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森は、昼でも暗い。
光は地面に届く前に、葉へと吸い込まれて消えてしまう。
湿った土の匂い。
濃すぎる緑の気配。
その奥に、柊の村はあった。
地図に載らない。
電波も通らない。
そして、村の掟だけが、やけに鮮明だった。
2×××年8月16日
柊白蓮
柊白蓮
柊白蓮
穏やかな声
いつもと同じ調子
けれど、その優しさは、逃げ場のない拒絶のように揺るがない
柊白杜(幼少期)
柊白杜(幼少期)
幼い白杜は畳の上で正座をし、指をきゅっと握った
反抗ではない、 ただの、まっすぐな疑問だった
悪いことをしていないのに、なぜ閉じ込められているのか
蒼玄は、分厚い書物を閉じる
古びた表紙に刻まれた文字
“血筋の記録”
それは、柊の一族が背負ってきた、呪いの履歴だった
柊蒼玄
柊蒼玄
柊白杜(幼少期)
柊蒼玄
柊蒼玄
白蓮が白杜の髪を撫でる
その手は温かい
なのに、世界はひどく冷たかった
柊白蓮
柊白蓮
白蓮は、そこで言葉を探した
探すという行為そのものが、答えだった
柊白杜(幼少期)
柊白蓮
柊白蓮
柊白蓮
白杜は、何も言えなかった
柊白杜(幼少期)
それなのに、怒りも湧かない。
ただ、胸の奥が静かに冷えていく。
そのとき、障子の向こうから、小さな声がした。
?
紫苑だった。
柊紫苑(幼少期)
白杜より少し小さい、暗い髪の少年。
睫毛が長く、泣いたあとみたいに、いつも目が少し潤んでいる。
白杜は立ち上がり、障子を開けた。
柊白杜(幼少期)
柊紫苑(幼少期)
その言葉が、ただの我儘ではないことを、白杜は知っていた。
兄弟は一度だけ、興味本位で村の外へ出たことがある
2×××年4月5日
その時に浴びた視線
好奇心
恐れ
拒絶
あの混ざり合った、あの目
白杜は紫苑の手を握った
指先が冷たい
柊紫苑(幼少期)
柊白杜(幼少期)
柊白杜(幼少期)
柊紫苑(幼少期)
柊白杜(幼少期)
白杜は、無理に笑った
柊白杜(幼少期)
柊白杜(幼少期)
柊白杜(幼少期)
紫苑の目が、少しだけ輝いた
柊紫苑(幼少期)
――次の瞬間だった
罵声が飛び交った
石が転がる
缶が地面を叩く
村の外の人A
村の外の人B
村の外の人C
白杜は、とっさに紫苑を抱き寄せ、覆いかぶさる
柊白杜(幼少期)
柊白杜(幼少期)
柊白杜(幼少期)
背中に蹴られた衝撃
ドタッ
白杜は倒れた
村の外の人D
村の外の人D
それは、はっきりとした大人の声だった
そして、顔に殴られた衝撃
村の外の人E
村の外の人D
笑い声
暴力
正義の顔をした残酷
その時は、幸い、白杜と紫苑がいないことに気づいた両親が駆けつけ、 それ以上の被害は起きなかった
柊白杜(幼少期)
白杜の中で、何かが確かに壊れた
2×××年8月16日
柊蒼玄
柊蒼玄
柊蒼玄
柊蒼玄
柊白杜(幼少期)
白杜は、俯いたまま答えた
その日の夜
村の集会所に、大人たちが集まる
蒼玄は森と同調し、遠くの気配を探る
白蓮は生命循環で、結界を維持する植物へ力を流す
長老
長老
長老
血筋狩り
戦争で植物系の血筋に家族を奪われた者たちの末裔
復讐と正義を混ぜ合わせた、歪んだ集団
彼らは柊を、 “未来の災厄”として狙う
そのころ、白杜は紫苑の震える背中をさすっていた
柊白杜(幼少期)
柊白杜(幼少期)
柊白杜(幼少期)
柊紫苑(幼少期)
その一言が、白杜の胸に灯る
守る理由が、はっきりと形を持つ
その瞬間
森の奥で、低い音が鳴った
獣の咆哮のような
合図のような
風が逆流する
葉がざわつく
蒼玄の顔色が変わった
柊蒼玄
柊蒼玄
柊蒼玄
白蓮が立ち上がる
袖が揺れ、白い花弁が一枚、床に落ちた
柊白蓮
柊白蓮
柊白蓮
柊白杜(幼少期)
柊白蓮
柊白蓮
母の声は、初めて震えていた
白杜は、その震えを忘れない
それが
すべてを奪う夜の、前触れだった
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