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ミサコ
カズヤ、ナルミさん。ヒトシはもう寝たかしら？
ナルミ
えぇ。お義母さんの家から帰ってきて疲れたからか、早めにぐっすり寝てしまいました
ナルミ
お義母さん、夏休みの間ヒトシを預かってくれてありがとうございます
カズヤ
ありがとうなお袋。ヒトシの奴、ヤンチャで疲れたろ
ミサコ
そんなことないわ。よくお手伝いもしてくれて、とってもいい子だったわよ
ミサコ
それよりね、あなた達に話しておきたいことがあるの
ミサコ
本当はヒトシを引き取りに来た時に問い詰めたかったんだけど、
ミサコ
子供の前で話すわけにはいかないことだから…
カズヤ
いったいなんだよ
ミサコ
ナルミさん、ヒトシは、カズヤの子供ではないんじゃないの？
カズヤ
おい、お袋！
ナルミ
何言ってるんですかお義母さん、ヒトシは、絶対にカズヤの子供ですよ！
ミサコ
でもね、ヒトシはカズヤには全然似てないし、
ミサコ
あなた達の間には生まれない筈の血液型なのよ
ナルミ
確かにそうですけど…でも、血液型が違うこともあるってカズヤが…
ミサコ
私もそう思って、ヒトシを預かってる間に、
ミサコ
ヒトシと私でDNA鑑定をしたのよ
ミサコ
結果、血の繋がりはなかったわ…
ナルミ
そんな…何かの間違いです！
ミサコ
カズヤが私の産んだ息子であることは間違いない
ミサコ
ナルミさん、もしヒトシが他の男の子供だというのなら、
ミサコ
私は、あなたを許すことはできないわ
ナルミ
誤解ですお義母さん！私は、カズヤを裏切ることは決してしていません！
ナルミ
もしかしたらどこかで、取り違えが起きたのかもしれません
ミサコ
そう言われても、ヒトシとナルミさんはよく似ているし、私とカズヤも同じよ
ミサコ
それに私は、諸事情で病院で産んではいなかったの
ミサコ
念のためあなた達も交えて、もう一度DNA鑑定を…
カズヤ
やめてくれお袋！
ミサコ
カズヤ？
カズヤ
ヒトシは俺の子だ！俺はナルミを信じる！
カズヤ
俺は二人を愛してるんだし、検査結果がどうだろうと何も問題ない！
ミサコ
落ち着いてカズヤ。別にナルミさんが浮気したと決めつけてるわけじゃないの
ミサコ
改めて確かめてみましょう
カズヤ
その必要はない！俺達のことはお袋には関係ないだろ！
ミサコ
そう、勝手にしなさい
ミサコ
関係あると思ったから、ヒトシを預かってあげたんだけどね…
ナルミ
お義母さん、本当に私浮気なんかしてません！
ミサコ
もういいわ。私ももう寝るから。おやすみ
～数時間後～
カズヤ
お袋、まだ起きてるか？
ミサコ
えぇ…結局眠れなかったわ
ミサコ
ナルミさんは？
カズヤ
随分動揺して泣いてたよ。俺が落ちつけたけど
カズヤ
今、ヒトシのそばにいる
ミサコ
そう…
ミサコ
私だって、ナルミさんが托卵したとは思いたくないのよね。そんな人だと思えないもの
ミサコ
やっぱり取り違えなのかしら…
カズヤ
そのことなんだけど、俺、お袋に打ち明けなきゃいけないことがある
カズヤ
ヒトシは、確かに俺の子じゃない
カズヤ
ナルミと、他の男との間に生まれた子なんだ
ミサコ
なんですって！？ナルミさん、やっぱり浮気してたの！？
カズヤ
違うんだ！ナルミは悪くない！
ミサコ
何？どういうこと？
カズヤ
俺、実は特殊な性癖持っててさ、
カズヤ
寝取られ好き、ってやつなんだ
ミサコ
は？寝取られ、って…
カズヤ
たしか、妻が他の男と寝ていたら興奮するとかいうもの…？
カズヤ
そうなんだ。それに、睡眠薬を飲ませてするのも好きだった
カズヤ
それで昔、掲示板で知り合った性癖仲間たちを家に呼んで、
カズヤ
睡眠薬を飲ませて眠ったナルミを、襲わせたんだ…
ミサコ
なんですって！？じゃあヒトシは…
カズヤ
その時に出来た子供だと思う
カズヤ
だってナルミは嫌だって言うだろうし、こうでもしないと性癖を満たせなかったんだ！
カズヤ
ナルミはずっと、ヒトシを俺の子だと思って育ててる
ミサコ
そんな…嘘でしょう！？
ミサコ
