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空はいつだって灰色だった。
青空なんて 誰がいつ最後に見たのだろう
それすらも記憶に 記録に 残っていない
機構都市 《ノア・オーレ》
その都市では 全てが灰色に染まり
金属の霧が空気の隅々まで 染み込んでいる
それがこの都市では 当たり前
けれど、彼は時々 それは不自然な事ではないかと 疑い始めた
彼は第3層 《労働区(整備・供給)》で働く 整備士のカイル・イシュト
毎日、回収ドローンや昇降ユニットの 保守を担当し
淡々と灰色に染まった都市を 眺めながら 故障した部品を交換してゆく
生まれつき冷静沈着と評価され 感情制御装置《レギュレイター》の 適応率も高く 優秀な市民だった
少なくとも他人から見れば
《レギュレイター》が脳内に 警告音を送ってくる
危険値ギリギリの数値が 腕に付けている機器に 点滅する度
彼はその気配を飲み込んだ
抑え込んで 忘れたフリをした
だが、それでも確かにあった
胸の奥で疼く何かが。
そんなある日
昇降ユニットの点検整備を 終えたカイルは 指定ルートを外れた 場所へと足を踏み入れた
理由は分からない。
ただそこに行けば 何かある気がして。
錆び付いた扉 使われなくなった旧型配電室
そこに、彼女はいた
白髪の髪 虚ろながらも凛とした 光を宿す瞳
細身の体には都市市民の服ではない 旧型の防護服が まとわりついていた
カイル
少女は無言のまま ゆっくりとこちらを見た
ルネ
名前を聞いた瞬間
カイルの《Reg》が 強く反応した
それは記録データに存在しない名前 彼女は《記録喪失者》だった
しかし彼女は《観察対象》だった為 処分する事はおろか 通報することは命令されていない
カイル
カイル
ルネ
ルネ
自身が《記録喪失者》で あるというのに 危険区域に立ち入っているというのに
彼女はそんな事 どうでもいいと言うかのように
《笑顔》で俺に話しかけてきた
それはこの都市では 存在しないはずの《会話》であり
そして、禁止されてきた《感情》
俺の制御装置が 警告音を鳴らす
心拍数の上昇 感情の活発反応 警告レベルに達する"違反兆候"
いつもなら抑え込んで 忘れたフリをするというのに
カイル
いつも知りたいと思っていた 胸の奥で疼く何かなのだろうか
カイル
有り得ないのだ
制御されているはずの感情が うねりを上げて膨らんでゆく
そして、俺は思ったんだ もう一度、彼女の《声》を 《笑顔》を聞きたいと。見たいと。
ルネ
ルネ
ルネ
ルネは俺にそう耳打ちをした
その瞬間 警告音が都市全体に鳴り響いた
《違反者検知》場所《放棄区》 直ちに排除を
ルネ
ルネ
そう言い残し彼女は 俺の元を去った
彼女との出会いが 全ての始まりだった
感情が害とされた空の都市で 忘れられた感情を巡る レジスタンスの物語
その第1歩は 灰色の中に立つ 1人の少女から始まった
どもクオンっす
また連載始めちまった( ᐛ ) 続かなかったらすんません
意味分からない部分も 多いかと思いますが この話の舞台設定とかは また出します