"私"の存在

２日後

加賀美インダストリアル 社長室

あれから未だに剣持さんに謝れていないまま２日が経った

罪悪感が大きいせいか、あまり仕事に手がつかずにいる…

あの日は不安と怒りみたいなのがグチャグチャになって、ついあんま事を言ってしまった……

けれど、だからといってあの発言が嘘というわけではない

それを考えると一層なにを話せばいいのか分からなくなる…

あんまに必死になってまで私を説得しようとしたのは、彼１人だというのに…

数時間後 ２：３７

どうしてあんな苦しそうな顔をして…？

会社でなにかあったにしても、よっぽどの事がないとあぁならんよな……

てか、ここ交差点で社長が俺の反対側にいるからこっち来るよな…

どうしよ…声かけた方がええんかな？

でも、今の状況で話しかけたらダメなような…

ﾄｺﾄｺﾄｺﾄｺ

なにか、喋っとる？

あ…社長の顔……

…っ、もうこれ以上は見てられん……

こんなｯ社長の苦しそうな顔なんて…っ

え…？社長……？

ﾄｺﾄｺﾄｺﾄｺ…

…社長があんなことを思ってたなんて思ってもおらんかった…

今まで社長やみんなのこと、少しずつ知っていけてると思っていた

けど…全然やった

俺は全然、知れてなかった

俺は…大切なものですら守ることができひんのか……　

ﾋﾟｰﾋﾟｰ(クラクション)

ﾋﾟｰｰ!!

ｸﾞｲｯ

ﾄﾞﾝｯ!

これ、って、言っていいのかな…？

もしかしたら社長にとって最も知られたくない事かもしれん…

なにより本人の口から直接的には説明されとらんから、俺の聞き間違えの可能性もある…やから……

…気のせいやったら……ええな…

まぁ、今日は配信する予定やなかったし別にええか

数分後 加賀美家

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾙ ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾙ

ﾋﾟｯ(電話を切る)

ﾎﾞﾌｯ(スマホをソファーに投げる)

ｶﾞﾀﾝｯ ﾄﾞﾝﾄﾞﾝｯ ﾊﾞﾀｯ