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ふぁぁぁぁぁ!!!!! 切ない……😭 何も知らない澪ちゃんも嘘をつく涼夜くんもお互い辛いよね…… 2人が結ばれるといいんだけどなぁ……💭
…はい!…ということで、『僕はキオクソウシツ』…読んでいただき、ありがとうございました!!実はこれ、300タップ超えちゃってるんです。お疲れ様でした! ちなみにこちら、一応キリガクレ物語の第1話、『君はキオクソウシツ』の続編となっております!いかがでしょうか? お気に召していただけたら幸いです!!改めて、ありがとうございました!!!(*´꒳`*)
俺の初恋は、 小学四年生の夏だった。
「りょうちゃん」って俺を呼ぶ
その声が愛おしくて。
…迷子になっただけで泣く、
お前の弱さを 守ってあげたくて。
出会ってから数秒で、 俺は恋に落ちた。
でも……
俺は旅館の後継ぎ息子。
俺の両親は、当然 「自由」を許さなかった。
「お前の結婚相手は 俺たちが決める。」
「この旅館の未来も 考えて、だ。」
「お前が心配することは 何もない。」
そうやって、幼い頃は両親の 言い分を信じてた。
…でも、間違っていた。
彼らは正しくなんかない。
「俺の為に」じゃない。
「自分の為に」していること。
俺の親は、表面上の優しさで 『優しい親』を演じ、
俺に『呪縛』という強い枷を 巻きつけた。
友情も。
部活も。
恋愛も。
結婚も。
俺から『自由』を次々に 奪っていった。
結局、俺から残ったものは なんなんだろうな…。
思えば、俺には何もなかった。
そんな、闇の中にいた 俺が恋をしたのは
たった一つの、小さな小さな
「光」だったのに…。
この恋は…
許されない。
…俺の初恋は、出会った時から幻のように儚かったんだ。
お前が見えているのに、
…好き、なのに…。
…届かない。
そんな、幼き頃の初恋なんか とっくに諦めたはずだった。
…でも、それは違った。
馬鹿だよな、俺も。
初恋なんか、忘れちまえば 済む話なのに…。
一日、また一日と
カレンダーの日付をめくるたび
収まることを知らない 俺の鼓動は速くなる。
「りょうちゃん」
「りょうちゃん」
「りょうちゃん」
・ ・ ・
「りょうちゃん」
その声が、俺の耳の中で 何度も何度もリフレインして…
俺の耳にこびりついて、 離れない_____
「お前が20歳になったら…」
不意に、遠い遠い昔言った、 俺の言葉を思い出した。
…あの頃は、ただ純粋に お前に惹かれてた。
…明日が、約束の日。
…翌朝。
昨夜は色々と考えてしまい、 なかなか眠れなかった。
その割には、何故かいつもより早く目覚めてしまった。
__あいつは、来ない。
来るわけがない。
…そんなの、わかってた。
俺のことだって、 覚えてるわけがない。
…そんなの、とうの昔に 知っていた。
…わかってたよ。
わかってた、けど……
それでも、期待してしまう 自分がいた。
…はぁ……。
……アホらしー…。
そう思う自分もいた。
…不意に足が動き、 あの場所へと引き寄せられる。
あの日、約束した場所___
旅館の小さな桜の木の下に、 無意識に足を運んでいた。
…当然のことながら、 お前はいなかった。
はぁ……。
…なんだよ。
初恋に浮かれていたのは、 俺だけ、かよ……。
…そう思うと、 無性に腹が立ってきて……
その怒りを発散する気力もなく
俺はへなへなと地面に 倒れこんだ。
涼夜
涼夜
ひび割れたプライドを
大事にしまいこんで…。
大袈裟に盛大なため息をついて 心の隙間を埋めていた。
…どれぐらい経っただろうか。
ようやく目の前にある事実を 受け止める覚悟ができて
…自分の気持ちにも 区切りをつけて。
旅館の手伝いをしようと 立ち上がったその時。
荒い呼吸と慌てた足音が 聞こえてきて…。
涼夜
…声をかけられ、俺は慌てて
