレッド

教えてくれてありがとな

ミスターブルー

なんだよ、兄貴にしては妙に素直だな……

ミスターブルー

いつもだったら「めんどくせぇ〜、後で行っとくぜ」とでも言いそうだけどな……

ミスターブルー

とにかく、行って来いよな!!

ミスターブルー

また後でな!!兄貴!!

ミスターレッド

おう!!また後でな

ブルーは手を軽く振りながら一足早くレッドの前を行く

ミスターレッド

ルカの奴………やっぱり何か悩んでんのか?

ミスターレッド

島から出てからもたまに……暗い顔してるもんな

ミスターレッド

まぁ………

ミスターレッド

あんな事が……あったもんな…

レッドは軽く走り始める

ミスターレッド

ルカからしたら…まだ慣れない事ばっかりだよな

レッドは若干地面を踏む速度を速くさせる

レッドは学校へと走り出した

ミスターレッド

学校に着くとすぐに、校門の前に佇むルカの姿が目に入った

ルカ

あ!レッド!!

レッドがやって来た事にすぐにルカが気づく

ルカは手をブンブンとレッドに向けて振っている

ミスターレッド

すぐに会えてよかったぜ

ルカ

こちらこそ

ルカ

急に呼び出しちまって、ごめん

ミスターレッド

全然大丈夫だぜ

ミスターレッド

むしろ昼まで暇だったくらいだ

ミスターレッド

んで、要件は何だ?

ルカ

あの……さ…

ルカ

ちょっと話がしたくって

ルカ

ちょっと場所を変えてもいい?

ミスターレッド

別に構わないぜ

ルカは少し神妙な面持ちをしていた

レッドはルカの後に続き、歩き始める

屋上

2人は屋上の柵に寄りかかる形で話し始める

ルカ

ごめん、こんな場所まで来ちゃって

ルカ

あ、特に深い意味はないんだけどね

ミスターレッド

まあ、クソ暑い場所で話すよりかは…

ミスターレッド

気持ちいい屋上で話せた方がいいよな

ルカ

だよね、やっぱり屋上は風を感じられて良いね

2人は暫し黙り込む

心地よい風に吹かれる

油断すれば眠ってしまいそうな程に心地が良かった

ルカ

じゃあ……本題…

ルカ

話すね…

ルカが口を開く

ルカ

あのさ……

ルカ

俺………島に戻ろうと思うんだ

ミスターレッド

え………?

衝撃的な一言に思わず口をぽかんと開けてしまう

ルカ

その…………

ルカ

何だか………申し訳ないんだ

ルカ

テレビ……?とかで流れてるだろ?

ルカ

街の人達は……島を再建する為に毎日頑張ってる

ルカ

それなのに俺は……島から出て…

ルカ

その……何というか…

ルカ

暮らしてる…

ルカは言葉が出てこなかったのか迷いながら一言言葉を呟いた

ルカ

何だかそれが……逃げの様に思っちゃうんだ

ルカ

これじゃあ結局……シグレと喧嘩したあの時と…

ルカ

ソウヤを守れなかったあの時と…

ルカ

自分は……今まで沢山助けてもらって来たのに…

ルカ

それ相応の恩返しなんてこれっぽっちも出来てない気がするんだ…

ルカは数秒の間黙り込む

ルカ

ご………ごめん!!!

ルカ

せっかく苦労して脱出したのに!!とか思うよな!!

ルカ

あ……いや!!!

ルカ

ごめん!!!やっぱりいいや!!!

再び沈黙が襲う

レッドがボソリと呟く

ミスターレッド

別に………悪いとは思わないぜ

ルカ

え………?

ミスターレッド

お前、島が恋しくてしょうがないんだろ?

ルカ

な……

ミスターレッド

なんかいつも暗い顔してるしよ

ミスターレッド

お前が島に戻りたいなら引き戻したりはしねぇ

ミスターレッド

むしろここで引き下がればまた…

ミスターレッド

自分の感情から逃げた事になっちまうんじゃねぇか?

ルカ

……っ

ミスターレッド

それに、1ヶ月前のあの約束がずっと…

ミスターレッド

気になって気になってしょうがないんだろ?

