マホ
宝探しなんてワクワクするねー
サオリ
小学生以来だね
エイタ
高校生にもなって恥ずかしいがな
コウイチ
そういうエイタが一番乗り気だったじゃん
サオリ
そうそう
サオリ
あたしの家の蔵から見つけた地図
サオリ
エイタが一番食いついてたじゃん
エイタ
謎解きが俺の趣味だから…
マホ
でも本当に解いちゃうのもすごいよ
コウイチ
さすがエイタだよな
マホ
ところでさ
マホ
エイタが特定した場所って
マホ
昔なくなった村って言ってたけど…
サオリ
そのことなんだけど…
エイタ
コウイチ、もう話していいか?
コウイチ
ああ、いいよ
マホ
どういうこと?
コウイチ
ごめん、マホには黙ってろって言ったんだ
マホ
なんで?
コウイチ
実は、その村がなくなったのは
コウイチ
とんでもない大事件があったからなんだ
コウイチ
その事件って言うのがヤバくてさ
コウイチ
殺人鬼が、33人もの村人を殺しちまったんだ
マホ
やば…
コウイチ
その村は元々過疎化してたんだけど
コウイチ
事件のせいで廃村になっちまったってわけ
エイタ
今は、絶対に訪れてはいけない場所として有名なんだ
コウイチ
肝試しに訪れた若者たちが失踪してるって噂もある
マホ
そんな危ないところ、行かないほうが…
サオリ
そういうと思って黙ってたの
サオリ
マホ、恐がりだし
マホ
うーん…
エイタ
悪かったよ
エイタ
でも、コウイチの考えも理解できてさ
コウイチ
俺たち、昔からずっと仲良かったけど
コウイチ
大学生になったら離ればなれになっちまうだろ
マホ
…………
コウイチ
忘れられないような思い出を作りたいんだ
コウイチ
そろそろ勉強にも本腰入れないといけないし
コウイチ
これがラストチャンス
サオリ
あたしもそう思う
サオリ
みんなで思い出作ろうよ
エイタ
それに単なる肝試しじゃない
エイタ
地図が示す場所には何かがある
エイタ
もしかしたら歴史的に重要なものかもしれない
コウイチ
ガチの宝探しってわけだ
サオリ
きっと楽しいよ
サオリ
ね、マホ
マホ
う、うん…
マホ
(ここまで来ちゃったし…)
マホ
(でも、何だか嫌な予感がする…)
コウイチ
駅に誰もいねぇな
マホ
無人駅って初めて
エイタ
ここからは歩きだ
エイタ
大体三十分くらいだな
サオリ
けっこう歩くんだね…
老婆
お前さんたち
老婆
まさかあの村に行くんか
コウイチ
そうですけど…
老婆
…………
老婆
行くなって言ってもムダだろうね
コウイチ
まあ…
老婆
一つだけ忠告しとくよ
老婆
日が暮れる前に村を出なさい
老婆
さもなくば
老婆
二度と帰ってこられないよ
マホ
…………
老婆
昨日も二人の若者が村に行ったんだが
老婆
まだ帰ってきた様子はない
コウイチ
まじっすか…
老婆
いいかい、日が暮れる前に帰ってくるんだよ
マホ
は、はい
エイタ
もうすぐだ
エイタ
あのトンネルを抜ければ目的地だ
マホ
うわぁ、真っ暗…
サオリ
いかにもって感じだね…
サオリ
出口が見えないよ
マホ
ホントにここを通らないといけないの?
コウイチ
大丈夫、懐中電灯を持ってきたからさ
サオリ
準備がいいね
四人は、トンネルに入っていった。
サオリ
マホ、やっぱり怖い?
マホ
う、うん…
マホ
それもそうなんだけど…
マホ
(何だろう、さっきから寒気が…)
サオリ
マホは小さい頃から霊感が強かったもんね
サオリ
何か感じた?
マホ
…………
サオリ
大丈夫大丈夫
サオリ
いざとなったらこの木刀でやっつけてあげるから
コウイチ
さすが剣道部
コウイチ
痴漢に襲われたときもそれでやっつけてたよな
サオリ
これさえあれば誰にも負けないよ
サオリ
幽霊だって倒しちゃうから
サオリ
だからマホ、安心してよ
マホ
あ、ありがとう
マホ
(きっと気のせいだよね…)
エイタ
出口が見えてきたぞ
コウイチ
けっこう長かったな
コウイチ
やっぱり何も出なかった
エイタ
当たり前だ。幽霊なんているはずないだろ
トンネルを抜けると、そこには寂れた村があった。
コウイチ
家はそのまま残ってるんだな
コウイチ
全部ボロボロだけど…
サオリ
まだ誰かいそうな感じ…
サオリ
なんてね、そんなことあるはずないか
マホ
(さっきより寒気がひどい…)
マホ
(間違いない…)
マホ
(確実に、何かいる…)
エイタ
ここは久多仁村(くたにむら)
エイタ
殺人鬼による大虐殺で滅びた村だ







