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暇72
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あのあと俺といるまは
いふさんの提案を承諾し
彼を含めた3人で探索すべく
フロアのさらに奥へと足を進めていた
まあ
瓦礫で帰る道が封鎖されたから
進む以外の選択肢はなかったんだけど…
探索の道すがら
俺は3年間秘密にしていた
俺たちが図書館に通い続けた目的を
いふさんに話した
「詮索はしない」
「俺も一緒に行かせてくれ」
そう言ってくれた彼に対して
もう黙っていることなど出来なかった
いるま
いるまも特に口出しはしてこないので
俺と同じ思いだったのだと推測する
一階の探索は一通り終了
残念ながら
実験に関する有力な情報は得られなかった
だからといって
ここで立ち止まっているわけには行かない
次だ次
俺たちは上に続く階段へ足をかけた
二階はとても広かった
先程までいた一階は
小さめの部屋がいくつも並んでおり
少々入り組んだ構造だったのだが
そういったものはここでは見受けられない
だだっ広い空間に
柱が数本立ててあるだけの場所
迷子になる心配はしなくてもよいだろう
ただし
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いるま
ガラガラガラ………
足元には注意が必要なようだ
暇72
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一体何が起きたのか
どうやら俺は
足を踏み外したらしい
言い換えると
足を置いた部分の床が崩れ落ちたのだ
この建物は見て分かる通り老朽化が激しく
床が抜けやすい
歩くのも一苦労だ
一階にいたときに 天井が崩落してきた理由も納得できる
ちなみに
神経麻痺によって 体を自由に動かすことのできないいるまは
俺がおんぶしている
彼が何の問題もなく
この腐りきった床を進むのは不可能だ
歩くのに支障がない俺でさえ 落ちかけたのだから
俺が足を踏み外しそうになるたびに
彼は俺の髪を引っ張った
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ハゲるて!!
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いふさんは俺たちの少し先を歩き
足場を確認してくれている
彼がいなければどうなっていたことか……
彼には感謝してもしきれない
全てが終わったら
何かお礼をさせてもらおう
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暇72
無事に安全な場所まで渡り終え
いるまを降ろす
ここでも同様に
実験に関する情報は掴めなかった
よし、次だ
三階
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ガッシャーン!!
if
次だ
四階
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いるま
if
次
n階
いるま
いるま
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……………次
あれから
どれほど時間が経ったのだろう
俺たちは未だ
何の成果も得られずにいた
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いるま
if
体力は擦り減る一方
つ、疲れた……
ここが何階かですら分からなくなっていた
カツン
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ふと
壁にもたれかかった拍子に
何かに手が触れた
なんだ…?
金属のひんやりした感触
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ドアノブと思わしき金属を握り
捻る
暇72
暇72
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そんな声を捉えた直後
白い煙が瞬く間に部屋に充満した
いるま
辺り一面真っ白
自分の手すら視認できない
なんだコレ?
まさか
俺は起こり得る出来事の中で
最悪の場合を考える
敵襲?!
だとすれば
ほとんど動けない俺は確実に足手まといになる
これ以上彼等の手を煩わせるわけにはいかねぇ
どうしようかと考えあぐねていると
いふさんの声が
部屋に響き渡った
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暇72
なつが返事をする
いるま
俺は慌てながらも
彼に続いて言葉を返した
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確かに
動かないのが最善か…
何とか冷静になった俺は
考えを巡らせる
仮に敵襲だとしても
周囲に人間の気配はない
考えられるのは
罠か
下手に動けば罠にかかってしまうかもしれない
それこそ相手の思う壺だ
if
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俺は姿勢を低くし
ぐっと耐える
いふさんの言う通り
白い煙は数秒で消滅した
罠を警戒して辺りを見渡すが
それらしいものは見当たらない
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いふさんがこちらへと駆けて来る
いるま
いるま
if
if
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全くだ
本当に何だったのだろう
俺はゆっくりと立ち上がる
そういえば
先程からなつの姿を見かけない
どこ行った?
いるま
いるま
いふさんにそう問うたときだった
ガタン
いるま
if
俺たちは一斉に
物音が聞こえた方向へと目を向ける
向けた先には
不自然に開いた扉があった
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いるま
俺は頷き
彼の後を追う
いるま
眩し
扉の向こうは
眩(まばゆ)い光で溢れかえっていた
ここだけ別次元なのではないかと思えるほど
光量が多い
目が明るさに慣れてくると
この光の正体が
大量の照明器具によるものであると理解した
下階のものは全て壊れていたのに
おかしな話だ
こうも明るいと
ギャップがありすぎて
天国にでも来たように感じてしまう
だが俺は部屋の様子を見て
思わず眉をひそめた
汚れ一つない真っ白な壁に貼ってあったのは
何十人もの少年・青年の白黒写真だった
彼らはこの実験施設の被験者たちだろう
しかも様子が尋常じゃない
体の“首”と名のつく部位には 鎖が巻き付いており
ある者は手術台に固定され
またある者は複数人もの大人の手によって 床に押さえつけられていた
顔を歪ませて必死に叫ぶ彼らは
こちらに助けを乞うているように見え
心が締め付けられる
また
彼らの悲鳴が聞こえてくる気がして
耳を塞ぎたくもなった
俺も…この中にいたんだな
そんなことを漠然と考える
俺には 被験者時代の記憶が色濃く残っているため
あれから何百年経っていようと
目の前の光景が昨日のことのように感じられた
こればっかりは
何度見ても慣れる気がしない
そんな残酷な写真で埋め尽くされた部屋の隅に
親友はいた
ある一枚の写真を見つめ
立ち尽くしている
そこには
今よりも少し大人びた顔の彼が写っていた
コメント
2件
めっちゃ続きが気になるんやが???? 今回も最高でした!!!めっちゃハラハラしてた(笑)