ミスターレッド

したんだろ、シグレと約束を

ミスターレッド

もしかしたらお前は………

ミスターレッド

島に行ったらシグレがあの後どうなったか知る事になるかもしれない

ミスターレッド

もし仮にそうだったとしても……

ミスターレッド

今のお前ならきっと大丈夫だ

ミスターレッド

もう過去を引き摺ったりなんてしない

ミスターレッド

だから何も心配しなくてもいい

ミスターレッド

迷わなくていい

ミスターレッド

島に行きたいって思うなら、そうすりゃあいいぜ

ミスターレッド

別に俺は「今までの苦労は何だったよ!!!」なんて怒ったりしないぜ

ルカ

レッド………

ルカは小さくレッドの名を呟いた

ルカ

何だかレッドにそう言ってもらえたら、勇気が出た

ルカ

ありがとな!!!!

ルカ

なんか俺……いっつもレッドに背中を押されてばっかりな気がする

ルカ

レッドには……感謝してもし切れないな!!!

ミスターレッド

じゃあ、早速船の手配でもしないとな

ミスターレッド

…俺も準備しねぇとな

ルカ

え?

ルカ

レッドも来てくれるの…?

ミスターレッド

まあな、あれから島がどうなったか少し興味があるからな

ミスターレッド

今回乗る船は政府の「公式なやつ」だ

ミスターレッド

何も心配しなくてもいいぜ

ミスターレッド

島には警護の人間も沢山居るみてぇだ

ミスターレッド

前みたいに、捕まって閉じ込められるなんて事はないと思うぜ

ミスターレッド

まあ、念の為先生達に伝えてから行くけどな

ルカ

じゃ……じゃあ早速行くって事で…?

ミスターレッド

ああ、良いぜ

ミスターレッド

すぐ近くに船乗り場があった筈だ、明日そこから行こうぜ

ルカ

明日か!!!了解!!!

ルカはビシッと敬礼ポーズの様なものをしながら笑みを浮かべた

翌日

レッドとルカは政府から用意された船へと乗り込み、早速島へと向かった

島には約3時間程で到着するらしい

海の波にゆっくりと揺られながら海を渡る

空から降り注ぐ光が海に反射して光り輝いている

そんな景色を見ながら島へと向かった

ミスターレッド

ようやく到着だぜ〜

レッドは体を思い切り伸ばしながら深呼吸をする

ミスターレッド

やっぱり、自然豊かな島の空気は美味しいな

ミスターレッド

まあ……1ヶ月前はそんな事してる暇もなかったけどな

ルカ

だね〜

ルカ

何だかもう……ずっと昔の様にも感じるな

検問員

乗船お疲れ様でした

検問員

島での行動等は全て自己責任となるのでお気をつけください

検問員

もしも困った事があれば島にいる監視官にお申し付けください

検問員が船から降りた人々に丁寧に説明する

ミスターレッド

さ、ルカ

ミスターレッド

まずは何処から行くか?

ルカ

あ……じゃあ

ルカ

街から……行こうかな

ミスターレッド

分かったぜ

ミスターレッド

街か…………

脳裏に様々な労働の記憶が蘇る

思い出すのさえも憚られる様な記憶だ

でもきっと今は…………

2人は地面に落ちた葉を踏み歩く

街への道を辿った

ミスターレッド

っ……………!

ミスターレッド

此処が………

ミスターレッド

此処があの街……なのか?

レッドは目を見開き、そのまま硬直する

ルカ

お……俺も…

ルカ

ビックリしたよ…

目の前に広がっていた景色は、1ヶ月前に見た景色とは全く違う様に感じられた

ピリついていて、焦燥感漂う様な雰囲気は全く感じられない

行き交う人々の表情は生気を取り戻している様に感じられた

人々はそれぞれ街の復興へと勤しんでいる

レッドは周囲をキョロキョロと見回してみる

中級兵らしき人間は目に映らなかった

ミスターレッド

中級兵も………見当たらないな…

ルカ

まさかここまで変わるなんて……

2人はただ呆然と立っていた

そんな2人の姿に気がついた1人の老人が此方へ近づいて来る

老人

お二人さんは外からいらした方々かね?

