テラーノベル
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俺は街中を、ブツブツと小声で呟きながら走っている。 誰もいない、誰も聞いていない。聞く耳なんて、最初から持っていない街だ。 それでも……口に出さなきゃ、頭の整理がつかない気がする。 自分を、ナツキスバルだって……思い込ませるように。長ったらしく、原作みたいな言葉を口に出すんだ。
ナツキスバル(仮)
自分を鼓舞するようにナツキスバルと言う名を 口にする。
ナツキスバル(仮)
……クソ。 怖ぇ。
口には出さなかった。 ……いや、出せなかった。 喉の奥まで出かかって、それでも飲み込んだ言葉。 俺に、“死に戻り”はあるのか? 考えてみれば、当たり前の疑問だ。 むしろこの世界に来て今さらすぎるくらいだろ。
ナツキスバル(仮)
ナツキスバル(仮)
ナツキスバル(仮)
慣れない。慣れねぇ……。 長ったらしくセリフを並べても、ノリツッコミ入れたって、喋り方を寄せたって、自分がスバルじゃない事くらいわかる。 けど、この胸の高まり高揚感は収まらない。
ナツキスバル(仮)
走り続けて、肺が焼けるみたいに痛くなったところで、ようやく興奮と高揚感が消えた。 俺は1話目の路地裏――その近くで足を止めてた。
ナツキスバル(仮)
荒い呼吸を整えながら、壁に手をついて前屈みになる。 頭の中はぐちゃぐちゃで、心臓は激しく音を立てる。 だが、 ここで立ち止まったのは、ただ疲れたからじゃない。 考えるためだ。 この、第一章の攻略をだ。
ナツキスバル(仮)
ナツキスバル(仮)
未来を知っている素振りは絶対に見せてはならない。魔女教と思われたらレムのモーニングスターで眼球が一っ飛びだ。 打算も、計算も、全部隠す。 俺はただの変な善人。 たまたま困ってる女の子を助けただけの、変な人。 そういう役を、完璧に演じる。
ナツキスバル(仮)
自分で言ってて少し虚しくなったが、そこは目を逸らす。
ナツキスバル(仮)
ナツキスバル(仮)
俺はこれから先の多くの未来を知っている。 でも、それを今現在の状況で知っていると悟られた瞬間、全部終わる。 だから。 全部、偶然に見せる。 偶然エミリアを助けて、 偶然ラインハルトに出会って、 偶然事件を解決する。 そういう流れを、作る。
ナツキスバル(仮)
視線の先はあの路地裏への通りだ、奥から歩いてくる銀髪の少女。太陽に照らされた白銀の髪は人集りでも目立っていた。
その少し手前には赤毛の最強の騎士、 俺は口端に食べかけの肉まんを咥え装備し、地面を蹴り出した。 ラインハルトの肩にぶつかってそのまま、一直線とエミリアに突っ込もうとしたが――
ナツキスバル(仮)
少しでもインパクトを残すため。 少しでも困っている通行人を演出するため彼にぶつかろうとしたのだが。 すかされた。 まるで最初からそこに俺が来るとわかっていたみたいに、 ほんの半歩だけ体をずらされて。 俺の肩は、虚しく空を切る。 当然、体勢が崩れる。
前のめりに倒れ込みそうになる体。 このまま地面と衝突するまで、三秒―― その瞬間だった。
ラインハルト
ぐいっと首元を引っ張られた。 視界が戻る。 気がつけば、服の襟を掴まれて引き戻されてぐいっと首元を引っ張られた。
ナツキスバル(仮)
俺は慌てて体勢を整え、襟を掴んでいた手を振り解く。
ナツキスバル(仮)
俺は振り返らない。 そのまま俺は一直線に走り出す。 ほんの数秒後
ナツキスバル(仮)
柔らかい衝撃。 人にぶつかった感触。 勢いそのままに、俺の体がぐらりと揺れる。 同時に、視界の端で 銀色の髪がふわりと舞う。 俺と、その少女は…… 同時に地面へと転がった。
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