半年後
貴彦
春子、田中さんって誰や?
春子
田中さん?
春子
誰やそれ
貴彦
おめぇに聞いとんねん、
春子に用がある言うて来とるで
春子に用がある言うて来とるで
春子
知らんなぁ…
貴彦
とりあえず玄関に行きや
貴彦
待たせとるんやし
春子
せやね
後ろ現代風でごめんなさい! 昭和ながらの引き戸だと思っていただいて…
春子
お待たせました
春子
…って
春子
いつかお会いした海軍さんやないですか
田中
よっ。
春子
田中さん言うんですね?
田中
名乗ってなかったか
田中
俺は田中樹だ。
春子
じゅり…なかなかに珍奇な名前ですね?
田中
うるせぇ
春子
ひっ、すんません!
春子
ところでなんでうちに来たんですか?
田中
ああ、両親から婚約を迫られたんだが
田中
その女子(おなご)がどうしても気に入らなくてな
春子
はあ、
春子
(だからってなんでうちに来さったんやろ)
田中
て訳で、
田中
春子ちゃん、俺の嫁にならないか?
春子
…はい?
春子
何言うとるんですか?
春子
うちらまだあって2回目ですやん
春子
なのに嫁だなんてそんな…
田中
お前、何歳だ?
春子
17です…
田中
なら結婚できるじゃねえか
田中
頼むこの通りだから!
土下座をする
母
あら、どないしたん?
春子
母さん…
田中
初めまして、俺、田中樹と言います。
田中
突然の訪問申し訳ございません
母
ええねんええねん!
母
やけど、春子になにかしたんです?
母
やけに春子が困りよりますけど
田中
あの…
田中
実は、かくかくしかじか…
母
あら、そーなの
母
でもうちらは田中さんのことなんも知らんねん
母
やから簡単に結婚を許すわけにはいけん
貴彦
春子、結婚するんか?
母
貴彦!お前は引っ込んどき!
母
やないと静岡のじいさんの所に連れてくで!
貴彦
それは堪忍や!
母
じゃあ引っ込んどき!
母
ところで、どこまで話しましたかね?
田中
あの、自己紹介をさせてください。
田中
俺は田中樹と言います。
1920年生まれ、父は海軍の指揮官である田中俊夫、俺は横須賀基地の指揮官補佐を務めております
1920年生まれ、父は海軍の指揮官である田中俊夫、俺は横須賀基地の指揮官補佐を務めております
田中
春子さんとの出会いはおよそ半年前、…【割愛】
母
そうなん。
母
まあ、うちはええかもしれんけど父さんがなんと言いよるか…
父
どないした、こんなところで集まりよって
母
お父さん、もうお話は済みはったんですか?
父
ああ、もう済んだ
父
ところでその青年は誰や
田中
突然の訪問申し訳ありません、田中樹と申します。
田中
横須賀基地の指揮官補佐をしております。
父
海軍…か
父
海軍のお前さんがなぜこないところにおるんや?
母
うちの春子に結婚を申し込みに来さったそうや
父
ほんまかいな
父
春子からお前さんの名前は1度たりとも聞いた事あらへんけど?
田中
はい、春子さんとは半年ほど前に1度お会いしただけで、その時は名を名乗っておりませんでしたので
田中
春子さんの口から俺の名が出てくることはなかったと思います
父
そうか…
父
やけど、わしとしても初めて会った何処の馬の骨かも知らんような男にうちの娘を今すぐ差し出す訳には行かれへん。
父
どうや、今回は婚約までにしておこうやないか
母
お父さん、ええんですか?!
父
春子ももう17や。この青年がおらんかったら今度はわしらがお見合いの場を設けなあかんのやぞ
父
そんな面倒なことはしたかねぇ
父
春子
春子
はいっ
父
この青年と婚約するか知らんやつとお見合いするかどっちがええか?
春子
それは…田中さんがええです
父
なら成立や。
父
青年もええやろ?
田中
はい。よろしくお願いします。






