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中学3年生の時 家出した
6月の雨はまだ少し肌寒かった
細い裏路に入ると 小川が流れていた
疲れて その場でしゃがみ込んだ
「消えたい」 そう思った時
雨が止んだ
春樹
顔を上げると 学ランを着た男子がいた
目線を合わせ 傘を分けてくれていた
春樹
あやめ
構わないで
喉まで出て 口にはできなかった
春樹
春樹
あやめ
春樹
何も言わず 優しく笑ってくれた
春樹
あやめ
春樹
あやめ
春樹
彼は小川の方を指差した
向こう岸には 紫陽花が並んで咲いていた
春樹
春樹
春樹
涙が溢れ出た
止めどなく
その間、学ランの人は ずっとそこにいてくれた
少し落ち着いた頃
春樹
あやめ
うまく喋れなかった
春樹
あやめ
言い直したが あまり変わらなかった
春樹
春樹
春樹
なんか 色々どうでも良くて
頷いた
あやめ
いつの間にか 雨は本当に止んでいた
それから何かある度に あの小川を訪れた
紫陽花を見ると 心が救われた
花は咲いていなくても
「春樹」はいなくても
「大丈夫や」って 言ってくれている気がした
バイトの帰り 小川に人がいた
制服を着た男の子
思い詰めた顔で 川を見つめていた
雨の中 傘もささず
あやめ
降りかかる雨を 止めた
彼は驚いた顔で こっちを向いた
あやめ
大輝
立ち去ろうとした彼の手を 無意識のうちに掴んでいた
あやめ
大輝
あやめ
あやめ
大輝
あやめ
あやめ
あやめ
彼は静かに紫陽花の方を見た
あやめ
それを聞いて 崩れ落ちるように泣いた
その間 私はずっと傘を分けた
あの時 あの人がしてくれたように
しばらくして 彼は涙を拭った
大輝
大輝
あやめ
大輝
あやめ
あやめ
彼の手に傘を持たせた
大輝
あやめ
あやめ
大輝
あやめ
大輝
お辞儀をして 雨の中を歩き始めた
あやめ
彼は立ち止まって振り返った
あやめ
大輝
あやめ
言いたいことはいっぱいあった
昔の自分に似てたから
でも多分 あの時一番聞きたかったのは
あやめ
大輝は一瞬 拍子抜かれた顔をした
でも すぐに笑顔になった
深いお辞儀をして 今度こそ帰って行った
その後ろ姿を見て 小さく呟いた
あやめ
ふと紫陽花の方を見た その時
雨が止んだ
振り返ると 男性がいた
学ランじゃなくて スーツ姿で
笑顔で傘をさしてくれていた
春樹
春樹
春樹
あやめ
春樹
小さく笑った
春樹
春樹
あやめ
春樹
春樹
あやめ
春樹
色々思い出して
色々感情が込み上げてきて
泣きそうになった
春樹
春樹
あやめ
春樹
春樹
紫陽花に見守られて 泣いた
その間 2人の雨はずっと止んでいた