ひな
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・学生パロ
ひな
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休み時間の度に僕の机まで走ってくるいむくん
初兎
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いむくんと僕は幼馴染で、親友
幼稚園からずっと一緒で、高校も同じところに進んだ
初兎
そう、高校は、僕が合わせた。小学校の時から、委員会も、クラブも、部活も、選択科目も、全部
初兎
いむくんに、ずっと叶わぬ恋をしている
いつから好きだったのかなんてもう分からない
気づいたらいむくんのことを目で追って、ずっと隣に居たいと、そう思うようになっていた
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初兎
別に両思いになりたい、なんて高望みしているわけじゃない
せめてあと3年、卒業までただいむくんの1番近くにいられたら
そう思っていた
初兎
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パンケーキを切り分けながら、いむくんが唇をとがらせた
初兎
聞き間違いであることを願いながら強ばる頬を無理やり動かして笑顔を作る
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とろり、とシロップがパンケーキから零れた
初兎
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初兎
初兎
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頬を染めて話すいむくん
初兎
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分かっていたことだ。僕がいむくんの傍に居たくても、いむくんが傍に居てくれるとは限らないなんて
初兎
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顔を見ただけで、もう答えが分かってしまった
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初兎
初兎
表情が崩れないように、
いつもと同じように、笑顔を作る
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初兎
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辞めておけ、脳がそう警報を鳴らす
初兎
初兎
いつから、こんなに嘘が上手くなったのだろう
いむくんがパッと顔を綻ばせる
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初兎
僕がなりたかったのはそれやないけど
でもいむくんが幸せなら、それでいっか。パンケーキを美味しそうに頬張る姿を見つめながら、僕はそっと視線を落とした
手伝う、と言ってもいむくんが言った通り大したことは頼まれなかった
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初兎
いつもと同じように一緒に登校して、授業受けて、昼も一緒に食べて、また一緒に帰る
初兎
初兎
お昼に1度、勇気を振り絞ってそう言ったことがある
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それでも一向に僕から離れないし、女の子と一緒に居るのを見たりもしない
初兎
ただここまで言い切るということは、話などは出来ているのだろう
初兎
初兎
初兎
1人納得してまたもぐもぐと口を動かす
初兎
初兎
そういえば今日は朝から休み時間の度に読んでいた
ブックカバーのせいでタイトルまでは見えない
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初兎
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思わず吹き出す
初兎
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初兎
笑いすぎて出てきた涙を拭う
初兎
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初兎
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初兎
初兎
初兎
話を聞く前と特に変わりのない関係になんだか酷く安心した
初兎
しかしこれが、いむくんの変化の発端だった
初兎
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朝、僕の前に現れたいむくんは髪をさっぱりと切っていた
初兎
初兎
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初兎
嬉しそうな、照れくさそうな笑顔を見て、チクリと胸が痛む
初兎
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かっこよくなりたいって言っとったもんな
いつもと違う後ろ姿を眺めながら思い出す
似合ってる。似合ってるけど、髪を切ったのが好きな子の為じゃなくて
初兎
浮かんでしまった考えを打ち消すように頭を振って学校までの道をまた歩き出した
それからいむくんは、色々なものを変え始めた
髪型、休日の服、靴、アクセサリー
全部が前とは違う
似合っていない、なんてことは無い むしろよく似合っていると思う
初兎
初兎
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初兎
笑いながらそう答えるいむくん。良かった、そう動いたのは口だけで
初兎
初兎
ドロドロした感情が幸せを願う気持ちを邪魔する
これ以上嘘を重ねる前に口を噤んだ
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教卓に腰掛けてぶらぶらと足を揺らすいむくんの前で委員会の仕事をする
初兎
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僕の隣にすとんと腰を下ろしたいむくんからは、いつもと違う匂いがした
初兎
すん、と鼻をならす
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自分でも匂いをかごうと体を揺らすいむくん
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初兎
「似合ってるで、かっこええよ」
いつもと同じようにそう言おうとした口はもう動かなかった
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初兎
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代わりに口から出たのは全く正反対の言葉
初兎
初兎
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自分の言ったことの最低さに気がついてハッと顔を上げた時、いむくんは唇を噛んで俯いていた
初兎
初兎
こんな顔をさせたかった訳じゃない
ただ僕は、
初兎
いむくんが、どんどん僕の知らないいむくんになっていくのが
嬉しそうに笑うその笑顔が、全部他の人のためだと思うと、悲しくて
僕には向けられない表情があると思うと悔しくて
初兎
初兎
初兎
いむくんに幸せになって欲しくて、
でもその隣にいるのが僕じゃないのがやっぱり嫌で、
素直に幸せを願えない僕が嫌いで、
うまく行かなきゃいいのに、ってずっと心の中で思ってる自分が大嫌いなだけ
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初兎
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初兎
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初兎
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いむくんの両手が僕の顔をぐっと持ち上げる
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初兎
慌てて顔を擦ると確かに濡れた感覚
初兎
初兎
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初兎
優しくされると余計に辛くて少し強く言う
初兎
初兎
初兎
顔を上げて、しっかりいむくんの目を見つめる
初兎
ずーっと前から見てきた瞳
背丈や容姿が変わっても、瞳だけはずっと同じなんだな、なんて当たり前のことを思う
初兎
初兎
初兎
長年の片思いも、そろそろ終わらせるべきだよね
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初兎
もう一度目を擦って微笑む
初兎
そう、素直に口から出た言葉は今度こそ本物だった
好きだったよ、それで、これからも大好き
大切な、僕の親友
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初兎
ようやく委員会の仕事が終わって、1人で帰っていた時
向こう側からいむくんが走ってくるのが見えた
初兎
風呂にでも入ったのか髪はまだ濡れていて、服は前にふたりで遊んだ時と同じものだった
初兎
初兎
肩で息をするいむくんに尋ねる
初兎
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初兎
ぱっとあげられた顔は夕日でなのか赤く染っていた
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聞こえてきた言葉に頭が真っ白になる
初兎
初兎
絞り出した声は僅かに震えていた
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初兎
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いむくんが笑う
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初兎
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じわ、と視界が滲んだ
初兎
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初兎
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初兎
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いむくんが親指で頬を伝った涙を拭ってくれる
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今度はいむくんから僕に目を合わせてくる
小さい頃からずっと、大好きな瞳
初兎
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初兎
答えると同時にぎゅ、と抱きつかれる
香水じゃない、僕の好きになったいむくんの香りがした
初兎
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拗ねたようないむくんの声
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尖らせた唇が可愛くて、愛おしくて 思わず吸い寄せられるように軽くキスをした
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初兎
目を閉じると唇に重なる暖かい温もり
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僕を抱きしめたまま こつん、と額を合わせていむくんが笑う
初兎
今度こそそう答えて、微笑んだ