ミスターレッド

あ………ども

ミスターレッド

まぁ……そんなとこっすね

老人

そうかそうか

老人

ならば、この街の前までの惨状は知らん事だろう…

ここで知っていると言えば話が長くなりそうなので、レッドは黙っている事にした

老人

この街は前までは……酷い有り様だったよ…

老人

暴力や殺人は当たり前……

老人

理不尽な事は数え切れない程にあった…

老人

息絶えた命も………沢山見て来たよ

老人

でも……この島は1ヶ月前…

老人

とある出来事によって一変したんだ

老人

島の管理システムが突然に停止してね…

老人

それと同時に………救世主が現れたんじゃ…

老人

ワシらを苦しめた中級兵をとっちめるヒーローがね……

老人

それと同時にこの島から外へと脱出した者達がいたらしくなぁ……

老人

それを知った国のリーダーはもう大激怒

ミスターレッド

(フェデラー……か…)

老人

まあ……その後そのリーダーってのは…

老人

島を完璧に出来なかっただとか何だとか言って…

老人

精神を病んだらしくてな……

老人

それから行方不明じゃ……

老人

ちなみにじゃが……

老人

今は1人のとある青年が島を統治してるらしいぞ?

老人

すごいよなぁ………若手がねぇ…

ミスターレッド

(…………過去から)

ミスターレッド

(過去から……脱する事が出来なかった者の末路…か)

老人

それからというもの……この島は目まぐるしく変わったよ

老人

リーダーを失って混乱状態だった中級兵共は完全に崩壊

老人

いつの間にか中級兵を名乗る者なんて居なくなったよ

老人

まあそもそも……中級兵になりたくてなった奴なんて居ないと思うがな

老人と会話している間も、人々は忙しなく行き交って行く

老人

それからどっかの国の政府が介入し始めて……

老人

支援だの何だの始めてな

老人

もうそりゃあビックリ

老人

ワシら下民の暮らしは一変よぉ

老人

みんな元気になって笑顔が溢れる様になったよ

老人

信じられんよなぁ…

老人

まぁ、そんな所じゃな

老人

ゆっくり島を楽しんでおくれよ

老人はヒラヒラと手を振りながら去って行った

改めて行き交う人々の顔を見てみる

皆、活気に溢れた表情をしていた

ルカ

みんな………島の為に頑張ってるんだな

ルカ

仲間と一緒に…協力し合って

家の修復作業をする男

その男に道具を次々と渡す少年

食糧の入った箱を運ぶ女性

その女性の箱を数個持ち、手伝う男性

人々は前を向き続けている

いつかの未来の為に

ルカ

あ、そう言えばレッド

ルカ

アマラって今……どうしてるのかな

ミスターレッド

アマラ?

ミスターレッド

あー、家でも行ってみるか?

ミスターレッド

正直言うと、またあのダル絡みをされるのは面倒だけどな

ルカ

でもまあ……顔見せだけでもさ

アマラの家がある森へ、足を運び込む

ミスターレッド

何だか此処も久しぶりだな

ミスターレッド

中級兵のアジトに乗り込んでからは、此処に来る事もなかったからな

ルカ

だね

ルカ

やっぱりこの森、落ち着くな

小鳥の囀りが辺りに響く

森の池の水面には葉や、木から落ちた色とりどりに花が浮かんでいた

池の先に、一つの小屋の屋根が顔を覗かせている

ミスターレッド

あ、もうすぐみてぇだな

ルカ

アマラ、元気にしてるかな

ミスターレッド

元気だと思うぜ

ミスターレッド

あいつの事だからきっと、何処かの誰かにダル絡みしてるぜ

ルカ

……めっちゃ迷惑だなそれ

小屋の茶色い扉が目前まで迫っていた

コンコンコンコン

ミスターレッド

アマラ〜?

ミスターレッド

居るか〜?

ドアをノックし、小屋の中へと語りかけてみる

ルカ

お〜い!!来たぞ〜!!

返事は無い

ミスターレッド

…………

ミスターレッド

やっぱり……

ミスターレッド

やっぱりアイツも……

あの時、アマラの居た場所には沢山の中級兵がなだれ込んできた

心の中が騒めく

もしかしたら………アマラも…

ルカ

あれ………?

ルカ

レッド、ドアに何かプレートが掛けられてるぜ?

ミスターレッド

プレート……?

