アイ
お母さん
母
どうしたの?
アイ
今日もお仕事遅くなるの?
母
うん、ごめんね
アイ
…………
アイ
わかった
母
母
いい子で待っててね
アイ
……はい
アイ
……はあ
アイ
明日は私の誕生日だけど……早く帰ってきてくれるかな?
アイ
お父さんもお母さんも最近すごく忙しそう
アイ
……でもいいもん
私はいい子だから待ってるんだもん
アイ
……………
アイ
……やっぱり、ちょっとだけ寂しいかも
アイ
…寝ようかな
座敷わらし
…………
アイ
……え?
アイ
(じっと見られてる気がする…気のせいだよね?)
座敷わらし
ねえ、君
アイ
ひゃ、あああ!
座敷わらし
しーっ!静かに!
アイ
えええなになになにふしんしゃどろぼうけーさつ!
アイ
あわわわたいへんおかー……むぐっ!
座敷わらし
こら!静かにしてって言ってるでしょ!
座敷わらし
それから人聞き悪いこと言わないで!僕不審者でも泥棒でもないから!第一そんな格好してないでしょ!
アイ
……あー……えーと……
……
…………
確かにその通りだ
頭には変な三角帽子もどき
巫女のような服
そして身長は小学一年生になったばかりのアイよりも少し低いくらいだ
アイ
んー……でも怪しさ満点!
アイ
おめでとう!ぱちぱちぱち
座敷わらし
バカにしてるだろ!最近の小学生はこれだから……
座敷わらし
そ、れ、に!僕、君のためにやってきたんだよ!礼儀ってものを知らないのかな全くもう!
アイ
私のため?そんなの知らないもん
アイ
大体あなたになにができるの?
アイ
というかあなた誰なの?
座敷わらし
今更!?
座敷わらし
さっきの怪しさ満点のくだりよりこっちの会話の方が優先度高いでしょ、どう考えてもー!!
座敷わらし
えー、こほん
座敷わらし
僕は座敷わらし!幸せもたらす妖怪です!
アイ
ええと、救急車……
座敷わらし
待って!?僕病気じゃないよ!!
座敷わらし
ほんと!ほんとに座敷わらしなの!
アイ
うーんでも信じられないもん
アイ
格好もどっちかっていうと座敷わらしもどきって感じだし
座敷わらし
辛辣!!本家に向かってもどきとか!!
座敷わらし
もお、ちょっと君のためにやってきたって言ったでしょ!少しは信用しなさい!
アイ
………ふーん…
アイ
それでなんのために来たのザシキワラシサン
座敷わらし
信じてないな!?
アイ
いやーそんな簡単に信じられません!
アイ
お母さんに知らない人を簡単に信じないようにって言われてるもん!
座敷わらし
……そのお母さんやお父さんに構ってもらえなくて拗ねてるのはどこのお嬢さんなのかな?
アイ
…………あなたせーかく悪いでしょ
座敷わらし
失礼な!!
座敷わらし
性格悪かったらわざわざ君のところまで来ないよ!
アイ
で、なにしに来たの?
アイ
さっきからお話ぜんぜんすすまないんだけど
座敷わらし
君のせいだからね!?
座敷わらし
もー、座敷わらしって聞いたことぐらいはあるでしょ?
座敷わらし
ほら、僕って中々有名だからさ!
アイ
え、しらないよ
アイ
私そんな話聞いたことないし
座敷わらし
えっ…………?
アイ
あれ?おーい!
座敷わらし
………そ、そんなぁ……
座敷わらし
知名度的には河童と同じくらいだと思ってたのに…
アイ
あ、かっぱは知ってる!
アイ
キュウリ食べるやつだよね!
座敷わらし
……………………
座敷わらし
悲しくなってきた…帰ろうかなぁ……
アイ
え、それじゃあただのふしんしゃじゃん………けーさつ呼ぶ?
座敷わらし
呼びません!
座敷わらし
不審者じゃないってば!
座敷わらし
……こほん、僕たち座敷わらしはね、君たち人間にささやかな幸せを届ける役割をしているんだよ
座敷わらし
君、お母さんやお父さんともっと話したいんでしょ?