いつもの営業スマイルで お客様に接客しようと
立ち上がった_____
涼夜
涼夜
涼夜
涼夜
涼夜
『りゅうちゃん』
『りゅうちゃん』
・ ・ ・
『りゅうちゃん』
無意識に求めていた言葉。
無意識に求めていた声色。
……ああ。
澪だ_____
そう気づいた瞬間、まるで雷に打たれたかのように
全身に衝撃が駆け巡り
俺は動けなくなった。
…同時に広がるのは、両親への
底知れぬ恐れに近い 感情だった。
…思い出すのは、 有無を言わせぬ力強い
両親の言葉_____
「お前の結婚相手は、 俺たちが決める。」
俺の心の中で、
二つの気持ちが複雑に 入り混じっていた。
嬉しくて、今にも澪を 抱きしめたい気持ちと、
両親の有無を言わせぬ言葉に 対する、恐れに近い感情。
激しい葛藤の末に、
咄嗟に勝ってしまったのは 両親への思いだった。
…ごめん、澪。
意気地無しで、ワガママで、 ごめん_____
涼夜
涼夜
…俺は、「キオクソウシツ」 なんかじゃない。
それでも、お前の前では…
俺は、「キオクソウシツ」の ふりをする_____
涼夜
眩しすぎる笑顔が、ゆっくりと 歪んでゆく。
…こんな表情、 見たくなかった。
…させたく、なかった。
『嘘ついて、ごめん。』
たった一言、そう言えたなら
何かが、変わるかも しれないのに…。
涼夜
…俺には、できない。
涼夜
涼夜
涼夜
涼夜
平然と嘘をついて、 申し訳なさそうに演技する。
…ははっ、
俺、やっぱ最低な人間だな…。
呆れるのを通り越して、 段々と笑いがこみあげてくる。
それなのに…
…君は、僕のこの嘘を 見抜いてくれるかな?
そんな淡い期待が胸をよぎる。
…俺が、澪を笑顔に させたかった。
そんな、俺の切なる願いなど きっと叶わない。
もう、澪の傷ついた顔なんて 見たくない_____
そう思った俺は、澪から ぎこちなく視線を外し、
スイスイと泳がせながら
なんとか、言葉を紡いでいく。
涼夜
涼夜
…その時、突然強い風が吹いて
俺の髪に隠れていた頰の傷が、 浮き彫りとなる。
澪の視線が、俺の頰へと 移動したのがすぐにわかった。
きっと、澪はこの傷を
事故の傷だと思い、 誤解しているんだろう。
…でもそれは、澪の勝手な 思い込みに過ぎない。
この傷は、旅館の庭にある
薔薇の手入れをしていた時に できてしまった傷だ。
…その誤解を解きたいのに、 俺にはできない。
自分が無力であることを感じ、 悔しくて堪らない。
涼夜
涼夜
涼夜
涼夜
心の底から安堵したように、 澪はふぅっと息を吐く。
そんな俺の思いも知らずに、 澪は優しく心配してくれる。
…澪は今、誰よりも 傷ついているはずなのに。
にも関わらず、俺のことを 想ってくれているのを感じ、
胸がズキッと痛んだ。
…ごめん、澪。
俺の初恋は、こうして 幕を下ろした_____
…はず、だった。
涼夜
涼夜
その時、澪が急に ふらふらとよろけて____
俺は慌てて、澪の身体を 強く掴んで支える。
その瞬間、俺は 思ってしまった。
…何年もの月日の末に、やっと掴めたこの手を、
離したくない。
澪を守るのも、 笑顔にさせるのも、
他の誰でもなく、 俺だけがいいって_____
…この決断は、両親に逆らう ことになるのかもしれない。
…それでも、俺は
澪が好きだ__
涼夜
涼夜
涼夜
涼夜
そう言いながらも、俺の心は 驚くほど軽やかだ。
はぁ……
天邪鬼で、素直な思いが 言えなくて_____
俺って、意外と めんどくせぇ奴なんだな…。
涼夜
涼夜
涼夜
涼夜
…見え透いた嘘。
心の奥底に隠した、 お前への思い。
その全てを受け入れた今、俺は静かに澪の頰に口付けを__
…ねぇ、澪。
…こんな、ひねくれ者の 俺だけど_____
もしも、お前がこんな俺でも 愛してくれるなら。
…ずっとずっと、 お前の隣で____
…好きでいても、良いですか?