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さよなら片思い

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さよなら片思い

1 - さよなら片思い

♥

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2022年07月24日

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ひな

⚠︎︎注意
・irxs
・BL
・💎🐇
・学生パロ

ひな

それでは!

-hotoke-

しょーちゃーん!

休み時間の度に僕の机まで走ってくるいむくん

初兎

そんな走ったらコケるでww

-hotoke-

だいじょーぶだって!!

-hotoke-

ねーねー!それよりさ、さっきの授業の……

いむくんと僕は幼馴染で、親友

幼稚園からずっと一緒で、高校も同じところに進んだ

初兎

(正確には…僕がいむくんに合わせたんやけど)

そう、高校は、僕が合わせた。小学校の時から、委員会も、クラブも、部活も、選択科目も、全部

初兎

(だって僕は)

いむくんに、ずっと叶わぬ恋をしている

いつから好きだったのかなんてもう分からない

気づいたらいむくんのことを目で追って、ずっと隣に居たいと、そう思うようになっていた

-hotoke-

あ!そうだ!!今日帰りにあの、駅前のパンケーキ食べたいー!初兎ちゃん一緒に行こ?

初兎

お!いいやん!僕も気になっとった!!

別に両思いになりたい、なんて高望みしているわけじゃない

せめてあと3年、卒業までただいむくんの1番近くにいられたら

そう思っていた

初兎

…え、?

-hotoke-

だーかーらー!ちゃんと話聞いててよ!!

パンケーキを切り分けながら、いむくんが唇をとがらせた

初兎

あ、ごめんごめんw何て?

聞き間違いであることを願いながら強ばる頬を無理やり動かして笑顔を作る

-hotoke-

もー、あんま何回も言うの、僕だって恥ずかしいんだけど…

-hotoke-

好きな人が出来たんだって!

とろり、とシロップがパンケーキから零れた

初兎

…へ、ぇ…おめでとう…?

-hotoke-

おめでとうって何ww

-hotoke-

好きな人が出来たって言っただけなんだけどw

初兎

あ、そかそかww

初兎

いや!だって初めてやない?いむくんに好きな人ができるなんて

-hotoke-

うーん、実は結構前から好きだったんだけどね…

頬を染めて話すいむくん

初兎

そうなん?教えてくれたら良かったのに

-hotoke-

恥ずかしかったの!!!

分かっていたことだ。僕がいむくんの傍に居たくても、いむくんが傍に居てくれるとは限らないなんて

初兎

で?なんでそれこのタイミングで僕に言ったん?

-hotoke-

それは…

顔を見ただけで、もう答えが分かってしまった

-hotoke-

告白、しよっかなって思ってて…

初兎

…っ、いいやん!!

初兎

いむくんならきっとおっけー貰えるって!

表情が崩れないように、

いつもと同じように、笑顔を作る

-hotoke-

いやでも…告白するにはやっぱり今よりかっこよくならないとダメかなって

-hotoke-

だ、だから!初兎ちゃんに手伝って欲しいんだよね!

初兎

…手伝う?

-hotoke-

あ!そんなおっきい事じゃなくてね!!

-hotoke-

例えば僕が何かしたら、それに対する感想欲しいとか!そーゆー感じ!!

辞めておけ、脳がそう警報を鳴らす

初兎

…うん、分かった。ええよ

初兎

僕、いむくんのこと応援しとるから

いつから、こんなに嘘が上手くなったのだろう

いむくんがパッと顔を綻ばせる

-hotoke-

ありがとう初兎ちゃん!!

-hotoke-

さっすが僕の親友!

初兎

(親友、か…)

僕がなりたかったのはそれやないけど

でもいむくんが幸せなら、それでいっか。パンケーキを美味しそうに頬張る姿を見つめながら、僕はそっと視線を落とした

手伝う、と言ってもいむくんが言った通り大したことは頼まれなかった

-hotoke-

初兎ちゃんおはよ!!

初兎

おはよ、いむくん

いつもと同じように一緒に登校して、授業受けて、昼も一緒に食べて、また一緒に帰る

初兎

こんな僕と一緒に居ってええの?

初兎

その、好きな子と一緒に食べてきてもええんよ

お昼に1度、勇気を振り絞ってそう言ったことがある

-hotoke-

大丈夫!これでいーの!

それでも一向に僕から離れないし、女の子と一緒に居るのを見たりもしない

初兎

(大丈夫なんかな、いむくん…)

ただここまで言い切るということは、話などは出来ているのだろう

初兎

(…ああ)

初兎

(家帰ってから電話でもしとるんか)

初兎

(うちの学校の生徒とは限らないしな)

1人納得してまたもぐもぐと口を動かす

初兎

…?