あんた、自分が何をしたのかわかってるの！？
ミサコ
ナルミさんになんて酷い、残酷なことを！！
カズヤ
だけど、お袋が変なことに気付くまでは何も問題なかったんだ！
カズヤ
ナルミも傷つかず、俺達家族は幸せだったんだよ！
ミサコ
私のせいだって言うの！？
ミサコ
あんた、本当に最低よ！気持ち悪い！！
カズヤ
今更そんなこと言ったって仕方ないだろ
カズヤ
それより、ナルミはお袋の言葉に本当に傷ついてるし、
カズヤ
ヒトシの出自に対して疑問を持って調べたがってる
カズヤ
俺が『気にすることなんかない。ヒトシは俺達の子だ』と言って止めたけど
カズヤ
なぁお袋、ナルミに『検査結果は間違いだった』って言ってくれないか？
ミサコ
あんた、自分の犯行を隠すのに協力してほしいって！？
カズヤ
だってそうするしかないんだよ！
カズヤ
それともまさか、ナルミに知らせないよな！？そんなことしてもナルミが傷つくだけだ！
カズヤ
今のまま知らなければ俺達は幸せで、
カズヤ
全てが丸く収まるんだ！
カズヤ
なぁお願いだ、一言フォローしてくれるだけでいいんだよ
ミサコ
もうやめて！
ミサコ
私、どこで息子の育て方を間違えたんだろう…一生懸命育ててきたつもりなのに…
カズヤ
お袋、本当にごめん
ミサコ
私に謝らないでちょうだい
ミサコ
もう、どうすればいいんだろう…
～翌日～
ヒトシ
おばあちゃん、ずっとお世話してくれてありがとう！
ヒトシ
オレ、カブトムシとったりして、とっても楽しかった！
ミサコ
そう、よかったわね…パパとママはどうしてる？
ヒトシ
なんかママ、元気がないの。パパもなんか変だし
ミサコ
そっか…
ヒトシ
そういえばオレ、パパのつくえで変な薬見つけたよ
ヒトシ
パパは、よくねむれる薬だって言ってた
ミサコ
えっ…眠れる薬？
ヒトシ
うん。でも、大人しかのめないからオレはだめだって
ヒトシ
オレも運動会や遠足の前とか、ねむれない時があるのになー
ヒトシ
おばあちゃんがねむれない時にあげるね！
ミサコ
まだ終わっていなかったのね…
ヒトシ
何のこと？
ミサコ
何でもないわ。ヒトシ、できるだけママに付いていてあげて
ミサコ
男の子なんだから、ママを守ってあげるのよ
ヒトシ
はーい
～数日後～
カズヤ
ナルミ！おいナルミ！どこにいるんだよ！ヒトシまでいないじゃないか！
カズヤ
お袋！ナルミとヒトシを知らないか！？
ミサコ
ナルミさんなら私のそばよ
カズヤ
へ？
ミサコ
あんた達はもうすぐ逮捕されるわ
カズヤ
逮捕って、お袋、なんで…
ミサコ
今夜、ネットの仲間たちとナルミさんを襲う気だったんでしょ
カズヤ
なんでそれを…
ミサコ
ヒトシが睡眠薬を見つけたのよ
ミサコ
また、ナルミさんを襲う気だったんでしょ
ミサコ
それだけじゃない。あんたと仲間達で、他の女性も襲ってるんじゃないかって気付いてしまった
ミサコ
悩んだけど、ナルミさんにすべて話したわ
カズヤ
な…！？
ミサコ
ナルミさん、凄くショックを受けていたわ。当然よね
ミサコ
それで嘘だと思いたくてあなたのスマホを調べたら、なんと、
ミサコ
ネットで知り合った仲間たちと一緒に今夜、ナルミさんを襲う計画を立てていたことがわかったのよ
ミサコ
だから睡眠薬を飲んで眠ったふりをして、
ミサコ
あなたが仲間を呼んでる間に、ヒトシと一緒に逃げたのよ。窓からね
ミサコ
そして、そばで待っていた私が二人を匿ったの
カズヤ
そ、そんな…
ミサコ
あんた達はもうすぐ捕まるわ
カズヤ
捕まる…！？まさか、通報したのか！？
ミサコ
えぇ。逃げても無駄よ
ミサコ
家の中には監視カメラもあるし、
ミサコ
さっきドアや窓が開かないように細工もした
ミサコ
こちらには、あんた達のやり取りを記録した証拠もあるのよ
ミサコ
ナルミさんが吐き気を堪えながら、一生懸命記録してくれたの
ミサコ
これ以上被害者が出てほしくない…って
カズヤ
なんで…なんでそんなことするんだよ！！
カズヤ
息子を警察に売るのかよ！！
カズヤ
母親なら、俺の味方をしてくれよ！！
ミサコ
