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探偵は黄昏時に

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探偵は黄昏時に

1 - 彼は誰時の山小屋にて

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2023年11月13日

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黄昏時。

夕焼けで薄暗い中、景色が黄金色に輝く。

それなりに栄えているこの街には、 依頼された殆どのことは何でもこなすので、"何でも屋"と呼ばれている 探偵事務所かある。

その事務所のオフィスに明かりがつくのは、いつも黄昏時。

何でも屋、こと探偵事務所の探偵は、たった二人だけ。

しかし探偵二人は、しばしば警察から難事件の解決も依頼されるほどの頭脳を持つ。

今日も二人の探偵は、依頼のために各地へと足を運ぶ__。

出雲 治

いつも思うんですけど、どうして夕方に事務所を開けるんですか。

月見 晴翔

……朝っぱらから訪問者の対応がしたいかい?

出雲 治

…ふふ、夜行性の私達には少し厳しいでしょうねえ

出雲 治

何を言うか分かったものじゃない

月見 晴翔

そういう事だよ

月見 晴翔

訪問者は夕方から。電話対応ならいつでも出来るようにしているから、文句もないだろうしね

机に積まれた資料などを整理しているのは、事務所の責任者、月見晴翔。

そして、それを横で眺めている男は月見の相方であり助手、出雲治。

出雲が事務所に来たところで殆ど仕事に手をつけないのは、いつもの事。

出雲 治

ね、晴翔さん

出雲 治

今日はどんな依頼が入りますかね

月見 晴翔

さあね

月見 晴翔

でもそろそろ電話がなるんじゃないか?

リリリン、リリリン

事務所の電話が鳴る。

出雲 治

流石、晴翔さん!

月見 晴翔

はいはい、早く電話取ってくれ

月見 晴翔

対応頼んだよ

出雲 治

はあい

出雲 治

はい、こちら探偵事務所です

出雲 治

……ええ

出雲 治

今からでしょうか?

出雲 治

……はい、分かりました

出雲 治

直ぐに其方へ向かいます

出雲 治

警察からでしたよ

出雲 治

どうも殺人事件のようでして

月見 晴翔

……ふうん

月見 晴翔

ちょっとは面白そうだね

月見 晴翔

今からだってね、ほら、早く支度して行くよ

出雲 治

ふふっ、はあい

月見 晴翔

はああ……寒いねえ

出雲 治

もう二月ですから

月見 晴翔

やだなあ、冬は寒くてかなわないよ

出雲 治

晴翔さんにも弱いところってあるんですねえ

月見 晴翔

その言い方はやめろ、気持ち悪い

言葉を交わしながら、二人はタクシーに揺られる。

今向かっているのは、事務所からそれほど遠くない山の麓にある小屋。

直ぐに、と言ってしまったからには、十分程度で着きたいところであった。

月見 晴翔

それにしてもこの寒い中に登山か?

月見 晴翔

少しばかり頭のネジが外れているんじゃないのか

出雲 治

物好きもいるものですよ、世の中には

月見 晴翔

あの辺は雪も降るだろうし……ううん、僕には理解し難いね

月見 晴翔

どう?お前は理解できるかい?

出雲 治

私もさっぱり理解できないですよそんなの

月見 晴翔

だろうねえ

と、ここでタクシーが止まる。

どうやらもう目的地へ着いたようで、金を払ってタクシーから降りる。

そこから、事件現場である山小屋へと足を向けた。

出雲 治

これはまた、惨いね

山小屋には何やら、首を鋭利な物で刺されたように首から血を大量に流す女の姿があった。

月見 晴翔

嗚呼……それにしてもこの部屋、暖房が効きすぎじゃないか?

月見 晴翔

刑事サンさあ、温度弄ったりしてないよね?

ぶっきらぼうに月見が言う。

その言葉を聞いた刑事は少しむっとして、強く反論した。

刑事

この部屋の設定温度は私達が到着した時からこの温度なんだよ

刑事

誰彼構わず疑うってのもどうかと思うが

出雲 治

やだなあ、晴翔さんは貴方を疑ってなんかいませんよ

出雲 治

あの方は考えているんですから

出雲 治

貴方達がどれだけ頑張っても分からなかった、この事件の真相についてね

出雲は刑事を莫迦にしたようにくすくすと笑う。

刑事は黙ってはいるものの、その出雲の様子に腹を立てずには居られないようだ。

その横で、月見だけは真剣に考えていた。

不自然な程に暖かい部屋の中で。

月見 晴翔

ところで、刑事サン

月見 晴翔

この女性と事件について洗いざらい話してもらえるかな

刑事ははっ、と驚いて急いで胸ポケットから手帳を取り出した。

刑事

まずは女性についてだが__

被害者である女性は32歳独身、会社勤めで趣味は登山であるという。

ここの管理人によれば、女性はしばしばこの山小屋を利用していたそう。

月見 晴翔

…何故、ここをよく利用していた?