初兎

あれ、いむくんそんな本なんか持っとったっけ?

そういえば今日は朝から休み時間の度に読んでいた

ブックカバーのせいでタイトルまでは見えない

-hotoke-

あー、これ?昨日買った

-hotoke-

ちょっと頭良さそうに見えない?

初兎

…知的アピール?

-hotoke-

そーゆーこと!!

思わず吹き出す

初兎

(そういうとこが既に知的じゃないんよなw)

-hotoke-

あー!なんで笑うの!?w

初兎

いむくんも笑っとるやんww

笑いすぎて出てきた涙を拭う

初兎

いむくんはそういうとこが可愛いんやから、そんなんせんでええのにw

-hotoke-

あ!何?褒めてくれてんの!?w

初兎

はいはい、今日もカワイイヨーww

-hotoke-

ありがとーww

初兎

(なんだ、こんなもんか)

初兎

(好きな人出来たって言っても、そんな急に関係変わることはないねんな)

初兎

(心配して損した…)

話を聞く前と特に変わりのない関係になんだか酷く安心した

初兎

(ちゃんといむくんのこと、応援できるようにならんと)

しかしこれが、いむくんの変化の発端だった

初兎

おはよー……

-hotoke-

どう…?似合ってないかな?

朝、僕の前に現れたいむくんは髪をさっぱりと切っていた

初兎

いや、似合ってるで

初兎

ちょっとウルフっぽくてかっこええやん

-hotoke-

…!かっこいい!?

初兎

(…ああ、そういうことか)

嬉しそうな、照れくさそうな笑顔を見て、チクリと胸が痛む

初兎

うん、かっこいいかっこいい

-hotoke-

やった!

かっこよくなりたいって言っとったもんな

いつもと違う後ろ姿を眺めながら思い出す

似合ってる。似合ってるけど、髪を切ったのが好きな子の為じゃなくて

初兎

(僕のためなら良かったのに)

浮かんでしまった考えを打ち消すように頭を振って学校までの道をまた歩き出した

それからいむくんは、色々なものを変え始めた

髪型、休日の服、靴、アクセサリー

全部が前とは違う

似合っていない、なんてことは無い むしろよく似合っていると思う

初兎

どうなん?最近

初兎

上手くいっとるの?

-hotoke-

うん!かっこいいって言ってくれるよ!

初兎

へぇ、良かったやん!

笑いながらそう答えるいむくん。良かった、そう動いたのは口だけで

初兎

(上手くいかなきゃいいのに、)

初兎

(失敗すればいいのに)

ドロドロした感情が幸せを願う気持ちを邪魔する

これ以上嘘を重ねる前に口を噤んだ

-hotoke-

ねえ初兎ちゃんまだおわんないのー?

教卓に腰掛けてぶらぶらと足を揺らすいむくんの前で委員会の仕事をする

初兎

いむくんが手伝ってくれたらもっと早く終わるんやけどな〜…

-hotoke-

えー…じゃあ手伝う

僕の隣にすとんと腰を下ろしたいむくんからは、いつもと違う匂いがした

初兎

…柔軟剤変えたりした?いつもと違う匂いする

すん、と鼻をならす

-hotoke-

あ!気づいた!?

自分でも匂いをかごうと体を揺らすいむくん

-hotoke-

ないちゃんに教えて貰って、香水、買ってみたんだよね!

-hotoke-

どう?

初兎

……、…

「似合ってるで、かっこええよ」

いつもと同じようにそう言おうとした口はもう動かなかった

-hotoke-

…初兎ちゃん?

初兎

やっぱ、似合わないんやない?

-hotoke-

え…

代わりに口から出たのは全く正反対の言葉

初兎

なんか、ちょっと背伸びし過ぎっていうか…

初兎

前の方が普通に良かったと思う

-hotoke-

そっ…か

自分の言ったことの最低さに気がついてハッと顔を上げた時、いむくんは唇を噛んで俯いていた

初兎

(違う、)

初兎

(違うのに)

こんな顔をさせたかった訳じゃない

ただ僕は、

初兎

(怖かったんや…)

いむくんが、どんどん僕の知らないいむくんになっていくのが

嬉しそうに笑うその笑顔が、全部他の人のためだと思うと、悲しくて

僕には向けられない表情があると思うと悔しくて

初兎

ごめん、

初兎

ごめん、嘘。冗談

初兎

ちゃんと似合ってるよw

いむくんに幸せになって欲しくて、

でもその隣にいるのが僕じゃないのがやっぱり嫌で、

素直に幸せを願えない僕が嫌いで、

うまく行かなきゃいいのに、ってずっと心の中で思ってる自分が大嫌いなだけ

-hotoke-

初兎ちゃん…?