黙りなさい！！あんたは裏切ったのよ。ナルミさんのことも、私のことも
ミサコ
そして、ヒトシのことも
カズヤ
うるさい！お袋が俺の言った通り黙って、なかったことにしてくれたら、
カズヤ
そしたらナルミも誰も傷つかずに済んだんだ！
カズヤ
今回のことだってそうだ。お袋に話したことで、あの時の興奮を思い出したから…
カズヤ
それさえなきゃもう一度ナルミを襲おうなんて考えなかった
カズヤ
お袋のせいなんだよ！
ミサコ
…もう、救いようがないわね…
ミサコ
それにあんた達、ナルミさん以外の女性にも同じことしてるじゃない
ミサコ
写真や動画を共有し合って盛り上がってたらしいわね
ミサコ
その中の誰と、誰の奥さんなの？
カズヤ
誰でもいいだろ！
カズヤ
お袋が余計なことしなきゃ、俺達は楽しいことがずっとできたし、
カズヤ
ナルミもその人達も何も知らずに幸せでいられたんだ！
カズヤ
誰も傷ついてなかったんだから、俺達は悪いことなんかしてない！！
ミサコ
ここまで沢山の人を傷つけておいて、まだそんなこと言うのね…
ミサコ
その女性達の中には、睡眠薬を飲まされ襲われたことで
ミサコ
身体的ダメージを受けた人も、ナルミさんのように
ミサコ
あらぬ疑いをかけられた人もいるかもしれない
ミサコ
あんた達は、それをわかってるの！？
カズヤ
畜生…納得できねぇよ！
カズヤ
ナルミと話させてくれ！
カズヤ
そっちにいるんだろ！
カズヤ
さっきからナルミから返事が来ないし、既読もつかないんだ！
ミサコ
ナルミさんは、もう二度とあなたとは話したくない、顔も合わせたくないそうよ
ミサコ
LINEグループも抜けてるし、あなたとのLINEもブロックしてるんですって
ミサコ
ずっと泣いてて、話をするどころではなさそうだけど
カズヤ
なんでだよ…ナルミだって子供産ませてもらって幸せだったじゃねぇか
カズヤ
だったら、許してくれたっていいだろ！
ミサコ
それは、合意の上で出来たあんたの子だと思ってたからよ！
ミサコ
今となってはヒトシがどうなるかはわからないけど…
ミサコ
もしナルミさんが育てられなくなっても、私が責任もって育てるわ
カズヤ
ふざけんな！
カズヤ
お袋が気付かなきゃ何も問題なかった
カズヤ
俺達はただ、楽しみたかっただけなのに、なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだよ…！
ミサコ
自分たちの楽しみのために、自分の奥さんを犠牲にするなんて、クズ以外の何物でもないわ
ミサコ
ヒトシは絶対に、あんた達みたいな子にはさせない
ミサコ
刑務所の中で、自分たちのしたことの罪深さを思い知りなさい！
～後日談～
ミサコ
その後、カズヤと仲間の男達は残らず逮捕されました
ミサコ
私達が証拠として保管していた以上の余罪も出てきて、
ミサコ
カズヤ達は手口の悪質さから、懲役25年の実刑判決が下りました
ミサコ
ナルミさんは感謝してくれていますが、私は逆に申し訳なさでいっぱいです
ミサコ
托卵を疑い責めてしまったことも、息子をあんな風に育ててしまったことも、
ミサコ
そして…真実を知らせてしまったことも
ミサコ
今でも、迷いがあります
ミサコ
自分のしたことは本当に正しかったのだろうか
ミサコ
カズヤの言った通り、全てをなかったことにした方が、
ミサコ
誰も傷つかなくて良かったのではないかと
ミサコ
それでも、過去に戻ることはできません
ミサコ
救いは、ナルミさんがヒトシの出自を知って、それでも
ミサコ
『ヒトシは可愛い息子だからこれからも変わらず育てていく』と言ってくれたことです
ミサコ
今では向こうのご両親の協力の下、ヒトシを育てているそうです
ミサコ
私も、ヒトシの子育てに関しては、ナルミさんの許してくれる限り
ミサコ
最大限の協力を惜しまないつもりです
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
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