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アーサー
菊
どちらにせよ、幸せだからいいか
アーサー
アーサー
私の、名前
あれ
なんだっけ
ええと、お母さんが付けてくれたはず
分からないけど、お母さんの口から出た名前が私の名前
いつ、私の名前を呼んでくれたっけ
最近呼んでくれてたなら、思い出せるはずなんだけど
……あれれ
呼んでくれてない? ──
アーサー
数分たっても答えない私に呆れて
私が手に持つメモを指さした
そして
一ページづつ捲っていく
・ 私の名前 菊 ・母の名前 花 ・父の名前 ──
一ページ目には、基本の情報が載っていた
菊
アーサー
アーサー
菊
思い出した
でも
思い出したところで、使わない
アーサー
菊
菊
最後は、思い出せなかった
アーサー
それでも、この人は思い出す手伝いをしない
どうしよう
思い出せない
アーサー……、アーサー……、
あれ……? おかしいなあ
覚えていたのに……、早くしないと名前も忘れてしまう
そういえば
私の名前、なんだっけ
菊
アーサー
アーサー
アーサー
だって、あの子供がいるだけで幸せだから、これ以上は要らなくて
思い出せなくて、少し、焦った
菊
アーサー
それは
アーサー
菊
アーサー
菊
アーサー
アーサー
それでも私は、 記録をとることを、しなかった──
少しの時間が経つ
何かわからない
心の吐き気を感じた私は、当たりをキョロキョロと見渡した
薬、薬は?
思い出しちゃうよ
分からないけど
思い出しちゃうの
アーサー
菊
菊
この人は、薬を持ってきてくれない
まって、ほんと、やばいかも
幸せだ
私は幸せだ
辛くない
生まれてからずっとずっと、幸せで!
あ、明日? 今日って明日だっけ
あれ、ちがうな
アーサー
な、何か言ってる?
わかんない
わかんない
みるみるうちに
私の心は黒く染っていた
早く
白いペンキで塗りつぶさないと
幸せじゃないと、いけないのに
幸せなまま死ねると思ったのに
それはおかしいか
だって
私は、幸せ者だもの──
ピッピッピッピッ
機械音
眼前には、呼吸器
あれ
寝てたんだよね?
アーサー
菊
この人の名前、なんだっけ
少しだけ、分かるような
アーサー
アーサー
菊
アーサー
アーサー
菊
アーサー
微笑む私に、呆れたように言う
アーサー
アーサー
菊
菊
アーサー
アーサー
菊
アーサー
私の家庭環境
それは、私にも分からなかった
アーサー
悪夢
菊
アーサー
菊
アーサー
アーサー
アーサー
アーサー
私は……
菊
アーサー
悪夢か
私、幸せじゃなかったんだ
菊
菊
そう気づいた時でも、泣きじゃくることしか出来なかった──
菊
アーサー
アーサー
アーサー
アーサー
この言葉
消えない言葉かもしれない
どんなに薬を飲んでも、どんなに寝ても、忘れない
そっか
私は
消えない言葉を探してる──
コメント
1件
上手く書けない…… いつか消すかも