エウレカ
昨日の事を院長先生に報告した時、エレクトちゃんの仕業って断言しても良かったんじゃないかなぁ?

オーロラ
うーん…確かにあの子は私に、明確な敵意を向けているけど…

オーロラ
まだ証拠もないから、断言するのは難しいかな。

アーロガント
オーロラやサリサに危害を加えた者を見つけ出すためにも、先ずは安全確保をしなくてはな。

アーロガント
それに管理魔法のかかった部屋に侵入できる程の奴を野放しにもしていられない。

オーロラ
管理魔法って、確か防衛魔法の派生の一つよね?

アーロガント
あぁ。全寮の部屋にかけられてある警備用の非常に強力な魔法だ。

エウレカ
そんな魔法、一体どうやって掻い潜ったのかな…

男生徒1
マジか…噂通りじゃねぇか…

女生徒1
あの農奴女…一体何者
なの…!?

辺りはいつの間にか、“皇太子と伯爵令嬢を取り巻きにする農奴”を見たがる群衆ができていた。
エウレカ
わっ!なんで人集りがっ?!

オーロラ
っ…!本当…

アーロガント
俺達がオーロラと居ると目立ち過ぎるな…少し距離を置いた方が良いか。

エウレカ
でもでも!ちょっと心配
じゃない?この隙を狙ってまた襲われちゃうかも…!

アーロガント
十分な距離をとりつつ、俺達の手が及ぶ範囲を保つべきだな。

オーロラ
……ごめんね二人共、私の
所為で面倒な事に巻き込んでしまって…

オーロラは自分の身分の低さ故起こした出来事に何もできない無力感と、二人に迷惑をかける申し訳なさに弱気になっていた。
エウレカ
面倒なんかじゃないよ!
お友達が困っていたら、助けたくなるものだよ!

アーロガント
これはお前の所為ではない。これからお前の扱いも必ず改善される。…いや、改善する。

オーロラ
ありがとう…あの事で少し狼狽えてしまったけれど、もう大丈夫。

オーロラ
…気を取り直して、これからの事を考えないとね。

エレクト
あら。人混みができているから何があるのかと思えば_

エレクト
農奴と崇高なる御二方じゃありませんこと?

オーロラ
…!

エウレカ
エレクトちゃん…

アーロガント
…エレクト、教室内での発言と言い、今の態度も改めるべきだ。

エレクト
どうしてそう思いますの?皇太子殿下?

アーロガント
お前はオーロラが農奴である事を見下しているが、彼女は身分の差を凌駕する程の努力をし、実力をつけた。

アーロガント
我々はその努力を認め、
対等に接するべきだ。

エレクト
…その身分の差を解消できない“名ばかりの王族”の
クセに。

エレクトの度を越した問題発言にその場にいた大勢の生徒達は絶句した。
エレクト
だってそうでしょう?そんなに身分差、身分差って言うなら少しくらいは改善する行動を起こせばいいのに!

エウレカ
無理だよ…!今の政権行使者様はブラン国王陛下だし、皇太子であっても政治的な発言をしても反映されない…!

エレクト
じゃあ尚更でしょ!?上から目線でものを言うだけで、自分で問題を解決できないなんて!

オーロラ
問題を解決する事だけが
正しい事じゃないッ!!

アーロガント
…!

エウレカ
ローラ…っ!

オーロラ
アーロは問題に真摯に向き合ってくれている!それが今まで見向きされなかった私にとって、どれだけ嬉しいことか…!

エレクト
ッ!…何よ!いきなりムキになって__

オーロラ
それに!彼はいずれこの国の王になる!その時、きっとこの問題を解決するために動いてくれる!!

オーロラ
今何もしない人達より、未来に向けて励むアーロの方が凄く心強いわ!!

エレクト
〜ッ!!この…!!

オルド
エレクト。

エレクト
ッ!!

エレクト
オルド…ッ!!

オルド
…あれほど忠告したのに、
どうして君はそこまで意地を張るんだ。

エレクト
うるさいッ!!

オルドは物憂げに眉をひそめ、気を取り
直してオーロラに視線を向ける。
オルド
…すまなかったね。エレクトの非礼を、私が代わりに詫びさせていただきたい。

オーロラ
…?えぇっと…

オルド
あぁ、まだ名前を名乗っていなかったね。
私はオルド・インサニア。皆からはオルと呼ばれている。よろしくね。

オーロラ
オーロラ・ポッシビリタです。こちらこそよろしく。

オルド
知っているよ。君の噂はこの学院中に広まってい__

エレクト
オルド!!

エレクト
...ちょっと、こっち来なさい。今すぐに...

オルド
…エレクトにはちゃんと言っておくから…どうか嫌いにならないであげてね。

オーロラ
…えぇ。

オルド
それでは、失礼するよ。

そう言い残し、オルドはエレクトと共に
どこかへと歩いていった。
オーロラ
…ふーっ
何とか…なったね。

アーロガント
勇気ある行動でエレクトを退けられた。ありがとうな。オーロラ、エウレカ。

エウレカ
えへへっ!それほどでも〜!

エウレカ
ローラも凄かったねっ!あんなに大胆な行動ができるなんて!

オーロラ
今まで貴方達に助けられてばかりだったから、力になりたかったの。

オーロラ
それに、あの事はずっと言いたかったから…

オーロラ
お友達を助けられて…私も、嬉しいわ…!

アーロガント
…それに、俺は呼び名で呼ばれた事も嬉しく思っている。

オーロラ
…へ?

オーロラ
…あっ!?

エウレカ
あははっ!一生懸命だったもんね!

オーロラ
うぅ…!申し訳ない…

アーロガント
そう思う必要は無い。オーロラと俺の距離がより縮まったように感じた。

アーロガント
…憧れていたんだ。

アーロガント
こんな風に皆と対等の立場に立って、友達から呼び名で呼ばれるのが。

オーロラ
……
(今のアーロガント、いつもよりちょっと表情が穏やかかも…)

アーロガント
…俺もオーロラの事をローラと呼んでも良いか?

オーロラ
…!えぇ、もちろん。

オーロラ
私も…そう呼ばれた方が嬉しいわ!

アーロガント
……ありがとう。

エウレカ
あははっ!二人共、今凄ーく素敵な顔してるよ!楽しそうっ!

アーロガント
っはは、そうか?

オーロラ
っふふ…

先程とは打って変わって、和気あいあいとした空気になっていた。