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コメント
2件
ストーリーめっちゃ好みです!! これからも頑張ってください!!
📖声に出せないこと 🍫
なおきりさんって、ほんとにずるいと人だ。
私がちょっとおちこんでても、気づかないふりして冗談いってくるし、 検査で落ち込んだ日も、空気を読まずに「その顔、可愛いパジャマと相性最悪」とか言ってくる。
でもーー 笑ってしまうんだよ、結局。 それが悔しい。
なおきりさんは、病室の中に“ふつう”を持ち込んでくれる。 学校の話、友達の話、自販機のジュースがぬるかった話、 アイスココアが絶妙なぬるさだったことま で、本当にどうでもいい話をたくさん。
その、どうでもいい話がすごく、うれしい。
この前、中庭で星をみた夜。 なおきりさんが言った。
『この時間が、もうちょっとだけ続いてほしいなって』
あのとき、私も同じこと思ってた。 でも、口には出せなかった。
だって私ーー 本当は知ってる。 なおきりさんに、時間が残されてないってこと。
主治医の先生が、うっかり話してるのを聞いてしまぅただけ。 ほんの一瞬だったけど、名前が聞こえて、静かな声で「一年もたないかも」って。
足がすくんだ。 なんでそんな話、私は知ってしまったんだろうって思った。
でも、それからなおきりさんに会ったら、いつも通りで、ふざけてて、笑ってて。 私は、それが壊れるのが怖くて、「知ってるよ」なんて言えなかった。
今日も、アイスココアをくれた。 あの人らしい絶妙なタイミングで。
🍫
そんなこと言って笑ったけど、本当は泣きたくなるくらい、うれしかった。
もし、言えるならーー 本当は、伝えたい。
「私はなおきりさんがいなくなるなんて、考えたくないよ」って。 でも、今はまだ、 なおきりさんの前では笑っていたい。 それが、私にできる唯一のことだから