ルカ

なんか……書いてあるな…

〜ご来客のお客様へ〜 ごっめんね〜?今ワタクシアマラ、不在でございます〜!!!! 街での復興作業、子ども達への学校の授業で忙しくテ(^^; ご用事ならまた後日 んじゃ、さよならバイバイまた今度

プレートの隅には謎の生命体が描かれている

よく見たらアマラの様な姿をしている!様に見えた

ミスターレッド

あいつ、元気そうだな

プレートを見た瞬間、心の緊張は解け安堵した

ミスターレッド

文面を見るに、少し忙しそうだな

ミスターレッド

まあ、また今度会いに来るか

ルカ

そうだな

ルカ

ダル絡みで一日が終わっても困るしな…

ルカは少し苦笑した

でもどこか安堵した様な表情を見せていた

ミスターレッド

さて、次は何処に行くか?

ルカ

そう………だな

ルカ

ソウヤに会いに行かない?

ルカ

この森から…きっとソウヤの居る場所は近いはず

ミスターレッド

………そうだな

ミスターレッド

久しぶりに会って、色々話してやらないとな

レッドとルカはアマラの小屋を後にした

そして再び、森の奥へと歩き始めた

ソウヤの住んでいた小屋の近く

ソウヤを眠らせたあの場所に辿り着いた

ミスターレッド

ソウヤ

きっと地面の下で眠っている彼に語り掛ける

ミスターレッド

戦いは、終わったよ

ルカ

あの時は………

ルカ

あの時は……守れなくってごめん…

ルカ

でも……これからはソウヤの分まで生きるから

ミスターレッド

ソウヤ………

ミスターレッド

街の奴ら、すげぇんだぜ?

ミスターレッド

1ヶ月前まで……生きるのに必死で…

ミスターレッド

あんなにピリピリしてたのによ

ミスターレッド

今は活気を取り戻して、みんな必死で生きてる

ミスターレッド

街もだんだんと再建されていって

ミスターレッド

信じられない程に変わり始めてるんだぜ?

ミスターレッド

見てるか?

レッドは空を見上げる

ミスターレッド

今頃空でのんびりしてるかもしれない…けどよ

ミスターレッド

もしも……またこの地に降りて来る事があったら…

ミスターレッド

また………この島を覗きに来てくれよな

ミスターレッド

ついでに……俺にも会いに来てくれよ?

レッドとルカは目を瞑り、手を合わせた

ミスターレッド

一通り歩いたな〜

ミスターレッド

1ヶ月前のあの時を振り返れば……あんまり良い事はなかったけどよ

ミスターレッド

沢山……いろんな事があったんだと身に沁みて感じたよ

木々の木漏れ日を浴びながら歩く

ミスターレッド

なぁ、ルカ

ミスターレッド

最後に………

ミスターレッド

あの場所に………行ってみるか?

ルカ

あ………

ルカ

大丈夫……?付き合わせちゃっても…

ミスターレッド

勿論だぜ

ミスターレッド

逆にここで断る様な奴が居たら、すぐにゼッコーだぜ

ルカ

………!

ルカ

ありがとう………!

ルカ

本当にずっと……ありがとう…!

ミスターレッド

今はともかくあの場所に行こうぜ

ミスターレッド

俺への感謝はまた今度だ

ミスターレッド

じゃあ、行こう

花畑

そこには沢山の花弁が風に乗せられて舞っている

花を踏まぬ様、慎重に進む

ミスターレッド

此処がその……花畑…か

ミスターレッド

…綺麗だな

ルカ

だろ?

ルカ

一回レッドにも見せたかったんだ、ここ

地面に咲く花のほのかな甘い香りが風に吹かれて漂っている

ルカは一輪の花を丁寧に摘み上げる

ルカ

懐かしいなぁ……

ルカ

この花で……たっくさん遊んだなぁ…

ルカ

この白い花で花冠なんて作ったり…

ルカ

あ……この青い花は蜜が美味しいんだよな!

ルカは花に触れながら思い出を語る

ルカ

やっぱり……この花畑には沢山の思い出が詰まってるな

ルカは風に吹かれながら目を瞑る

ルカ

すぐに思い出せるなぁ……あの日々の事は

ルカ

今でも目を瞑れば……すぐに思い浮かんでくるよ

ルカは黙って花畑を見渡している

ルカ

でも……

ルカ

そんな思い出とも……そろそろお別れかな

ルカは手に持っていた花を風に任せ、優しく落とす

ルカ

これからは……前を向かないとな

ルカ

前を……未来を見つめないと

ルカは空を見上げる

ルカ

ねぇ、レッド

ルカ

やっぱり俺、この島に残るよ

ルカ

島のあの惨状を見て来た俺だからこそ……

ルカ

きっとできる事だってある

ミスターレッド

止めたりなんてしないぜ

ミスターレッド

でも、困った時はまた声掛けてくれよな

ルカ

ありがとな、レッド

ルカは少し微笑む

その後すぐに、ルカは少し寂しそうな笑顔を浮かべる

ルカ

やっぱり……都合よく来たりしない…よね

ルカ

いやいや!!!もう考えるのはやめ!!!!

