ヤンデレの様な、共依存の様な。
青→桃の表現もあれば、 桃→青の表現もあり。
監禁注意です、 なんでも許せる方向け。
青side
__バタン、ガチャ。
自身の雀の涙ほど小さな呼吸音でさえ 第三者に聞こえてしまいそうなほどに 暗く、静かな世界。
玄関の扉と鍵を閉めて靴を乱暴に 脱いだ俺は、 足元が見えない廊下に ゆっくりと歩を進めた。
俺の左側にあるリビングの扉を抜け、 さらに廊下を奥深くまで進んでいくと 人の気配が微かに感じられる 扉の前へと辿り着く。
__コン、コン、コン。
自身の家であるにも関わらず 3回扉をノックした俺は、 微かに聞こえてきた扉の先が立てる 物音にホッと息を撫で下ろして 次の反応を待つ。
いふ
数分待っても何も変化しない状況に、 安堵から一変して不安を感じる。
扉を蹴り壊したい衝動を抑えつつ、 なんとか絞り出した声に対して 数秒待つと、 静かに扉の鍵が開いた音がした。
いふ
ドアノブをゆっくりと捻って 扉を開ける。
どれだけ進んでも取り巻き続ける 暗闇から変わり、 ほのかに感じる電灯の明るさに 俺は思わず瞳を細めた。
明るさに慣れない目を擦った俺の耳に 「おかえり」と掠れた小さな声が 入り込んでくる。
ないこ
ないこ
いふ
静かに瞼を開いた俺の視線の先には、 ダブルベッドの上に人魚座りで こちらを見る、 ピンク色の髪の男。
羽織っていた背広を強引に脱いで、 鞄と一緒に床に放り投げた 俺を見ながら、 興味深そうに口角を上げた表情で 彼は口に開く。
ないこ
いふ
ないこ
「まぁ、いっか」と呟いて上に体を 伸ばした彼は、 ベッドの柱に括り付けられた手錠を ジャラと動かして、 体育座りの体制になった。
ないこ
床から拾い上げた背広をハンガーに 掛ける俺を横から眺めながら、 彼は睨む様な、値踏みする様な瞳で 俺を一瞥する。
いふ
瞬間、ゾクリと感じる悪寒に 俺は一瞬身を震わせた。
そんな俺の反応を見て面白く 感じたのか、 悪戯っ子の様に口元をにやけさせた 彼は俺のシャツの裾を引っ張って 自身の方へと引き寄せる。
互いの息がかかってしまいそうな 場所まで、 顔と顔が近づいた。
引き寄せた俺の胸ぐらを掴んで 見上げる彼は、 冷め切った瞳をスッと細めて、 口を開く。
ないこ
いふ
「嗅いでいたくない」と胸ぐらを 離した彼は、 ドンッと俺の胸を押し返す。
よろめいた俺を気にする様子も無く、 彼は伸びた髪をくるくると女の様に 人差し指で巻き取りながら、 言葉をつらつらと紡ぎ続けた。
ないこ
ないこ
いふ
無言を肯定と判断したのか、 ため息を大きく吐いた彼はズボンを 履いていない足をベッドの上に委ねて 今度は前へ身体を伸ばした。
パーカーの下からチラリと見える 傷跡や、白い肌についた埃や汚れが 痛々しい。
ないこ
「俺をこんな状態にまで 追い込んだんだもんね?」
と人差し指を唇の前に立てた彼に、 思わず喉からヒュッと音が鳴る。
ないこ
ないこ
パーカー越しに自分の心臓の位置を トントンと親指で押した彼は、 驚いて眼を開く俺を細めながら 見つめる。
ないこ
いふ
半歩後ろへ下がった俺に、 満足そうな顔で微笑んだ彼は 近くにあったタオルをベッドの上から拾って、俺の方へ投げる。
ないこ
ないこ
ないこ
__俺に消えて欲しい?
いふ
いふ
今すぐに、と踵を返した俺に対して、 彼は呑気に「いってら〜」と手を振る
急いで扉を閉めた俺は、走って 風呂場へと駆け込み 震える体を肩で呼吸して抑えながら、 そっとその場に体を屈ませる。
いふ
__これは、望んでいた結果だった。
彼に俺だけを見て欲しかったから、 彼に俺だけを感じて欲しかったから...
だから彼を閉じ込めた。
いふ
震える足が止まらない。
ギュッと彼から渡されたタオルを 抱きしめると、ほのかに香る柔軟剤の匂いと埃っぽい匂いが 同時に俺の鼻を刺激する。
いふ
脳内に今日会社で言い寄ってきた 女の顔と、冷め切った瞳で 俺を見つめるないこの顔が共に 投影される。
なぜ、なぜ俺はこんなにも体が 強張っているのだろう。
仕事の疲労?満員電車の結果?
...違う、そんなんじゃない。
心の奥から込み上げてくる様な、 もっとドス黒くて、 儚く脆く壊れてしまいそうな...
いふ
そうだ、俺は恐怖しているのだ。
本当に俺はこれで良かったのか。
彼もそれで良かったのか。
__ふと、脳裏に出会った頃の彼の 笑顔が映し出される。
いふ
あの頃の彼も"ないこ"、 今の彼も"ないこ"。
愛したいけど、愛すのが怖い。
ないこ
いふ
もうどうしたらいいのか、 見当もつかない。
ただ一つだけわかること、 それは__
どこかで俺たちの歯車は、 狂ってしまったという事だけだ。
すごく伝わりにくいかもしれなかったですけど、一応解説をしておくと
青が桃と付き合ってから監禁して 堕ちたのはいいものの、 出会った頃の桃と今の桃、どちらが 本当に青が望んでいた桃か わからなくなる...という話です。
説明下手でごめんなさい。
ヤンデレって言うのが 書いてみたかったんです。
人の愛の形は色々あって 監禁やヤンデレ、メンヘラなんかも 法律的には危ないですけど、 一つの愛の形ではあるじゃないですか
でもその愛が行き過ぎてしまうと、 きっとその愛していた本来の相手を 見失ってしまう可能性も あるんじゃないのかなと。
...いう作者の完全な妄想でした。
こんな駄作を読んでくださった方、 本当に感謝しかないです。
ありがとうございました。
コメント
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めっちゃ面白かったです!文字だけで色々な意味がわかってすごい真顔でじまじま呼んじゃいましたっ!BADな感じも好きすぎますっ!