「今日は月が綺麗ですね。」
ひささかぶりの満月に酔いたく、俺は屋根瓦の上で夏風に 吹かれ、夏の暑さを凌いでいた。
そっと耳元で囁かれた言葉は、頭をめぐる。 初夏の暑さにやられていた脳は、もっと温度を上げるようにぐるぐる巡った。
隣に降り立った人影、月光に照らされたその姿は、とても神秘的だった。
温かい風が吹く。 後ろで竹林が生き物の様にさざっと蠢いた。
夏の暑さにやられて
「君の髪は、月光りに照らされると、輝くんだね。」 人外の獣、前まで俺が名乗っていた゛神゛という存在の彼は、金色の髪をなびかせながら、俺の隣に座った。 「だったら何だ?」 そっぽを向いて答えた俺を、更に近ずいて、彼(?)は微笑んだ。 「綺麗だなーって、また惚れそう」 さらりと眼の前で髪が揺れる。周りの気温が上がった気がした。 「あぁ、そうですか。狐の嫁入りも大変そうだな。」 あえてそっけなく言う、理由は多分、俺も彼と同じ。 「んん~、そうだよ。まさか、狼さんに嫁入りするとは。あはは〜」 鈴を転がすような綺麗な笑い声。耳の奥が機敏に反応してしまう。 「嫌だった?」 少しだけ心配を抱えつつ、隠すように彼の方を向いた。 すると、彼は耳を みょんっ と立てて凄い作り笑いをした。 「だったら燃やしてるよ。うちの村ごと」 先程までの心配を吹き飛ばすように、彼はフッと鼻で笑った。 「今日は呼ばないの?」 琥珀色の瞳が覗き込む、宝石のような輝きに思わず目を閉じた。 すると、
ちゅっ
一瞬、柔らかな感触が、唇を覆った。 「狐から目をそむけちゃいけないよ〜」 右手で口元を隠し、うひひっ♪と゛善逸゛が笑った。 この色狐め…………、 「善逸ぅ〜………」 口元の右手をガシッと掴み、笑顔で立ち上がる。 「へ?」 「こわ~い狼さんをからかったらどうなるかわかる?」 徐々に、狐が顔を曇らせていく。 「えぇ!?あ、ちょ、あ♡」 暴れる善逸を宇髄が巧みにいいところを触っていく。ついに立ち上がる力もなく、 耳と尻尾がふにゃりとうなだれた善逸を、宇髄が軽々と持ち上げた。 「んじゃ!これからも〜っと、俺の名前、呼んでもらおうかな〜♪」 宇髄がスリスリと善逸の顔に頬ずりをした。 風が通り抜け、風が竹を揺らす、涼しい音がする。 暖かく、熱のこもった胸元を優しく抱いた。 夏の暑さに内を焦がれて。
おわり
コメント
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この垢は!現在!使用(そもそも、そこまで使ってないよねアハ)されて!おりません!! 別垢作ったらコメ残してくれた方より、フォローしに参上します☆ 閲覧、有り難うございました(_ _)
信じないとよく言われる、これ初投稿(物語として)