ルカはガバッと顔を上げる

ルカ

もう弱音は吐かない!!!うん!!!

ルカ

これも全部……レッドのお陰だよ

ルカ

前を向ける様になったのも……!

ルカ

ありがとう、レッド

ルカは満面の笑みを浮かべた

ミスターレッド

じゃあ、そろそろお別れの時間だな

ミスターレッド

じゃあ、またいつか

ルカ

ああ、またいつk…

ビュゴオオオオオオ……………

ルカ

っ……………!

突然強風が吹く

花びらが物凄い勢いで舞っていく

その中に混じる様に一つの帽子が飛ばされていく

ルカ

あっ!?帽子……!

ルカが吹かれて行った帽子を凝視する

ルカ

………………!?

ルカは帽子が飛ばされ来た方向へ目を向ける

ルカが目を見開いた

ルカは帽子が吹かれて来た方向へと走り出す

ミスターレッド

ルカ?

レッドはルカの走って行った方向へ目を向ける

ミスターレッド

あ……………

レッドは優しく微笑んだ

ミスターレッド

さーて

レッドは体を伸ばす

ミスターレッド

そろそろ帰らねぇとな

ミスターレッド

弟にまた心配されちまうからな

レッドはルカの走り去って行った方向へ目を向ける

人々はは再び未来へと動き出す

一度は囚われた過去を抜け出し、再び未来へと歩み出す

彼らはもう、過去を振り返らない

彼らは未来だけを見据え続ける

ミスターレッド

……じゃあな

レッドは一言そう呟いて、ルカとは逆方向へと歩き出した

Escape from the past

この作品はいかがでしたか?

560

コメント

5

ユーザー

うっわ……泣ける… 表現の仕方が神すぎませんか???無事にレッド君もルカもハッピーエンドで終わって良かったです!!!アマラは最後まであの調子で逆に安心してきました(?)実家のような安心感が1番似合うでしょうね。 本当にこんな神作品を生み出してくれてありがとうございます!!!♡ 一生この物語を愛でる覚悟はできてます!!!!

ユーザー

最後の最後まで感動させてくれる… 「当たり前」って普段過ごしていたらそんなに大したことないのかもしれないけど、もし自分や友達、家族、環境に何らかの変化があったらその「当たり前」って当たり前じゃなくなるんだよな…当たり前って最高だよね! 島の環境が見違えるほど綺麗になってて良かった!本当に良かった! アマラのあの文を見る限り本当に元気そうw なんかルカとレッド、この事件の後からなんか成長した?気のせいかも知れないけどなんか考え方とか話す内容?とかちょっと大人に近づいた感じがする!

ユーザー

うわぁっ!良かった……!良かったよっ……! 終わるのはすごく……すごく辛いけど……いい話だったねっ……!おめでとう御座いますっ……! フェデラーは……まぁ、ザマァと言っておきましょうかw過去に囚われたままになっちゃったんだね…… ルカは戻る事にしたのか……ルカの学校生活的なのも見てみたかったけどwまぁそれも一つの生き方だろうし、この話の題名の意味でもある【過去からの脱出】を果たしたからこその選択肢かもしれないしね! なんて事ない日常こそがとても尊いモノ……忘れそうになるけどほんとそうだよね……うん……大事にしないとって考えさせられたよ! アマラは最後までアマラだったね……www レッド君はもう過去に囚われず生きて行くんだね……!頑張れ! そういえば最後の帽子……なんかの伏線回収か何かなのかな……? にしても島の新たな統治者の“青年”……うーん半分願望混じってるけど……シグレであって欲しいなぁ……シグレ生きてて欲しいし、エリート兵の中でもめちゃくちゃ偉かったっぽかったし 本当に素晴らしい作品をありがとうございました……!ステラ様……! (長文失礼)

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