この作品はいかがでしたか?
89
この作品はいかがでしたか?
89
おんりー
永遠に閉じた眼
また開いた時。
そこはもう見慣れた”いつもの場所”
ではなかった。
嬉しいはずなのに。
心がきゅうと痛む。
ごめん、皆。
でも俺にはこれしか思い浮かばなかったんだ。
立ち上がり、
ふらふらと歩き出す。
”天国”なんてもの、ホントにあったんだなと
心の中で呟く。
だったら。
”神”なんて都合のいいものもいるのかな
ー助けて欲しかったな。
慌てて頭を振り
脳内に浮かんだ言葉を打ち消す。
もう、俺は解放されたんだ。
なのに、心は鎖で繋がれたように
ずっしりと重い。
なんで…
ここまでやったのに、まだ苦しいの?
重い体を動かし、
止まった足をまた進める。
ふと足元に目をやると。
ーふぅん、やっぱりアニメみたいだな。
お決まりの足透け。
雲の上にふよふよと漂う。
幽霊なんて信じて無かったんだけどな。
それにしても
熱いという感覚は無いし
苦には感じないけれど
日光の下が怖い。
何か遮れるものは…
きょろきょろと辺りを見回す。
良さげな木。
あそこに入るか。
へなへなと力が抜けるように幹によりかかり、
そのまますとんと腰を下ろす。
もう、ほんとに解放されたんだ。
そう思うと、胸にまきあがる嬉しい、 という気持ちとは裏腹に
何故かぽっかりと穴が空いてしまったみたいだ
…いや、これは俺が望んだ道。
…後悔は…ない、はず…
…
気を紛らわせたくて、きょろきょろと 辺りを見回すと、
すぐ横に山積みになった本が置かれていた。
おもむろに手を伸ばし、そのままぱらぱらと 無心にページをめくりつづける。
…全然、内容は頭に入ってこなかった。
うかぶのは、遺してきた4人のこと。
あぁ、俺は自分で思ってたよりも ずっと、ずっと 皆んなの事が好きなんだ。
…だってほら、”聞こえないはず”の おらふくんの声が聞こえる。
あれ?俺、幻覚まで見えるようになった?
おらふくんが走っ
おんりー
おらふくん
暖かい腕に抱きしめられて、 実感する。あぁ、幻なんかじゃない。 本物だ。
おらふくん
ぼたぼたと、涙が僕の服に落ちて しみを作っていく。
ぼんさん
また、大きくふわりと抱きしめられて 顔をあげると、切なげに微笑みながら 瞳を揺らすぼんさんと目が合った。
どうして、という言葉がでかかったが かろうじて押さえ込んだ。
十中八九俺のせいだろう。
それに気づいた時、ふいと視線を逸らし 服の裾をぎゅっと握りしめる。
視界がぼやけ、淡くなっていく。
おんりー
掠れた声で囁く。
けれどしっかりと 2人の耳には入っていたようで、返事の代わりにまた優しく抱きしめられる。
あぁ、これか。
漸く気がついた。
俺が本当に欲しかったのは、
これ なんだ。
ぶわっと目の奥からせりあがってくるもの。
もう、押しとどめない。
抱き合いながら、3人で泣いて、泣いて、泣いて
笑った。
きっと、今の俺の顔は
涙でぐちゃぐちゃで、酷いものだろう。
けれど、それでもいい。
こうして、心の底から笑えるから。
コメント
1件
や、ばい……泣きすぎて……水分がぁ…