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七夕の夜
星空の下、君の隣で
◇
◇
水谷 希咲
逢えたかな
そう、彼女は静かに呟いた.
高峰 雄也
え？
何のことだか解らなくて
彼女の方を見れば、彼女は
そっと空を見上げていた.
水谷 希咲
織姫さまと彦星さま
そんな彼女の言葉に
デジタル時計の日付を見て
なるほどとひとり納得した.
水谷 希咲
…でも、可哀想だよね
そう言って、彼女は俺の方を
見て "ね？"と首を傾げる.
そんな可愛い彼女は
いつも言葉足りなくて.
その度、俺は彼女の言葉の
意味を知ろうと
頭をフル回転させる.
高峰 雄也
1年に1度だけだから？
水谷 希咲
うん.
高峰 雄也
確かに、もう少し
高峰 雄也
逢わせて
あげてもいいのにね
あげてもいいのにね
水谷 希咲
そうかな？
水谷 希咲
1年に1度だけしか
水谷 希咲
逢えないなら、いっそ
水谷 希咲
二度と逢えない方が
水谷 希咲
いいと思うなぁ
そう言って、コトンと彼女が
俺の肩に寄り掛かる.
心地好い温もりに
自然と頬が緩む.
高峰 雄也
どうして？
水谷 希咲
だって、もしさ
水谷 希咲
離れてる間にどっちかに
水谷 希咲
好きな人が
できちゃったら
できちゃったら
水谷 希咲
どうする？
高峰 雄也
好きな人って
水谷 希咲
だってわからないよ
水谷 希咲
人の心なんて
高峰 雄也
そんな、夢のないこと
高峰 雄也
言わないの
そう言って今度は俺が
彼女の頭に顎をあてた.
水谷 希咲
私だったら天帝の目を
水谷 希咲
盗んで電車でもバスでも
水谷 希咲
タクシーでも自転車でも
水谷 希咲
なんでも使って
水谷 希咲
こっそり彦星に逢いに
水谷 希咲
行っちゃうかも
しれないなぁ
しれないなぁ
高峰 雄也
…それは彦星も驚く
高峰 雄也
天真爛漫な織姫だな
水谷 希咲
そしたら彦星喜ぶかな？
高峰 雄也
…そりゃ、
嬉しいんじゃない？
嬉しいんじゃない？
高峰 雄也
でも俺が彦星だったら
高峰 雄也
自分の方から逢いに
高峰 雄也
行くけどね.
高峰 雄也
全速力で走って
そう言ってみせれば
彼女は驚いたように少し
眉を上げて、それから
"素敵な彦星だね"と
クスクスと笑った.
水谷 希咲
ねぇ、
高峰 雄也
ん？
水谷 希咲
逢えたといいね
高峰 雄也
逢えたよ、きっと
水谷 希咲
そうだね
そんな彼女との他愛ない会話に
"幸せだな"と思わず呟いていた.
end.
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