初兎

冗談やから、ほんとにww

-hotoke-

そうじゃなくて…

初兎

ごめんごめん、そんな顔すると思わなかったんよw

-hotoke-

違くて、

初兎

かっこいいから安心してええよ

-hotoke-

初兎ちゃん!!

いむくんの両手が僕の顔をぐっと持ち上げる

-hotoke-

…なんで、泣いてるの?

初兎

…え?

慌てて顔を擦ると確かに濡れた感覚

初兎

あ、れ…?ごめん、なんでやろw

初兎

痛いとか何もないから、ほっといてええよ

-hotoke-

でも…

初兎

大丈夫やから!

優しくされると余計に辛くて少し強く言う

初兎

話の続きやけど、いむくんは、

初兎

そんないろいろ変える前から、ずっとかっこよかったよ

初兎

もちろん、変えてからもかっこいいけど

顔を上げて、しっかりいむくんの目を見つめる

初兎

(綺麗)

ずーっと前から見てきた瞳

背丈や容姿が変わっても、瞳だけはずっと同じなんだな、なんて当たり前のことを思う

初兎

今のいむくんなら大丈夫

初兎

俺が告白されたら絶対付き合うとるもんw

初兎

これは、僕がやっとくから。行ってきな、告白

長年の片思いも、そろそろ終わらせるべきだよね

-hotoke-

ありがとう、初兎ちゃん

-hotoke-

自信ついた。僕、言うね

初兎

うん

もう一度目を擦って微笑む

初兎

がんばれ

そう、素直に口から出た言葉は今度こそ本物だった

好きだったよ、それで、これからも大好き

大切な、僕の親友

-hotoke-

初兎ちゃん!!

初兎

…いむくん?

ようやく委員会の仕事が終わって、1人で帰っていた時

向こう側からいむくんが走ってくるのが見えた

初兎

(ああ、結果報告しに来てくれたんかな)

風呂にでも入ったのか髪はまだ濡れていて、服は前にふたりで遊んだ時と同じものだった

初兎

(せっかくかっこいい服買っとったんにww)

初兎

どうやった?

肩で息をするいむくんに尋ねる

初兎

告白、してきたんやろ?

-hotoke-

ううん!今から!!

初兎

今から!?

ぱっとあげられた顔は夕日でなのか赤く染っていた

-hotoke-

初兎ちゃん!

-hotoke-

ずっと、好きでした!!僕と付き合ってくれませんか

聞こえてきた言葉に頭が真っ白になる

初兎

…じょ、冗談きついってw

初兎

何?予行練習?

絞り出した声は僅かに震えていた

-hotoke-

ううん、冗談でも練習でもないよ

-hotoke-

本気

初兎

なんで…

-hotoke-

なんでって

いむくんが笑う

-hotoke-

だって僕が好きなのはずーっと初兎ちゃんだし

初兎

うそ、

-hotoke-

嘘じゃないよ

じわ、と視界が滲んだ

初兎

すきなひとができたから、かっこよくなれるようにがんばるって

-hotoke-

だって、初兎ちゃんかっこいいじゃん。告白するまでに負けないくらいかっこよくなりたかったんだもん

初兎

かっこいいって言ってくれてるって、いい感じだって

-hotoke-

初兎ちゃんかっこいいって褒めてくれてたじゃん。初兎ちゃんのことだよ?

初兎

じゃあ、ぜんぶ…

-hotoke-

そうだよ、全部初兎ちゃんのため

いむくんが親指で頬を伝った涙を拭ってくれる

-hotoke-

ね、初兎ちゃん、好きだよ

-hotoke-

僕と付き合って?

今度はいむくんから僕に目を合わせてくる

小さい頃からずっと、大好きな瞳

初兎

…っ、うん、

-hotoke-

…!ほんとに!?

初兎

うんって、いうてる、やん…w

答えると同時にぎゅ、と抱きつかれる

香水じゃない、僕の好きになったいむくんの香りがした

初兎

折角、かっこよくしてたのに戻して来たんや

-hotoke-

だって初兎ちゃんが前のがいいって言ったんだもん

拗ねたようないむくんの声

-hotoke-

初兎ちゃんがかっこいいって言うから頑張ったのにさ

尖らせた唇が可愛くて、愛おしくて 思わず吸い寄せられるように軽くキスをした

-hotoke-

あー!最初は僕からしたかったのに!

初兎

ごめんってwじゃあ、やりなおして?

目を閉じると唇に重なる暖かい温もり

-hotoke-

初兎ちゃん、好きだよ

僕を抱きしめたまま こつん、と額を合わせていむくんが笑う

初兎

僕も、好き

今度こそそう答えて、微笑んだ

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