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テラーノベル(Teller Novel)
ふたりきりの映画館

ふたりきりの映画館

「ふたりきりの映画館」のメインビジュアル

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ふたりきりの映画館

♥

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2020年01月21日

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まさかこんなに空いてるなんてな

アヤ

だね!

映画がマニアックだからかな

アヤ

フフ、ホラーだからでしょ!

アヤ

ど平日にレイトショーでホラー観にくるカップルなんて私らくらいだし

ハハ、言えてる

アヤ

あっ、そろそろ始まるっぽいよ

ほんとだ。ってか2人だから自由に喋れるな

近日公開予定ラインナップ

へー、来年公開なんだ。ジョイストーリーの続編。アヤ、観たい?

アヤ

どっちでもいいかなぁ。あんま興味ないし

まぁ続編ってだいたい失敗するしな

そんな会話をしている途中、館内は暗闇に包まれた。

アヤ

この瞬間ってワクワクするよね

あぁ、確かに。あれ?そういえばポップコーンは?

アヤ

私持ってないよ。純也が持ってくれてたんじゃないの?

そういえば入口前にあるソファに置いたままだわ

アヤ

もー。始まる前に戻ってきてよ?私、ホラーは好きだけど1人はイヤだからね

ごめん!ちょっと行って来る

俺は館内を出て、真っ直ぐソファへ向かった。

ポップコーンを小脇に抱え、館内へ戻っていく。

ザーーーー

砂嵐……機材トラブルか?勘弁してくれよ……

ブツブツ文句を言いながら席へ戻るが、アヤが座っているはずの椅子は閉じられていた。

この砂嵐トラブルに便乗して驚かそうとしても無駄だぞー

俺、そういう系全然怖くねーから

呼び掛けるが、声は返ってこない。

砂嵐の音だけが館内に響いている。

おい、アヤ!いい加減にしないと……

劇場スタッフ

すみません。機材トラブルで映像が乱れまして

声を荒げる寸前、劇場スタッフが入ってきて頭を下げる。

コレ、すぐに直るんですか?

劇場スタッフ

ちょっと原因がわからないので、しばらく掛かりそうです。すみません

劇場スタッフ

あのー、大変申し訳ないのですが、後日改めて起こし頂くことは可能でしょうか?

劇場スタッフはそう言って、鑑賞無料券を1枚手渡してきた。

1枚? 2人で来てるのに何で1枚しかくれないんですか?

劇場スタッフ

えっ、1名様ですよね?受付のスタッフからも1名様だと聞いていたんですが……

はぁ?

そんなはずないでしょ。おい、アヤ!もういい加減出て来いって!

空席の並びに声を掛けるが、アヤの声はもちろん、物音一つ返って来ない。

劇場スタッフ

あのー

すんません。多分前の方に隠れてるんですよ、アイツ。昔から俺を驚ろかすのが好きだったから

一番前の席から順に確認していくが、アヤの姿は何処にも見つからない。

そんなずは……

そうだ!監視カメラで確認してくださいよ!俺の隣にアヤの姿も映ってるはずだから

劇場スタッフ

わかりました……。担当者に連絡してきますので

劇場スタッフがそう言って去っていくと、消えていた照明が点いた。

明るくなった館内を改めて探し回るが、アヤの姿はやはりどこにも見つからない。

劇場スタッフ

すみません。映像を確認しましたが、やはりお客様はお一人で来館されておりました

だから、そんなはずないって!なんでそんな嘘を付くんですか!

劇場スタッフ

う、嘘では……ありません

劇場スタッフ

あと、お客様は……先週も、そのまた前の週も来られてましたよね? その時も……お一人でしたけど

何を言ってるんですか!俺は先週、映画なんて観に来てませんよ?最近観たい映画は死霊の穴蔵だけでしたし

劇場スタッフ

死霊の穴蔵は昨年末に上映が終了しております。こちらで上映していたのは、ジョイストーリー2です。

劇場スタッフ

ジャンルも、全然違いますし……

劇場スタッフの言葉は次第に小さくなり、消えていく。

俺の頭の中は、真っ白になった。

劇場スタッフ

お客様?お客様大丈夫ですか?

真っ白になった頭の中に、アヤの無邪気な笑顔が浮かぶ。

そして、ハッキリと思い出した。

アヤ

『純也、今度映画連れてってよ』

アヤが

アヤ

『死霊の穴蔵が観たくてさー!1人だと勇気でなくて』

一年前に

アヤ

『純也が一緒なら怖くないから安心』

交通事故で

アヤ

『大好きだよ、純也』

この世を去ったという事実を

劇場スタッフ

お客様……

劇場スタッフ

お客様聞こえますか?

再び劇場スタッフの声が聞こえた時、俺はロビーに戻っていた。

どうやってここまで歩いてきたのか覚えていない。

劇場スタッフ

あの……出来れば次回は付き添いの方と一緒にご来館ください。チケットも、2枚差し上げますので

まるで病人を見るような目でそう告げた劇場スタッフは、俺の手に2枚の鑑賞無料券を握らせた。

そのチケットを財布にしまおうとジッパーを開いた時、視界に入ったのは、何枚もの精神科の診察券だった。

また、頭が、真っ白になっていく……

Fin

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