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記憶塔

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記憶塔

第1話 - 記憶塔

24

2020年04月16日

#愛

#ホラー

#ファンタジー

#ミステリー

メロン

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24

メロン

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2XXX年。記憶のデータ化が可能になり、世界では記憶の売買が横行するようになっていた。

この世界での労働者階級は記憶を搾取されるだけの存在に過ぎず、記憶の一部を売る事が決まった労働者は各地方の『記憶塔』に送られるという。

シレネ

私の記憶が売れれば、たくさんお金を持って帰れるから…だから、待っててねお母さん。

案内人

こちらがお部屋になります。シレネ様でよろしかったですね？売却する記憶はこちらで既に伺っておりますので…買い手が見つかり次第連絡させて頂くということで。

シレネ

ありがとうございます

案内人

いえ、では私はこれで失礼します。

シレネ

たしか館内での移動は自由って言ってたな…こんな所にいても気が滅入るだけだし気晴らしに散歩しよ。

シレネ

わっ！？誰…？

ストック

…？そこに誰かいるの？ごめんね。僕目が見えないんだ。

シレネ

そうなの…びっくりした…。

ストック

はは。驚くのも無理ないよ。皮膚はこんなに爛れてるし身体は傷だらけ。今の僕ってまるで怪物みたいだもの。それより、君も記憶を売りに来たの？

シレネ

うん。私の家母子家庭で、私が記憶を売ってでもお金を持って帰らないと2人とも暮らしていけないの。

ストック

そっか。お母さん思いなんだね。僕も家族のためにこの施設に来たんだよ。でも僕は、記憶を売りに来たんじゃなくて体を売りにきたんだけどね。

案内人

食事の時間ですよ。皆さん食堂に集まってください。

ストック

おっと、もう食事の時間か。君と話してると時間が短く感じるな。ほら、行こう。

シレネ

うわっ！何これ！ひっどい食事！

案内人

………。

案内人

どうかなさいましたか？

ストック

わっ!!なんでもありません！

案内人

そうですか。では失礼。

ストック

ふぅー。危なかった。あの管理人に逆らったら君のお母さんにお金を持って帰れなくなっちゃうよ。

シレネ

そうなんだ…ごめん。あの管理人さん優しそうに見えたの。

ストック

あんなの上辺だけだよ…。まあいいや、食べれる時に食べておかないと後悔するから今は食べな。

シレネ

分かった。

ストック

(パクパク)

シレネ

(パクパク)

シレネ

はぁ〜…ストック今頃どうしてるかなぁ。

ストック

ストックさんって君の友達？

シレネ

ううん。恋人なの。ストックも私と同じでどこかの記憶塔に送られたみたいなんだけど、今何処にいるのかも分からないんだ。

ストック

へぇ。あ、まだ名前を名乗ってなかったね。実は僕もストックっていう名前なんだ。君の恋人と関連性はないんだけど何かただならぬものを感じてね。君の名前はなんて言うの？

シレネ

私？私の名前はシレネよ。

ストック

！！

シレネ

どうしたの？

ストック

いや、何でもない。気にしないで。

ストック

なんて事だ。シレネがまさかこの記憶塔に送られてきていたなんて。

ストック

…家族を支えるためにこの施設で、僕は自分の体を売った。幸いにもその体は富裕層に買い取られ、多額のお金を貰い僕は近々この施設を去る予定だった。

ストック

だが、問題なのは体がなくなって入れるものがない記憶を何処に宿らせるかだ。僕みたいな庶民にまわってくる体なんて誰も欲しがらないような醜いものばかり。

ストック

背に腹は変えられない。僕はその体を次の体にすることにしたんだ。

ストック

乗り換える体の持ち主は目を患っていたらしく、健康だった僕の目はシレネを捉えられなくなった。

ストック

今の僕は昔の僕じゃない。こんな醜い容姿の恋人を、シレネは受け入れてくれるだろうか。

ストック

…やっぱり僕には出来ない。僕はシレネがここを出て新しい恋を見つけてくれたらそれでいいんだ。

ストック

………

シレネ

あの……

案内人

何でしょう？

シレネ

管理人さんなら記憶塔に出入りした事のある人間の情報を知っていますよね！

案内人

ええ

シレネ

近日中に、ストックという男性が記憶塔に出入りしていないでしょうか？

案内人

ストックという男性ならこの塔にいますよね。

シレネ

その男性ではないんです。私の恋人は目を患っていません。それに恋人である私に彼が分からないわけありません！別の地方の記憶塔も調べていただけないでしょうか？

案内人

……いいでしょう。それが真実の愛というものなら。

シレネ

ありがとうございます！

案内人

ただし条件があります。

シレネ

私に出来ることなら

案内人

あなたと同じ塔にいるストックを殺しなさい。

シレネ

え……？

案内人

この機会を逃したら、もうあなたが言う恋人には二度と会えないかもしれませんよ？それでもいいのなら私は構いませんが。

シレネ

………

シレネ

やります

案内人

そうですか。

シレネ

そうしたら、ストックを、私の恋人の居場所を調べてくれるんですね！？

案内人

はい

シレネ

あの…ストックさん

ストック

どうしたの？

シレネ

ごめんなさい。

ストック

……え？

ストック

何…これ…。

案内人

それが、あなたの愛のカタチなんですね。

案内人

本当に大切なものは目の前にあったのに…残念なことです。