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眼前の「僕」は、振り返ることなく 彼女に声をかけた。
その声はまぎれもなく「僕」だ。
呆然としている僕…… 否、「僕」達が立ち止まっている間に
彼女は人波にのまれ どんどん見えなくなっていった。
「僕」は穏やかに笑いながら 口を開いた。
そんなことがわかるんだ、 そう続けようとした。
先程からドキドキと煩かった心臓が 急にドッと大きく音を立て 痛いほどの圧力が襲いかかる。
ぐっと堪え、数回 ゆっくり息を吐くとおさまった。
「僕」は、すべて知っているのだろう。
穏やかに、それでも 真実を突きつける姿勢は変わらない。
祭りの喧騒が遠ざかる。 冷や汗が背中をつたっていった。