テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
かつて 「空」には 傲慢な程に輝く黄金の球体があったという
それは万物に等しく熱を与え 影を焼き払い、明日という時間を約束する 絶対的な神だった
けれど、今や空にあるのは 冷えきった銀色の円盤と
不吉な程に瞬く無数の 「死者たちの残滓」だけだ
街の広場
錆びついた蒸気時計の針が止まった場所で 誰かが力なく呟いた
人だかりの中心にいたのは この街で唯一「太陽の記憶」を語ることが出来た 一人の老人だった
彼は数百年続く薄明の中 先祖から受け継いだ「陽だまりの暖かさ」を 語り部として守り続けてきた
その老人の身体は、肉体の輪郭を失い 細胞一つ一つが硬質な結晶へと変質していく
「星結晶化現象」
この世界における、もっとも美しく もっとも絶望的な死の形
老人が完全に透き通り 一際強い光を放って夜空へ吸い込まれていったとき
人々は理解した
彼が持っていた「太陽の記憶」という 最後の熱源が
この世界から永遠に失われたのだと
星那
群衆の端で、“染夜 星那 ( そめや せな )” は 自分の指先を見つめていた
星那の指は、薄暗い街灯の光を透過していた
爪の先は既にガラス細工のように淡く 向こう側の景色を歪ませている
皐月
隣から、感情を削ぎ落としたような静かな声がした
“夜舞 皐月 ( やまい さつき )” だ
皐月はこの街の「器」であり 月の光に狂わされた人々の毒を
その身に肩代わりし続ける 孤独な調律師
星那
星那
星那は、透き通った指をそっと胸元に隠した。
星那
星那
星那
星那
星那
皐月
皐月は、星那の細い肩を引き寄せた
肌を合わせることは、皐月が溜め込んだ「月の毒」を 星那に伝染させる危険な行為
それでも、皐月は星那を離さなかった
皐月
皐月
皐月
皐月
その時 雲の切れ間から満月が顔を出した
狂気を孕んだ飛沫が、雨のように降り注ぐ
太陽を失った世界で、人々が獣のように叫び始める
「満月の刻」が始まろうとしていた
星那
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 染夜 星那 someya sena 自らを削って照らす 「灯火」 生まれつき身体が少しだけ透けている ( = 死が近い ) ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
皐月
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 夜舞 皐月 yamai satsuki 月光を吸う 「器」 「月の光を浴びた人の狂気」を 鎮める特殊な体質(調律師のような役割)を持つ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