先生
先生
透
先生
先生
透
透
俺は小さな頃から
本を読むのが苦手だった
もちろん 苦手な理由がある…
それは
透
透
父
透
父
透
俺の父は小説家だった
人気作家と言う訳でも無く…
雑誌で コラムを書く仕事をしながら
売れない小説を書いていた…
母は俺が産まれてすぐに 病気で亡くなった
写真でしか顔を知らない
父に 母はどんな人か聞いた事がある
何も答えてはくれなかった
俺の家族は…俺と父だけ
でも
父が俺と向き合う事は 一度も無かった
父の世界は 小説の中だけだった
だから
俺は本が苦手だ…
父のように なりたくないから
俺は高校を卒業して
すぐに就職をした
一人暮らしも始めて
実家には…
あまり帰らなかった
そして
俺は23歳になった
誕生日が過ぎて直ぐ…
父が死んだ
急性心筋梗塞だった
岡崎
透
岡崎
岡崎さんは
父の担当編集者
昔からの知り合いだ
透
透
岡崎
透
透
透
岡崎
岡崎
岡崎
透
岡崎
透
岡崎
透
誰もいない実家で
俺のやる事は… 遺品整理
それから
浮かない気持ちで
父の小説を手に取った…
埃臭くて古い文庫本
岡崎さんの言葉を思い出して
そっと ページを巡った
そこには
家族の物語があった
冴えない男が
穏やかで優しい女性と 恋に落ち…
やがて男の子が生まれ…
いつまでも家族3人
幸せに暮らす物語
それは
今の俺には眩しすぎて
思わず目を閉じてしまう
そんな物語…
透
透
透
透
この小説を読めば分かる…
この作者は
登場人物のヒロインに 恋い焦がれている…
この作者は
幸せな家族を…
取り戻そうと必死だ
透
父さんは
母さんが死んで
絶望したのか…
そして
小説の中に 自分の理想を詰め込んだ…
透
透
俺は
『悲しい』という 感情の他に
初めて…母の温もりを 本の中に感じた
fin
コメント
16件
感動です(๑o̴̶̷᷄﹏o̴̶̷̥᷅๑) 家族が死んでも全く悲しくないと思うのは可哀想ですよね... お父さんは本当はもっと遊びたかったんじゃないかな? お父さんの実の気持ち...
思わず泣きそうになりました(´;ω;`) とてもいい話でした!