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屋上から出て直ぐに 家に帰った。

リビングへ行かずに そのまま階段をのぼり部屋に行った。

リビングから 母親と父親の怒鳴り声が響く。

きっとまたお互いのストレスを発散し合っているのだろう。

 わたしに当たってこないだけましだ。

わたしはベッドに寝転がり そのまま目を閉じた。

深呼吸をし頭の中を空っぽにする。

気がつくと夜中の2時だった。

両親は眠っている。

わたしはいつものように パーカーをスウェットの上に着て、 サンダルを履き外に出た。

私は普段誰も来ないような公園に来た。

この公園から見る星空はすごく綺麗だ。

街灯の代わりに明るい星が私を照らしている。

先輩は今頃寝ているのだろうか。 まだ屋上にいるんじゃないか。

そんなくだらないことを考えて 私はくすりと笑った。

先輩のことを考えているうちに 今日のことを思い出した。

友達ができたこと。 そして、先輩に拒否されたこと。

あの時は何もいえなかった。

でも今は自分を隠している先輩を 受け入れようと思えた。

翌朝、昨日のように早く学校に来て 屋上へ行った。

静夏

先輩。昨日はごめんなさい。

  

別になんとも思ってないよ。

  

僕こそごめん。

静夏

あの私考えたんです。

静夏

先輩には無理に聞かないです。

静夏

だから、わたしの事を知って下さい。

先輩は困ったような顔で私を見る。

静夏

だめですか。

  

…ううん。だめじゃない。

  

僕は知られたくないけど、君を知りたいって言うのはだめかな…。

静夏

それでもいいです。

静夏

知ってください。わたしのこと。

静夏

わたしだけ知ってくれればいいです。

私は思わず笑ってしまった。 先輩に「知りたい」って言ってもらえた。

それがとても嬉しくて。

それから色々話した。 家族のこと、学校生活のこと。

先輩はなにを言っても否定せず ただ、頷いてくれた。

聞き手が欲しかった訳では無い。 先輩に知って欲しかった。 それが叶った今、今まで悩んでいたこと全てが消えていくような気がした。

ある程度話したあと、私は立ち上がって

静夏

ありがとうございました。

とお辞儀をした。

  

あのさ、欲張りなのは分かってるけど

  

君の名前が知りたい。

  

知ったら名前で呼んでもいいかな。

先輩は眉頭を上にあげて笑い、 不安気な表情でこちらを見る。

静夏

じゃあ、先輩の名前も知りたいです。

静夏

いいですか?

  

…うん。いいよ。

静夏

私はしずかです。

静夏

静かな夏で静夏。

私がそう言うと先輩が口を開く。

先輩の名前が知れると分かったら 心臓がまた痛くなるほどに鳴った。

  

僕は夏輝。

夏輝

夏が輝くってかいて夏輝。

夏輝

僕らしくないだろ。

夏輝

祖父がつけたんだ。でも実際僕は輝いてないし、夏のように元気でもない。

夏輝

申し訳ないよな。こんなやつで。

静夏

先輩にぴったりだと思います。

静夏

夏のように輝いてる先輩は、かっこいいですよ。

夏輝

え。

静夏

先輩は私よりもすごい人なんです。

静夏

もっと自信もってください。

静夏

この前、先輩は自分のこと凄い人なんかじゃないって言ってましたよね。

夏輝

うん。

静夏

私にとっては凄い人なんです。

静夏

先輩が否定したとしても先輩は凄い人だって、思い続けます。

静夏

それくらい凄く輝いてます。

夏輝

ありがとう。

先輩は屈託の無い笑顔で 声を出して笑った。

夏輝

君は凄いよね。

夏輝

こんなに正直に気持ちを伝えられる人他に居ないと思う。

静夏

あ…迷惑でしたか?

夏輝

そんなことないよ。

夏輝

君のそういうところが僕は好きだな。

先輩は私の目を見つめて 呟いた。

"好き"という言葉に反応して 顔が一気に赤くなる。

先輩は意識すらしてないのに。

静夏

(こんな顔見られたくない。)

静夏

もう行かなきゃ。

静夏

先輩、行ってきます。

夏輝

うん、行ってらっしゃい

夏輝

静夏

私の名前を言うと、 先輩はいたずらな笑顔で笑った。

真っ赤な顔がさらに赤くなった。

静夏

またね、先輩!

そう言ってすぐに教室に行った。

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