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索迷の先にあるもの

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索迷の先にあるもの

1 - 索迷の先にあるもの

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2022年08月10日

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遠くから激しい銃声が聞こえる。 目視で確認できるのは、 紫色の球体のようなバリアを発生させたり縦横無尽に駆け回ってレーザー弾を放ったりしている襲撃者。

…それと、これに必死に応戦する政府の治安部隊。人数はこちらの方が圧倒的に多い筈だが、遠目からでも押し負けているのが見て取れる。

____ガシャンッ!! ガラガラガラ……

響き渡るレーザー銃の発砲音と共に、ガラス張りの高層ビルが音を立てて崩れていく。

それに呼応するように発砲音は数を増し、貫かれた周りの建物がまるでおもちゃのように崩れ去って…

街の中心にそびえ立つ一際大きな建物を残し、周辺一帯は無惨にも蹂躙されていく。

___未来都市セントエルダは、混沌を極めていた。

それはたった数人の子供たちによるものだった。

ビルを打ち抜く威力を持つレーザー銃を構える姿は脅威そのもの。 容姿こそ幼い子供だが、市民にとってその本質はまさしく悪魔だった。

___ハッハッハ!!
もっと、もっとだッ!!!

___無能で下賎な下等生物どもめ!
どっちが滅ぶべきかわからせてやるよ!!

口汚く罵る子供たちの瞳には憎悪が燃えていて、その上で表情には薄く笑みを帯びている。それは民衆を震え上がらせるには十分すぎるほどだった。

鳴り止まない轟音と、人為的な災害に泣き叫ぶ人々の声。

すでに街は壊滅状態。 被害は甚大で、政府の手にも余りある状態であることは明白だった。

吹き荒ぶ風の中、被害を免れたビルの屋上で一人の子供が佇んでいた。

静かに景色を眺めていながらも どこか異質な存在感を放っている。

?

…。

彼の目に映っているのは、一瞬の間に崩れ去った街でも未だ逃げ惑う人々でもない。

意思決定機関___『エルドラド』と呼ばれる、激しい戦闘の中ただ一つ残されたビルのみだった。

〇〇

…見つけた!

?

そしてここに、彼の背を追う子供が一人。

?

やぁ、〇〇。

〇〇

やっぱり…アンタがやったのね。

その言葉を境に、部屋の空気が張り詰める。

?

…何のことかな?

〇〇

白々しい。

〇〇

街のあちこちで破壊活動をして回っているあの集団…。

〇〇

アイツらはアンタの仲間でしょう。

問い詰めるように言う〇〇だが、少年の表情から焦りは窺えない。 それどころか少年は挑戦的な顔で質問を返してくる。

?

…。

?

〇〇はまるで、僕らが悪者みたいに言うんだね。

〇〇

違うって言いたいの?

噛み付くかのごとく即座に答えるが、やはり少年は顔色ひとつ変えない。 こちらの考えが見透かされているかのような振る舞いに混乱すら覚える〇〇に、少年は落ち着いて答えた。

?

勿論さ。

?

卑劣で矮小な旧人類。
紛れもない…”淘汰されるべき悪”だ

〇〇

…!

言葉尻に重い怒りを感じ取り、反射的に警戒体制に入る。

?

……それより、フェーダに入る気にはなった?

が しかし、それも束の間。 数瞬の間にケロッとした顔に戻ったかと思えば、口から飛び出たのは嫌と言うほど聞き慣れた言葉。 答えは勿論決まっている。

〇〇

…何度言われようと答えを変える気はない。

雰囲気の変容に驚きを隠しつつ冷静に答える。

実はかなり前からこの組織への加入を誘われているが、最初の勧誘から今に至るまでずっと断り続けている。 初めのうちは危害を加えられるかと思いそれはもう怯えながら声を振り絞ってなんとかNOを言えたくらいだが…

問答を何度も繰り返している内に断るのも慣れてしまい、気づけばイエスかノーかハッキリ言わずとも「いつもの回答」ができる程になってしまった。 実際のところ、もう何度誘われたのか覚えていない。

?

相変わらず 釣れないなぁ。

〇〇

アンタだって同じことよ。

〇〇

…アタシは、人を傷つける組織には入れない。

?

ふうん。

?

…まぁいいよ、
君がそう言えるのも今のうちだ。

〇〇

含みのある言い方ね。
…何が言いたいの?

?

君もすぐにエルドラドの残虐性を知ることになる。

〇〇

それは…アタシがアンタの手を取るって言いたいわけ。

?

いずれそうなるって話さ。

〇〇

…バカバカしい。
そんな日絶対に訪れないわよ。

妙に余裕のある言い方にムッとして少しムキになる。…と同時に、奴の足元が淡く輝きだした。…マズい!

〇〇

はあ?!ちょっ、…アンタっ、
どこに行くつもりよ!

?

どこって…帰るのさ。
そろそろみんなが集まる頃なんだ。

?

それじゃまた。
次はいい返事を期待してるよ。

〇〇

待ッ……

___シュンッ

呼びかけるも既にそこに姿は無く、伸ばした腕が空を切る。

何の痕跡も残さず消えた少年に焦りとも怒りとも言えない名状し難い想いが込み上げるが、本人がそこにいないのでは意味がない。

不完全燃焼気味で気分が悪くなったが、どうにか心を落ち着ける。

〇〇

エルドラドの、残虐性…。

アイツが残した言葉を呟く。 …まったく接点のない二つの言葉をどうにか結びつけようとするも、思い当たらなさすぎて頭を抱える。

〇〇

だめだ、分からない。
…きっと今のアタシじゃだめだ。

あやふやな考えのままでは答えが出せない。 アイツがどうしてアタシにフェーダへの勧誘を繰り返すのか。そして、どうしてアタシを力づくで加入させようとしないのか。

別れの自信満々な言葉を思い出す。 アタシがフェーダに入る…… どうしてああ言い切れた?

そもそも、破壊活動を行なって人々の暮らしを脅かしている時点でアイツらは確実にアタシ達の敵だ。 それともフェーダには何かがあって、あの活動は何か大きな目的のための手段に過ぎないとか?…わからない。

もしかしたらアタシの意志を鈍らるためだけに適当を言ったとか、そういった類の謀略かもしれない。実は何の根拠もなくて、あの言葉にこだわることでアイツの手のひらで踊らされることだって十分にあり得る。

それでもアイツの言葉の真意が気になってしまう。勘というか…やっぱりどこか引っ掛かる。

〇〇

アタシは…知らなきゃならない。
知って、自分で考える。

〇〇

そうすることでアタシは何かを掴める…気がする。

突然帰ったアイツに対する疑問もそこそこに、逆張りをする自分の心をいいくるめ真実を追う決意を胸に抱く。

___ガチャッ

〇〇

…ッ!?

ふいに扉が開く。 中から出てきたのは……白いローブを着た不気味な男だった。

〇〇

だっ…誰だ!

どこからどう見ても不審者としか言いようのない風貌に〇〇は警戒する。 …再びこの場に緊張が流れる。

…突然すまない。

男は周りに人がいないことを確認し静かに扉を閉めると、スッとこちらに向き直った。

支援者X

私は支援者X。
…君に、頼みがあってやってきた。

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