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『遊びに来た』わけだが、これは愛ではないかと里志は思う。 こんなに、狂おしい気持ちになったことがない。
手を繋ぎ、バスタブへ入る二人。
***
その後、恋海に優しく体を拭かれた里志と、乙女の表情の恋海は指を絡ませベッドへ向かった。
髪の毛をほどいた恋海。 二人、そっとシーツの上に寝転がる。
里志
その髪に指を入れ撫でる。まるでパパのように。
愛夜子
里志
恋海を包み込み、唇から優しくする里志。 首筋の上で、耳たぶの柔らかさで、恋海の温みで、流れ星のように愛おしい肌の上を滑る里志。
独り占めしたい
里志の頭をよぎった言葉。
初対面の、お金を払って関係を持つ商売の女性を
オレだけのモノにしたい
と、里志の胸に鮮明に浮かんだ望み。
――――里志の瞳に自分が映っているのを見つけた刹那、カノンは再び愛夜子(恋海)の身体中に五線譜を描いた。
***
ピロートークを楽しむ二人。と言っても言葉自体はほとんど無い。 見つめ合い、頬と頬を摺り寄せたり互いの髪の毛を撫で合う。 ネコの毛づくろいみたいに。
*
――――今一度、愛夜子の胸をある情景が撫でる。 波音……。 そして沁みるように青い海。広い空。 裸の愛夜子が幸せそうな顔をして一人、長い髪を潮風に棚引かせている。
おもむろに恋海が起き上がった。
愛夜子
里志
恋海が丁寧にハンガーに掛けたジャケットのポケットから財布を取り出し、里志は名刺を出した。
テーブルのあるソファーに移動する恋海。 ペンを取り出し小首をかしげなにか書いている。
愛夜子
はにかみながら名刺を里志に再び渡す恋海。
里志
名刺をまじまじと見る里志。
里志
名刺の裏側に『湖杉愛夜子(こすぎあやこ)TEL……』
里志
愛夜子
照れながらコクリと頷き返事をする恋海。
愛夜子
里志
愛夜子
里志は可愛くてたまらないと言わんばかりにソファーの愛夜子を抱きしめる。 そして愛夜子をお姫様だっこし、クルクル回した。
愛夜子
はしゃぐ愛夜子。 さすがの力持ちの里志もそうずっとはクルクル出来ず、愛夜子を下ろした。
里志
愛夜子
サービスの残り時間はあと20分と少し。 二人はもう一度バスタブに浸かった。
優しくいたわるように里志の体を撫でる恋海。否、すでにもう愛夜子だろう。
里志は全身全霊で愛夜子を感じながら何度も抱きしめた。
――――二人はこの夜を境に、宇宙の端っこから落ちるように、愛という深淵へと進んで行くこととなる。
見送りの廊下、腕を組み名残惜しさに瞳を潤ませる愛夜子。
里志
愛夜子
廊下でも二人は何度も口づけ、里志は愛夜子を抱きしめた。
愛夜子が
愛夜子
と今夜、二人のさようならだ。
里志
と里志が言うと、愛夜子は少し複雑な表情をした。
愛夜子
はっきりと愛夜子が言う。
里志の中からすっかり消え去っていた望子がよぎった。
里志
愛夜子
淋し気な愛夜子。儚い影が今にも崩れそうだ。
最後に深く、長いキスをした。
愛夜子
*
――――里志に手を振る愛夜子の心象風景は今、女性の掌から砂浜の砂がサラサラと零れ落ちている様子。
受付へ行くとスタッフに「こちらへ」と案内された里志。 そこでは上司の塚本が待っていた。いわゆる上がり部屋だ。 遊んだ男性たちが帰宅する前にひと息つけるような場所なのだ。
塚本
豪快に笑う塚本。
里志
塚本
里志
塚本
里志
塚本
グラスを里志に手渡し、ビールをつぐ塚本。
里志
塚本
里志
――――その夜、帰宅しマナーモードを解除すると、望子からの着信履歴が15件入っていた。
取り敢えず、落ち着こう
水をコップ一杯飲み、望子に電話を掛けた。
望子
里志
望子
里志
望子
里志
望子
里志
望子
里志
望子
明日は日曜日。里志の塗装店は休日だ。
明日ならゆっくり愛夜子に電話が掛けられるな、と考えていたのだ。 もっとも愛夜子の予定を知らないが……。
自分は、愛夜子を諦めなきゃしょうがないのかな、とも考える。 でも、どうしても里志には諦めきれない。 抱いたから、躰の相性が良かったから、そうではない。
彼女を放っておけない
里志は危うげな羽を持つ妖精のような愛夜子を求めているし、求められているとわかるから応えたい。
しかし望子が来るなら明日、いつなんどき望子が電話を掛けて来るかわからない。
いや、この先だってずっとそうだ。 そもそも二人の女性と付き合って行くなんて……と、里志は苦しむ。
里志の心は今や愛夜子にある。
たった一度逢っただけの玄人の女性だ。
でも、里志の目には、愛夜子はとても儚げで、風俗などと言うシビアな世界でやって行けるような女性ではないのでは? と疑問を持った。
お店のトップだとのこと。 確かに、あれだけ魅力があり細やかな女性だ。 自分じゃなくとも男たちはいちころだろう、とは感じる。
***
――――そうして迎えた翌日、日曜日の朝。
いつ望子から電話があるかと思うと、落ち着いて話せないな
愛夜子の乙女のような声が恋しい里志。 自分の名を、あの声で呼んで欲しい。 でも電話はやっぱり掛ける勇気が出ない。 最悪、愛夜子に迷惑を掛け兼ねない。
『ルーリラ』に客として行って話すしかないかな……
ピンポーン。
誰だろう? 望子は仕事中だし。なにかの勧誘かな
インターホンで対応する里志。
里志
望子
え、もう?
里志は玄関まで行き扉を開けた。 食材のたっぷり入った買い物袋を抱えた望子の笑顔。
これまでよりも褪せて見えてしまう。 所帯じみているからではない。愛夜子を愛したからだ。
里志
望子
里志
望子
自分の家のようにふるまう望子。 そりゃあ7年も付き合っていたらそうだろう。 キッチンへ食材を持って行き冷蔵庫にしまって行く。
望子
里志
さばさばした性格の望子と里志のお家デートはあまりロマンチックなものではない。 テレビで出来るように接続したゲームを楽しんだり、お互いの仕事の愚痴を言い合ったりといった感じ。 夜は、恋人らしいことをし、一緒に眠るのだが。
複雑な心境を望子に隠し続ける里志。 夕方になると張り切ってカレーライスを作る望子
望子
里志
――――美味しい香りがキッチンいっぱいに広がる。夕食の時間だ。 テーブルを挟みパクパクとカレーに舌鼓を打つ望子。
望子
里志
望子
里志
望子
里志
望子
里志
望子
里志
望子
里志
ちょっとイラっとした表情を見せる望子。
望子
そう言われた時、きのうの愛夜子の淫らで、それでいて清らかな肢体が脳裏に蘇った。
里志
望子
むくれる望子。
里志
望子
里志
里志は
望子と一緒に寝るのか~……。やだな、この感覚。罪悪感を感じる
と思った。
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