刑事

はあ、なんとも「ここから見える景色が疲れきった心を癒してくれる」と言っていたそうだ

出雲 治

成程ねえ、山からの景色が癒しか

出雲 治

仕事関連で悩みでもあったかな

月見 晴翔

それはともかく、この小屋の管理人に話を聞けないのか

月見 晴翔

その言い様だと管理人は何か知っているな

刑事

管理人は少し気をやってしまってな

出雲 治

ま、無理もないね
自分の管理する山小屋で人が死んだんだから

月見 晴翔

……それもそうか

刑事

ちなみに、管理人は容疑者からは外れている

出雲 治

ほう?何故。

刑事

彼は昨日の昼の時点でここを立ち去っている

刑事

何故なら体調を崩し、病院に行くつもりだったからだ
実際に受診した証拠だってある

刑事

更にそこからすぐ家に帰り、寝てしまった。これだって確実だ。何故なら彼はマンション住まいでカメラをかいくぐってここまで来るのは不可能だからだ。そして私達がここに到着した時点ではまだ彼は家にいたんだ

月見 晴翔

……?誰がこの死体の発見人だ?

刑事

管理人だ。ほら見ろ、あの角にカメラがついているだろう

刑事

カメラの映像も貰ってきた。画角的に容疑者も被害者の姿も見えない。見えるのはただ飛び散った血だけだ

出雲 治

成程。自分のいなかった山小屋で夜に何もなかったか知りたいという心理は分かる

月見 晴翔

辻褄はあっているというわけだ

刑事

それにしてもプライバシーの保護のためか、殆ど真下しか見えないようになっているのはどうかと思うが……

刑事

おかげで寝ているところも、入口から部屋に入るまでの足取りすら分からない

月見 晴翔

ま、そこは音の情報もあるのだからね
何しろ僕達は見えるものからだけではなく音からだって推理できる

月見 晴翔

例えばほら、この映像にも音声が付いていて、被害者女性のちいさな悲鳴が聞こえることだとかね

出雲 治

今回のがいい例ですねー

刑事

はあ、まあそうだな……

刑事

それで、この事件の話だが

女性の死亡時刻はおおよそ午前7時。

死因は鋭利な物で首を刺された事による大量の出血だが、その凶器は未だ発見されていない。

刑事

どうにもこの部屋の中には凶器となりそうな物がなかった

刑事

恐らく加害者が凶器を用いて殺した後持ち去ったのだろうと考えるが……

月見 晴翔

ふうん……刺された、いや、傷的には突き刺された、が適切かな

月見 晴翔

包丁とかなんかよりも槍って感じだ

月見 晴翔

それにしても凶器がないのか

出雲 治

持ち去ったと言ってもねえ、うっすらとでも雪が積もっているし足跡は残るはずなのだけれど

刑事

それも、窓の外を見てみれば分かるだろう

ガラ、とよく陽が入りそうな東向きの窓を開けて外を見回すと、薄ら積もった、殆ど足跡もない雪ばかり。 今日一日、雪が積もる程気温が低かったからか氷柱ができていた。

更には足跡といっても、ここに来るまでに月見と出雲がつけた足跡だけだった。

出雲 治

足跡すらも入念に隠したというのか?

出雲 治

全く奇妙だねえ

出雲 治

というか、この女性は何か恨みでも買っていたのかい

刑事

全くそのような話は持ち上がっていない

刑事

職場でも仕事の出来る人間だったようで、他人からの信頼が厚い人物だったようだ

月見 晴翔

それはまた奇妙だ

月見 晴翔

まあでも、そういう人が他人から嫉妬される事もあるからね

月見は全く不思議だと言わんばかりに目を伏せる。

その様子に刑事も溜息をつく。

刑事

お手上げか、探偵さんよ

出雲 治

考えているんですから、黙ってくださいよ

刑事

……ふん、しかし足跡も凶器もない

刑事

隠せそうなところも全て探したさ
小屋から一定距離の所までだとか被害者の鞄の中、布団の下、冷蔵庫の中までな

月見 晴翔

__冷蔵庫?

ぴり、とその場の空気が一変した。

月見 晴翔

冷凍室もあったんだろうな、それには

月見は問い詰めるように聞いた。

"何故そんな重要な事を早く言わなかったのか"とでも言うように。

刑事

……嗚呼、勿論

刑事

元は何も入っていない冷蔵庫だった

刑事

そして今も、何も入っていない

刑事

__いや、氷の欠片くらいは入っているかもしれんが

その話を聞き終わる前に、月見は冷蔵庫のある入口付近へと急ぎ足で向かった。

月見 晴翔

___嗚呼、矢張りな

出雲 治

おや、これは……

月見 晴翔

製氷機もない、だというのに氷ができている

出雲 治

ふうむ……それなりに大きいねえ

出雲 治

それに、棒状の氷が折れたような形の氷だね?

月見 晴翔

__これは、自殺だな

刑事

……はっ?

__[解決編]に続く

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