一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
俺は元々、普通の会社で
会社員として働いてたんだ。

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
でも…そこで、俺…
仕事が上手く出来なくて…

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
いつも…真面目にやってるのに
何かとミスしちゃって…そのせいで
周りに色々…迷惑かけちゃっててさ…

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
それがきっかけで…周りから…
バカにされたり、嫌がらせを
受けるようになって……

相川真冬(まふまふ)5歳
……っ!!

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
……嫌がらせだけだったら
まだ、良かったんだけど…
日に日にエスカレートしていって…

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
最終的には暴力なんて当たり前で…
周りのミスや仕事を無理やり全部…
押し付けられたりなんかもされた。

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
……『生きてる価値なんてない。』
って言われて、首を絞められたことも
あったかな……

そう言いながらお父さんは
自分の服をめくって
お腹と首元を見せてくれた。
相川真冬(まふまふ)5歳
っ!…(たくさんのアザ…っ)

殴られたり蹴られたりされたであろう
無数のアザがたくさんあった。
相川真冬(まふまふ)5歳
(…っ…そんな…ひどいこと…)

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
そんな……度重なる暴力で
心も身体もボロボロにされて……っ
そのせいで仕事だって身に入らない
ミスだって…余計に増えていった…

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
それで…精神的に辛くて
耐えられなくなって……
気がついたら…そいつらのことを
刺して……殺してた……っ

相川真冬(まふまふ)5歳
(あ……)

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
で…その後は怖くなって
その場から逃げた。

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
『もうここにはいられない』って
そう思ってどっか遠いところで
誰にも知られることなく……
1人で死ぬ…つもりだったんだ。

相川真冬(まふまふ)5歳
……っ!!!

相川真冬(まふまふ)5歳

相川真冬(まふまふ)5歳
ぼくと…おなじ…

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
え?…

相川真冬(まふまふ)5歳
ぼくのお腹にも同じような
アザ…いっぱいある。

そう言ってぼくも自分の服をめくって
お父さんにお腹あたりを見せた。
一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
っ!!……

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
ねぇ…真冬の話も聞いていい?

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
どんなこと…されたの?
あの親たちに…

相川真冬(まふまふ)5歳
ぼくは……っ

ぼくは今まで親にされてきたことを
全て、お父さんに話した。
話してる途中、何回も辛くなって
涙で声が詰まったけどお父さんは
その度に優しく頭を撫でてくれて…
『大丈夫、ゆっくりでいいよ。』
と、真剣に話を聞いてくれた。
一ノ瀬彼方(そらる)お父さん

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
…っ…真冬…

相川真冬(まふまふ)5歳
……っ…

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
そっか…今までずっと…
辛かったな…苦しかったな…

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
逃げ場がない、味方がいないのは
俺も同じだったから真冬の気持ち
痛いほど…よくわかるよ……っ

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
お前はまだ5歳で幼いのに…っ
よく1人で頑張って耐えたな…
偉いぞ。

そう言いながらお父さんはぼくのことを
強く抱きしめてくれた。
相川真冬(まふまふ)5歳
っ!!…

相川真冬(まふまふ)5歳

相川真冬(まふまふ)5歳
…ぅ…お…とぅ…さ…っ

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
いいよ、思いっきり泣きな。

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
今は、何も気にしないで
泣きじゃくっていいよ……
俺しかいないから……ね?

相川真冬(まふまふ)5歳
……っ…

相川真冬(まふまふ)5歳
っ…ゔわぁぁぁん…っっ!!

ぼくは、そのお父さんの優しい声と
温かさで今まで抑えていた感情が
一気に溢れ出してきて泣いてしまった。
その間、お父さんは何も言わず
ただただ…ぼくのことを抱きしめ
頭を優しく撫で続けてくれた。
一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
ずっと…1人で頑張って
生きてきたんだな…っ

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
もう、大丈夫だからな…
真冬はひとりじゃないよ。

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
……落ち着いた?

相川真冬(まふまふ)5歳
うん、ありがとう…
お父さん…

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
いや…お礼を言うのは俺だよ。
話、聞いてくれてありがとう。

相川真冬(まふまふ)5歳
ううん……
ぼくが聞きたいって
言ったことだし…

相川真冬(まふまふ)5歳

相川真冬(まふまふ)5歳
ねぇ…お父さん…

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
ん?…

相川真冬(まふまふ)5歳

相川真冬(まふまふ)5歳
ぼくをたすけてくれて
ありがとう。

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
え?…

相川真冬(まふまふ)5歳
お父さんがぼくを……
あの地獄のような日々から
救ってくれた、たすけてくれた。

相川真冬(まふまふ)5歳
あの時、お父さんに
出会えてなかったら…
ぼく……今頃、こうして
生きてなかったと思う…

相川真冬(まふまふ)5歳

相川真冬(まふまふ)5歳
もしかしたら……
死んでたかもしれない。

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
っ!!…真冬…

相川真冬(まふまふ)5歳
だから…ぼく…
お父さんに出会えてよかった。

相川真冬(まふまふ)5歳
ありがとう…お父さん!

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
そんなの…俺も同じだよ。

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
俺は真冬に出会って…初めて
このろくでもない生涯でも
もう少しだけ……真冬と…
生きていたいと思えた。

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
真冬が俺の…
生きる意味になったんだよ。

相川真冬(まふまふ)5歳
っ!お父さん……

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
だから、俺も……
真冬に出会えて良かった。
俺の方こそ、ありがとう。

相川真冬(まふまふ)5歳
えへへっ…!///

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
…もうすぐ、下に着くな。

相川真冬(まふまふ)5歳
そうだね!

もしかしたら、ぼくらは…
似たもの同士だったのかもしれない。
毎日、辛くて、苦しくて
死んでしまいたい日々を
ただただ…必死に生きていた。
そんな日々の中でこんな風に
同じ痛みを持った、心を許せる人を
ぼくらはずっと…
探し求めていたのかもしれない。
相川真冬(まふまふ)5歳
(やっと…出会えたんだ。)

一ノ瀬彼方(そらる)お父さん
(やっと…見つけられた。)

ぼくらは観覧車が下に降りてからも
ずっと手を繋いでいた。