烏嶺 夢
……なな、いい加減離して。ちょっと苦しい。
なな
うぅう……
中島 敦
……それで、一体何が…?
中島敦・国木田独歩・宮沢賢治、そして何故かいるのは太宰治と江戸川乱歩。
烏嶺 夢
(ここで私が嘘を言ったとしても、乱歩さんがいるからバレてしまう……)
烏嶺 夢
(いや…嘘発見器かよ)
烏嶺 夢
……
烏嶺 夢
私達、この世界から来た人間じゃないんです。
烏嶺 夢
勿論この子も…
その瞬間、私となな以外の全員が難しい顔をして何やら悩んでいる。
国木田 独歩
……どう云うことだ?
烏嶺 夢
(あれ、説明難しかったかな…)
烏嶺 夢
えっと、だから私達は別の世界から来て……
中島 敦
その!!
中島 敦
別の世界って一体……
烏嶺 夢
……(嗚呼そこか…)
烏嶺 夢
説明は難しいんだけど、とにかくここは私達の住んでいる場所じゃないの。
烏嶺 夢
そして、本来いないはずの私達のせいで、今この世界は混沌が起きている。私達がいるとこの物語は進まない。
太宰 治
……
何を思っているのか、太宰治はこちらをジッと見据える。どこか気まずくて、思わず顔を逸らした。
江戸川 乱歩
…つまり、君達は
江戸川 乱歩
本来なら、この世界には存在しない人間だったと言うこと?
烏嶺 夢
……はい
中島 敦
え??っと、…んん??
太宰 治
敦くん。例えばね、小説があるとするだろう?
太宰 治
その小説は物語が決められている。
太宰 治
この世界もそうだ。運命は最初から決められている。まるで小説のように。
太宰 治
しかし、その小説の中に、本来登場しないはずの人物が現れたとしたら。空いた空白の頁は先に進まず、新たな頁を作り続ける。本来の頁は置き去りにして。
太宰 治
そうなると、どうなる?
中島 敦
……先の話が読めなくなる…?
太宰 治
そう。つまりはそう云うことなのだよ。
中島 敦
……!!!
烏嶺 夢
…だから、私はここに迷い込んだななを探しに来た。
烏嶺 夢
早く連れ帰らないと、みんなの物語が進まないから。
なな
でもね……帰る前に、みんなの記憶を消さなきゃいけなくって……
なな
わたし、みんなとの思い出消されたくないから…っ
なな
ううう……
国木田 独歩
……!
国木田 独歩
……
宮沢 賢治
それって、ななさんに記憶が無いのも関係しているんですか?
烏嶺 夢
えっ
国木田 独歩
賢治、それは……
烏嶺 夢
ねぇ、どう言うこと?
宮沢 賢治
ななさん、初めてここに来た時、名前も住所も知らないって云ってたんです。
江戸川 乱歩
どうしてもここで働きたいって云うから置いておいたんだよね〜。
烏嶺 夢
……ねぇ、なな。アンタ絶対記憶ないって嘘でしょ。
なな
はぁ…!?嘘じゃないし、本当だもん!!!
烏嶺 夢
(気を遣ってわざと小声で言ったのに……)
烏嶺 夢
じゃあ何で…この世界について知っていたじゃん。それにななって名前…
太宰 治
嗚呼、それは私達が考えたのだよ。呼び名はあった方が善いからね。
太宰 治
”名無し”のななちゃん。
烏嶺 夢
そんな安直な…
なな
どこから来たのかは覚えてない。ただ、この世界のことだけは覚えていた。…それに、夢はどこか懐かしい気がする。
宮沢 賢治
お友達ですか?
烏嶺 夢
いや初対面なんだけど……
太宰 治
初対面であんな大胆なことをするなんて、根性あるねぇ。
江戸川 乱歩
記憶を消すのは異能力だよね。
国木田 独歩
記憶に干渉する異能力等、ポートマフィアの連中達に目を付けられなければ善いが…
江戸川 乱歩
国木田それフラグ。
烏嶺 夢
…
烏嶺 夢
(普通に困るんだよなぁ…ポトマなんて、ななはともかく私は直ぐ殺されそう…)
烏嶺 夢
…あ、そう言えば
烏嶺 夢
この異能力が使える場所は限られているって……
国木田 独歩
どこだ?
烏嶺 夢
(…………どこだ?????)
烏嶺 夢
(待って、私教えられてないんだけど。)
烏嶺 夢
エット……その………
江戸川 乱歩
知らないみたいだね。
烏嶺 夢
ゔ……
烏嶺 夢
ねぇ、ななは何か聞いてないの?
なな
知らないよぉ…
なな
それよりお腹空いた。
烏嶺 夢
(このクソガキ……)
宮沢 賢治
では話はここまでにして、ご飯を食べに行きましょう!
宮沢 賢治
近くに美味しいお蕎麦のお店があるんです!
中島 敦
賢治くん……
太宰 治
そうだね。元より連れて行く理由を知る為にここへ来て貰ったし、それは正当な物だった。
江戸川 乱歩
国木田も最初はだいぶ疑ってたけど、ななの発言聞いて信用したみたいだしね。
国木田 独歩
ぐ……
太宰 治
ほら国木田くん。ちゃあんと言わなきゃ。
烏嶺 夢
…?
国木田 独歩
……軍警に引き渡す等と脅し、怯えさせてしまってすまない。
烏嶺 夢
あっ。
烏嶺 夢
いや、その……私も多少強引にやり過ぎたなとは思うし…
なな
ねぇ、それはななに云うべきじゃないの?
烏嶺 夢
……そうだよね。
なな
ぎゃっ!
烏嶺 夢
ごめんね、無理矢理にしちゃって。
太宰 治
無理心中なんて、傲慢さ溢れて素敵じゃないか。
太宰 治
夢ちゃん、今度は私と……
烏嶺 夢
……言っとくけど、私死にたい訳じゃないから。
烏嶺 夢
あそこが入口だっただけよ。
太宰 治
えぇ〜、残念。じゃあまた気が変わったらね。
烏嶺 夢
はぁ……
宮沢 賢治
ご飯行きましょうよ〜……
なな
いこ〜。
中島 敦
あはは…三人共行きましょうか。
烏嶺 夢
……うん。
烏嶺 夢
………早く家に帰れるように、頑張らなきゃ。