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セミの声がうるさい晴天の青の下
誰もいない学校の屋上 そこで2人は茶封筒を持っている
ヒナ
チヒロ
「せーのっ!」
薄暗い部屋をモニターの光が照らす
ヒナ
重いため息とキーボードの打鍵音
一人で過ごしていると 自分の出す音が鼓膜によく響いて うんざりする
掲示板やらSNSにひきこもって… 私なにしてんだろ
気を紛らわす 出来ることはそれだけ
カーテンを締切った薄暗い部屋の隅に 使い込んで汚れた画材のセットが 乱雑に放られていた
画面の見すぎで疲れた目をこする
ヒナ
ヒナ
夏休みに入ってから、 家を出る事なんてほぼなかった
見上げると、絵の具を空に ぶちまけたように青い空に、入道雲が 浮かんでいる
でも 昔とは見え方が違った 鮮やかではなくて、色あせていて
夏ってこんな感じだったっけ?
全てのものが、くすんで見える 写真の彩度を落としたように
チヒロといた時は…もっと
そんな考えが浮かんで顔が歪む
ヒナ
ヒナ
ベッドの枕元にしゃがみこむと ちょうど正面に青い絵が立てかけてあった
なんで私こんな馬鹿な事してるんだ 全部私に才能が無いから それだけの話なのに
チヒロ
チヒロ
ヒナ
チヒロ
チヒロ
チヒロ
ヒナ
チヒロと私は 小さい頃、お絵かき教室で出会ったん だっけな
私達…よくふたりで絵のコンクールに 参加してはいつも最優秀賞取ってたっけ
昔は両親や教室の先生に 「2人は天才なんだね」
そう言われていて
結局のところ私は、天才なんかじゃないし 才能も無かった 3年前、それははっきりと結果として 突き付けられた
落選。 あの封筒を開けた日、ヒナだけが 落選をした
あの絵を見る度に 嫌な思い出がこみ上げてくる
いっその事壊そう 消してしまおう 何度も考えた なのになんでだ
どうしてあの絵を消そうとすると 涙が止まらないんだ
手に持っていたナイフを絵の前で落とす
ヒナ
目をつむって開いた時、 ヒナが横たわっていたのは 暗い部屋ではなく、陽の光の下だった
気がついたときには横たわった状態で 大の字になり、 冷たい水に背中を濡らしている
近くで水が波打つ音や、 カモメの声が聞こえた
空がやたら、青く眩しい 陽の光の眩しさに思わず薄めになる
なに…ここ…
服に染み込み這い上がる冷たい海水に 思わずびっくりして体を起こす
シルク
雲と青空を反射して光り輝く水面に うさぎが浮かんでいる
ヒナ
シルク
そう名乗るシルクハットを被った 真っ白なうさぎは、 どうぞよろしく、と言うように 帽子を脱いでおじきした
ヒナ
シルク
ヒナ
シルク
シルク
シルク
ヒナ
!!
昨日、とある掲示板でみた
1名無し:最近よく聞く、レモンの都市伝説知ってるか
2名無し:なんそれ、情報カキコ求む
3名無し:この季節になると、突然レモンの匂いがして その匂いを嗅ぐと自分の1番思い入れがあるもの に関わる異世界に飛ばされるんだと
3名無し:明らかにガキの嘘じゃねえか、ねんまつ
4名無し:続けるわ それでな、大半はその世界から 帰って来たがらないらしいんだと
5名無し:釣り宣言まだ?ガキの嘘に時間とって損した
6名無し:5<<<お前舐めんなよぶち××ぞ
7名無し:どうして帰ってこない 奴の理由知ってるんですかね…?
ヒナ
シルク
ヒナ
シルク
シルク
シルク
シルク
ヒナ
ヒナ
シルク
シルク
シルク
シルク
シルク
ヒナ
シルク
ヒナ
シルク
ヒナ
ため息が出るほど青くて鮮やかな場所だ
椅子に座って、白い街から景色を眺めて 物思いにふける
最初に居たあの水の平原は どこまで行っても 水深が深くなっていくことはなく
空と地平線が繋がっているように見える程 限りなく広がっていた
シルク
シルク
白い丸テーブルにごろごろしている シルクハットを被ったうさぎの 手を掴んだら…
いつの間にかこの白い街に飛ばされていた
水平原にぽつんとたたずむ白い街は まるで真夏の入道雲のように巨大だった
人は誰も住んでいないそうで、 白うさぎと他のウサギが数匹住む 場所なんだとか
街の中心に行けば行くほど 標高は高くなっていき、 中心に行くための階段の横には綺麗な水が 流れている
そしてこの街の中心にあるのが 白い椅子と丸いテーブル
ヒナ
シルク
ヒナ
シルク
シルク
「君が絵に描いた場所でしょ!?」
ヒナ
なんで思い上がった
なんで少しでも期待した
なんで………
ヒナ
チヒロの隣で 偶然コンテストに勝ち続けただけの 凡人だろ私は
ヒナ
もう辞めよう
ヒナ
ヒナ
シルク
シルク
シルク
ヒナ
そう言うとうさぎは帽子から キャンバスを取り出す それはヒナが書いた絵
シルク
シルク
ヒナ
シルク
気が付けばナイフを手放して 階段を下っていた
壊せば楽になる…なれる…
絵を描くこと、辛い記憶 それ全てのしがらみを断てるのに
壊したら全部無くなるのに…!