花火が咲いた。

明日は、夏祭りだ。

今年も一緒に歩く人はいない。

１人の夏祭りは本当に辛い。

でも、店のお手伝いを頼まれていて 行かないわけにはいかない。

行くしかないか。

手伝いが終われば帰れるんだもん。

それまでの我慢。

今年も無駄に浴衣を着ていく。

見せる人なんかいないのに。

本当はあまり着たくない。

でも、持っているのに着ない、というのは、もったいない気がして、 結局、毎年着ている。

やっぱり賑やか。

私にはふさわしくない場所。

さて。帰るか。

陽太は私の幼馴染。

家も近くて話すことはたまにある。

だから、陽太はめんどくさい。

いちいち無駄な会話を挟まないでよ

！？

陽太？！誤解するじゃん！ 変なこと言わないでよ！

陽太といると、本当に楽しい。

他の人には愛想笑いをして 疲れるけど。

陽太といるときは心から笑える。

恥ずかしくて、 目線をそらしてしまう。

よく考えたらカップルみたいじゃん

そう思ったら陽太といるの 恥ずかしくなってきた…………

恥ずかしすぎて、声が出てきてしまった。

陽太…ちょっと怒ってる。

陽太…！勘違いだよ！

言いたいのに、それがマイナスに なっちゃう気がして言えない…

なんて伝えたらいいの……？

さっきは怒っていたのに 次は 悲しそうな顔……

こんな顔にさせたかったんじゃない

気づいたら涙が溢れ出ていた。

陽太は少し笑って、

優しい顔をしてくれた。

そしたら、私の手をとって……

花火が始まった。

色とりどりの花たちが 夜空に咲いた。

俺は思わず声が出た。

微笑みながら花を見る夏海は 少し大人っぽく見えた。

どうしよう…

緊張してきた……

今言わなきゃ。

今すぐ…夏海に…

伝えなきゃ！

花火の音は俺が話すときには 静かにしてくれた。

やっと…届いた……

こんな事言うと思わなかった。

私は、今気づいた。

陽太といると、楽しい。

陽太といると、元気になれる。

陽太といると…

陽太といると…

考えてくうちに、自然と 答えは出てきた。

その瞬間、

私達を祝福するように、

花火が咲いた。