アイ
……うん
アイ
明日は私の誕生日だし……
アイ
だけど、きっと明日もお仕事だよ
アイ
でもいいの、私わかってるもん
アイ
お母さんやお父さんが頑張ってくれてるから生活していけるってこと、ちゃんと知ってるもん
アイ
だから、いいの
座敷わらし
中々物わかりのいいとは思うけど、君はまだ小学一年生でしょ?
座敷わらし
まだまだ甘えたりないんじゃないの?
座敷わらし
せめて誕生日くらいはいてほしい、そうは思わない?
アイ
……すこーしだけ、思うけど
アイ
……でも仕方ないもん
座敷わらし
そうか
座敷わらし
なら君に質問しよう
座敷わらし
……君はご両親の口から、一言でも君の誕生日の日も仕事だと聞いたことがあるかい?
アイ
…………え?
座敷わらし
最近、ご両親は忙しそうだ
座敷わらし
それは君も目の当たりにしてきたからいたいほどわかってるだろ?
座敷わらし
だけど昔より忙しそうにしていたからといって君をないがしろにしてるわけじゃない
座敷わらし
むしろ逆だよ
アイ
…………ちょっとなにいってんのかわかんない
座敷わらし
え、こわっ!
座敷わらし
アドバイスしてるつもりなのに毒舌だなぁ…
座敷わらし
じゃあわかった、ちょっとついておいで
アイ
……なんで?
座敷わらし
聞いてわからないなら見た方が早いだろ
座敷わらし
ほら、早くして
アイはベッドからおりて座敷わらしについていった
辿り着いたのは、昨日母に
「今日は開けちゃダメだよ」
と言われていた扉の前だった
アイ
ここ、開けちゃダメって言われたよ
座敷わらし
もちろん、開けはしないさ
それだと楽しみがなくなってしまう
座敷わらし
だからちょーっとだけ、聞き耳をたてるんだよ
座敷わらしはしーっと口元に人差し指をあててウインクした
それを見たアイは両手で口元を抑えて中の声を聞いていた
すると、両親の声が聞こえてきた
母
アイには、最近寂しい思いをさせちゃってるね
父
ああ……しかし、明日の誕生日に間に合ってよかったな
母
うん、そうだね
研究も一段落ついたししばらく一緒にいられるね
父
アイが欲しがってたものも買えたしな
母
……明日喜んでくれるといいね
父
ああ、そうだな
アイが驚いたように座敷わらしを見ると彼はクスリと笑ってアイの部屋を 指差した
座敷わらし
もうお休み
寝ないと怒られちゃうよ
アイ
……うん
アイ
ありがとね
座敷わらし
…これが僕たちの仕事だから
座敷わらし
でも、よかったね
いい夢見なよ
アイ
……うん!あやしいとかいってごめんなさい………
座敷わらし
…………、…………、い、いいよ
座敷わらし
そんなことより僕の知名度あげてほしいな!
アイ
えっそれは無理かも
座敷わらし
………はぁ………
座敷わらし
まあ、いいや
じゃあ、またいつか会えたら
そういった瞬間、座敷わらしの姿は
忽然と消えていた
まるで最初からいなかったかのように
そして、明日
アイ
おはよう、お父さん、お母さん!
母
おはよう、アイ
父
ああ、おはよう
早速だけど来てほしい部屋があるんだ
そういって二人がアイを連れてきたのは昨日座敷わらしがアイを連れてきたあの部屋だった
そのドアを開けると……
アイ
わあ、すごい……!!
ケーキ、ご馳走、装飾が豪華になされた立派な風景があった
正面に飾ってあるカードには
HAPPYBIRTHDAY,Ai
と書かれていた
母
うふふ、お誕生日おめでとう
父
結構頑張ったんだぞ!
アイ
……ありがと!お父さん、お母さん!
母
ほら、アイ
アイ
……?なあにこの箱?
母
いいから開けてごらんなさい
アイ
………わあ!!くまさんだ!
アイ
買ってきてくれたの!?
母
そうだよ~喜んでもらえてよかった~!
父
前から欲しがってたからな
アイ
ほんとに、ありがとう!!
アイ
(座敷わらしさんもありがとう)
座敷わらし
ふふ、よかった
座敷わらし
ささやかな幸福を届けられたみたいだね
座敷わらし
……さあ、次は誰のもとへ届けようかな
この話を最後まで読んでくださった
優しいあなたにも、
ささやかな幸福が届きますように