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花梨
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コメント
1件
もう涙腺崩壊上手すぎる…(´;ω;`) 今回も良かった!次も楽しみに待ってる!
……ピリリリリ。
突然の着信音に、深緒はゆっくり目を開けた。眩しい朝日。 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。 枕元のスマホが震えている。 画面には“先輩”の文字。
松田深緒
掠れた声。
先輩
電話越しの声に、深緒は少しだけ身体を起こした。
先輩
松田深緒
先輩
深緒は少し黙る。
先輩
先輩
松田深緒
先輩
先輩
そこで少し、声が柔らかくなる。
先輩
先輩
通話が切れる。 深緒はスマホを見つめたまま、小さく息を吐いた。
朝から、何もする気が起きなかった。 洗濯機を回して、止まった音だけ聞いていた。コーヒーを淹れて、半分も飲まないうちに冷めた。 降谷は仕事でいない。
ぽっかり空いた時間だけが、部屋の中に残っていた。
気づけば外へ出ていた。目的なんてなかった。ただ、家にいると考えてしまうから。
ふと、見慣れた道へ足が向く。、 懐かしいファミレス。
高校時代、よく四人で来ていた店だった。
店内へ入る。中途半端な時間だからか客は少ない。窓際の席。
10年ほど前
萩原研二
萩原研二
松田陣平
萩原千早
松田陣平
松田深緒
松田陣平
松田陣平
萩原研二
松田陣平
萩原研二
松田陣平
萩原千早
松田深緒
松田深緒
松田陣平
テーブルを挟んで、ぎゃあぎゃあ騒ぐ声。
うるさくて。騒がしくて。
ーーーーー
松田深緒
深緒は、ゆっくり目を閉じる。
静かな店内。もう、あの声は聞こえない。
店員が水を置いていく。現実へ引き戻された。
松田深緒
小さく笑う。でもその笑顔は、少しだけ寂しかった。
注文したパフェは、昔よく四人で食べていたものだった。
店を出る。駅の方へと足を向けた。 その時
萩原千早
後ろから声がした。振り返ると、そこにいたのは千早だった。
松田深緒
萩原千早
松田深緒
松田深緒
萩原千早
千早は少し笑った。その視線は、一瞬だけファミレスへ向く。深緒もつられるように振り返った。
萩原千早
松田深緒
短い返事。それだけで、十分だった。 千早は小さく息を吐く。
少しの沈黙。
松田深緒
萩原千早
松田深緒
千早は少し目を丸くして。それから、柔らかく笑った。
萩原千早
海は、少し曇っていた。
波の音。潮の匂い。 二人並んで、堤防へ腰掛ける。缶コーヒーを開ける音だけが静かに響いた。
萩原千早
松田深緒
昔、四人で来た海だった。 千早と深緒がナンパされて。 研二と陣平が、今にも殴りかかりそうな勢いで追い返して。 かと思ったら今度は研二がナンパされて。 かき氷食べて写真を撮って。 そんな、どうでもいい日。でも、宝物みたいな日。
萩原千早
千早の視線が、深緒の右手へ落ちた。薬指。そこに光る指輪。
萩原千早
松田深緒
海を見つめたまま、小さく笑う。
研二が死んで、少し経った頃。 深緒は指輪をつけられないままだった。見ることもできなかった。触れたら、全部崩れてしまいそうで。
⸻
松田陣平
ある日陣平は、指輪の箱を持ってそう言った。
松田深緒
松田陣平
数秒。静かな沈黙。深緒は俯く。
松田深緒
声が、少し震えた。
松田深緒
松田深緒
陣平は何も言わなかった。ただ、静かにケースを開ける。 綺麗な指輪。 研二が、深緒のために用意していたもの。 陣平はそれを見て、少しだけ目を細めた。
松田陣平
松田深緒
松田陣平
松田深緒
松田陣平
松田陣平
松田陣平
松田深緒
松田陣平
ぶっきらぼうな声。でも、優しかった。
陣平は深緒の右手を取る。そして、壊れ物みたいに静かに、その指輪を薬指へ通した。
松田陣平
その瞬間。深緒の目から、ぽろっと涙が落ちた。
松田深緒
松田陣平
松田深緒
陣平は困ったように眉を寄せて。それから、深緒の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。
松田陣平
ーーーーー
波の音が響く。
松田深緒
深緒は、今も薬指にある指輪をそっと撫でた。 千早は何も言わない。ただ、静かに海を見つめていた。 曇った空の向こうで、夕陽が滲んだ。